ダイオキシンにもどる
n01503#林野庁による2,4,5−T系除草剤の埋設個所の状況〜依然として無害化せぬまま#19-06
【関連記事】記事t29404
電子版「脱農薬てんとう資料集」第8号 <ダイオキシン含有農薬とPOPs系農薬>(2007年9月)
1971年、林野庁は、全国約50個所にダイオキシン類を含む2,4,5−T系除草剤を土中埋設指示し、無害化処理することなく、監視をつづけているだけです。2016年4月の熊本地震で、九州地域の埋設個所に影響がなかったかを問い合わせましたが(記事t29404参照)、最近の状況を林野庁に尋ねました、その結果を報告します。
★2018年度の埋設個所の点検結果
林野庁への質問は、『直近の埋設個所調査結果を前回同様、管理局/管理署など/埋設個所の所在地(都道府県名と市町村名)直近の定期及び臨時点検年月日の一覧でお示しください。
土砂崩れ、雑草・かん木類の繁茂、立入禁止標識や囲いの破損した個所がありましたら、埋設個所ごとに補修内容を記してください。
また、2015年以降、2,4,5−Tやダイオキシン類の環境分析を実施されていましたら、その結果を埋設個所ごとに、教えてください。』でした。得られた回答は下表のようで、直近の点検は2018年後半のものでした。埋設個所の補修や支柱の交換・柵の張り替えが14個所みられました。水質、底質、土壌などの環境調査は15個所で実施され、いずれも、異常なしとされていました。
この結果をみると、林野庁は、『 今後とも、定期的な点検を行うとともに、必要に応じ、立入禁止標識、埋設箇所の周囲を囲んでいる柵等の更新・修理等を行い、適切に保全管理を行っていく。大雨、強風、 地震等の際にはその都度点検を行い、適切に保全していく。』との従来どおりの方針を変える気はないようです。
表 2,4,5−T系除草剤の埋設箇所における直近の点検年月日等
森林 森林 埋設箇所 直近の定期及び 直近の補修・環境 補修・環境
管理局 管理署等 の所在地 臨時点検年月日 調査年月日 調査の内容
北海道 空 知 北海道夕張市 2018/10/16 2018/6/5 柵の張り直し
〃 網走西部 〃 遠軽町 2018/10/19 2016/6/14 柵の張り替え
〃 十勝西部 〃 広尾町 2018/9/12 2018/6/15 柵の張り直し
〃 〃 〃 音更町 2018/9/11 2018/6/13 柵の張り直し
〃 〃 〃 清水町 2018/9/12 2018/6/13 柵の張り直し
〃 根釧西部 〃 標茶町 2018/10/29
〃 十勝東部 〃 本別町 2018/9/11
東北 〈金 木〉 青森県中泊町 2018/10/9 2016/10/13 支柱の交換、柵の張り替え
〃 〈久 慈〉 岩手県久慈市 2018/10/24 2016/10/18 水質・底質調査を実施(異常なし)
〃 〃 〃 野田村 2018/10/24 2016/10/18 水質・底質調査を実施(異常なし)
〃 盛 岡 〃 雫石町 2018/10/4 2016/1/2 水質・底質調査を実施(異常なし)
〃 三陸北部 〃 岩泉町 2018/10/18 2016/1/1 水質・底質調査を実施(異常なし)
〃 〃 〃 宮古市 2018/10/18 2016/1/1 水質・底質調査を実施(異常なし)
〃 岩手南部 〃 西和賀町 2018/10/12 2016/10/17 水質・底質調査を実施(異常なし)
関東 会 津 福島県会津坂下町 2018/11/12
〃 吾 妻 群馬県東吾妻町 2019/3/14
〃 利根沼田 〃 昭和村 2019/3/17
中部 (愛 知) 愛知県設楽町 2019/2/13 2019/2/13 支柱の交換、柵の張り替え
〃 岐 阜 岐阜県下呂市 2018/11/1
〃 〃 〃 〃 2018/11/5
近畿中国 広島北部 広島県庄原市 2019/3/22 2017/2/8 支柱の補修
四国 愛 媛 愛媛県西条市 2018/10/2
〃 〃 〃 久万高原町 2018/11/12 2018/6/13 標識の補修
〃 〃 〃 宇和島市 2018/12/25
〃 〃 〃 松野町 2018/10/9
〃 四万十 高知県四万十市 2018/9/5 2016/1/12 水質調査を実施(異常なし)
〃 〃 〃 四万十町 2018/9/7 2016/1/13 水質調査を実施(異常なし)
〃 嶺 北 〃 いの町 2019/2/13 2016/1/19 水質調査を実施(異常なし)
〃 〃 〃 大豊町 2019/3/11 2016/1/19 水質調査を実施(異常なし)
〃 安 芸 〃 安芸市 2019/1/15 2016/1/18 水質調査を実施(異常なし)
〃 四万十 〃 土佐清水市 2018/9/7 2016/1/12 水質調査を実施(異常なし)
九州 佐 賀 佐賀県吉野ヶ里町 2018/10/19 2017/8/4 水質・土壌調査を実施(異常なし)
〃 熊 本 熊本県熊本市 2018/10/22
〃 〃 〃 宇土市 2018/10/22 2019/2/4〜7 水質・土壌調査を実施(異常なし)
〃 熊本南部 〃 芦北町 2018/10/23
〃 大分西部 大分県別府市 2018/10/1
〃 宮崎北部 宮崎県日之影町 2018/10/4
〃 西都児湯 〃 西都市 2018/10/17
〃 宮 崎 〃 宮崎市 2018/10/11
〃 〃 〃 〃 2018/10/10
〃 〃 〃 小林市 2018/10/2 2018/10/2 柵の張り替え
〃 〃 〃 〃 2018/10/10
〃 〈都 城〉 〃 都城市 2018/10/12 2017/2/24 支柱の交換
〃 宮崎南部 〃 串間市 2018/10/9
〃 大 隅 鹿児島県肝付町 2018/11/2 2017/5/29 支柱の交換
〃 鹿児島 〃 湧水町 2018/10/18 2016/12/9 水質調査を実施(異常なし)
〃 北 薩 〃 伊佐市 2018/10/17 2016/10/6 柵の張り替え
〃 〃 〃 〃 2018/10/17 2016/10/6 柵の張り替え
〃 鹿児島 〃 南九州市 2018/10/18
〃 屋久島 〃 屋久島町 2018/10/9
1 森林管理署等のうち〈 〉書きは支署、( )書きは管理事務所
2 直近の定期及び臨時点検年月日は、平成30年度(2018年度)において最後に実施した年月日
3 直近の補修・環境調査実施年月日は、平成28年度(2016年度)以降において最後に実施した年月日"
★国会での追及〜進まない2,4,5−Tの無害化処理
【参考サイト】衆議院農林水産委員会:2018年12月5日第11号議事録
昨年12月5日の衆議院農水委で、田村貴昭議員(日本共産党)が、除草剤2,4,5−Tの埋設問題をとりあげました。
議員は、現時点で、埋設箇所は46個所あり、埋設量は、乳剤1445.5L、粒剤2万4686kgあるとし、未処理のまま埋設地域を監視するだけで、無害化処理をしてこなかった林野庁の姿勢をただしました。以下に、林野庁との質疑の概要をしめします。
【田村】佐賀県の吉野ケ里町の埋設地に行ってまいりました。福岡と佐賀の県境近く
の国有林であります。九州自然歩道の坂本峠付近の山の上にあるんですけれども、
市街地から車ですぐに行けるところにあります。−中略−埋設地には、このよう
な看板があるわけです。これはちょっとびっくりしますね。『この囲いの中には2,
4,5-T剤を埋没してありますので囲いの中の立入りや土砂等の採取をしないでく
ださい』、この表示、驚きました。ここに猛毒がありますよと教えてやっている
ようなものじゃないですか。掘って取り出されたら、これはどうするんですか
【長官】吉野ケ里の地区につきましては、コンクリートの塊がどういう形状で埋めら
れているかといいますと、これは、2m四方かつ高さも2mという、非常に大き
なコンクリートの塊の状態で埋められているものでございまして、今御指摘のよ
うな形で簡単に持ち去るということはできないものと承知をしております。
【田村】那珂川町、福岡地区と春日那珂川水道企業団が要望書を毎年林野庁に
提出していますよね。水道水源に近いところから、「数十年に一度発生すると言
われている記録的な豪雨が全国各地で多発している状況であり、当該埋設箇所に
おきましても今後、想定外の事象が発生することが予想されます。」「水源汚染
に対する不安を払拭するために、埋設物の安全対策の徹底や、埋設除草剤の移設
又は無害化処理していただくことを要望いたします。」とあり、抜本的な解決を
要請している
【長官】仮にこの埋設処理をいたしました2,4,5−T除草剤を掘削して処理をしよう
とした場合には、コンクリートの破損等によりまして、2,4,5−Tあるいはダイオ
キシンが飛散をするというリスクがあるところでございます。
【田村】想定外の災害が起こって、山崩れとか地割れとかこういう現象が起こ
ったときに、コンクリートは壊れるじゃないですか。−中略− 鹿児島県湧水町
の写真でございます。ここは、幅7mから8m、長さが250mから300mのエリアの
中のどこかに埋設していると−中略−屋久島には3825kg埋められているというこ
とです。災害リスク一つとっても、この先、このままの状態ではよくないという
ふうに考えます。
【長官】年二回の定期的な点検、豪雨時等の臨時点検を行うなど、保全管理
に努めているところであります。−中略−高温焼却などによる方法はあるという
ことでありますけれども、ただ、その前にどうしても掘り起こさないといけない
わけであります。この掘削にリスクがあるということでありまして、そういった
中で、安定した状態のまま保全管理することが適切であると現段階での考えに至
っているわけであります。
【田村】地震や大雨による地割れ、崖崩れ、これは後を絶たないわけです。今
日的な問題なんですよ。ダイオキシンを発生させないための技術と処理方法もあ
るということであります。災害から猛毒物質を漏出させないためにも、やはり抜
本的な対策が必要になってくると思います。
【農林水産大臣】 さまざまな御指摘を頂戴いたしました。安全性の確保の観点に立
ちまして、技術の進展も注視しながら、環境省とも引き続き相談をしながら、適
切な管理を図ってまいらなければならないと存じます。
論議は、田村議員の『まずは、どういう形状で埋設されているのかを確認し、そして安全性を更に確認し、そして無害化処理を今日的な方法で行うことを強く求めて、質問を終わります。』との発言で締め括られています。
★埋設個所の地元では〜土壌分析された2個所は吉野ヶ里町と宇土市
田村議員の質問した吉野ヶ里町に加え、同じく、林野庁が水質・土壌調査を実施した熊本県宇土市のケースでは、地元で、無害化対策が求められていますが、実現するには林野庁の方針が大きなネックになっています。両地域とも囲み記事にある個人ブログによる情報提供や議会の動きが林野の壁に立ち向かっているのが現状です。
【佐賀県吉野ヶ里町】
【参考サイト】吉野ヶ里町:Top Page 広報よしのがり
議会だより吉野ヶ里と会議録より「2,4,5−T」検索ヒットした文書(城島敏行議員の質疑)
・平成31年第1回定例会(2019年03月05日)、平成29年第1回定例会(2017年03月07日)
福岡県議会:Top Pageと会議録より
「2,4,5−T」検索ヒットした文書:平成30年9月定例会(第14日)(2018/9/20)にある高瀬菜穂子議員の質疑)
春日那珂川水道企業団:Top Pageと2017/05/23の分析結果
佐賀県みやき町:Top Page、坂本峠に埋没している2,4,5−T剤について(町への質問への回答)
地元の吉野ヶ里町議会では、城島敏行議員がは、埋設個所が福岡市の水源に近くにあることを懸念材料として町の姿勢を追及しています。2019年3月の定例会での質疑は以下です。
【城島】今後、林野庁、佐賀森林管理署、佐賀営林署に245T系除草剤撤去を
要望されていきますか、
【回答】245Tの移設または無害化処理の要望につきましては、最近ですけれども、
28年度より毎年9月に佐賀森林管理署のほうに福岡の那珂川市、それから福岡市の水道
局、福岡地区の水道企業団、春日那珂川水道企業団の4団体とともに要望活動に行って、
今2年目を迎えているところでございます。
【城島】今後ずっと245T系除草剤撤去を林野庁、佐賀森林管理署、佐賀営林署に
要望されていくのか、要望しないのか、答えてくださいよ。
【回答】このことにつきましては、福岡県側、そして吉野ヶ里側の安心・安全を
考えますと、今後も続けていきたいと考えております。
【城島】福岡市、春日那珂川水道企業団、福岡地区企業団は、毎年、九州森林管理局、
佐賀森林管理署に245T系除草剤埋設の移設及び無害化処理要望をされていると聞き及ん
でおります。これは仮に──仮にと言うたらおかしいかわかりません。だけど、想定外
のことが今起こっている世の中です。仮に想定外の大雨、想定外の地震が起きれば、埋
設されている245T系除草剤は全部北側に落ちます。ダイオキシンがダム湖に流れ出すん
ですね。245T系除草剤が流れ出してからでは遅いと思います。
福岡市は245T系除草剤移設及び無害化処理の要望活動をされておりますが、吉野ヶ里町は当然、
福岡市民の146万3,000人の不安を払拭する努力をすべきと思いますが、どうでしょうか。
【回答】確かに、福岡県側は平成4年より要望活動を今現在までずっと続けておられます。
それで、うちのほうも、福岡県側は利水者として、吉野ヶ里町は取水元としての責任が
ございますので、これはともに要望活動すべきと考え、今後も進めていきたいと考えております。
【城島】この245Tの問題を提起することは、あれだけ丈夫な鉄板、矢板で囲い、
しかもコンクリートで固めビニールシートを巻いて、そしてその一番上にはアルミ板も
置いておられます。いかに劇薬かということなんですよね、これ。そんなする必要ない
と思うんですよ、問題がなければ。そんなにしてでも埋立処分をしなきゃいけないとい
うことを、やっぱり私たちは吉野ヶ里町としても考えなきゃいけないと思います。私はこ
の辺について、しっかりと払拭してあげる、福岡県側じゃないですよ、吉野ヶ里町とし
ての役目だと思いますので、その点もしっかりお願いいたします。
登山が趣味で建築デザイナーである地元のブロッガー井上恭子さんが、埋設地をずっと追いかけており、行政に対して、水質検査結果の問い合わせも行っています。その結果は、下表のように、すべて、検出限界以下でした。
採水年月 2019/02/07 2018/09/04 2017/08/03 05/23*
採水場所 五ヶ山ダム放水 五ヶ山流込/ 大野大橋
南畑流込/南畑取水口 南畑流込/南畑流込
2,4,5−Tmg/L いずれも 0.00001未満
2、4-D いずれも 0.00001未満 *春日那珂川水道企業団報告
【熊本県宇土市】
【参考サイト】宇土市:市議会だよりの第62号p10(2018/08/01)
宇土市では、市議会での追求が続いています。2018年6月の第2回定例会では、藤井慶峰議員が、「2,4,5−Tダイオキシン除草剤の完全撤去を求める」として、下記のように市の姿勢を質しました。
【藤井】4月30日の読売新聞に、白山山麓に埋設されているダイオキシンの記事が載った。
先日、東京のテレビ朝日から「羽鳥慎一モーニングショーで取り上げたい」と連絡があった。
宇土市の埋設地が全国放送されると風評被害が起きる可能性もある。従って、行政
としてしっかと対応していること、営林署が安全に管理していることを確認しなけ
ればならないし、更に本市としては「完全撤去」を求めていることを示さなければ
ならない。
全国で4ヵ所に埋設されている除草剤は、ベトナム、カンボジア戦争でアメリカ軍に
よってジャングルの木々の葉を枯らすために撒かれた猛毒のダイオキシンを含む除
草剤だ。
本市の場合、2055kgという「1ヵ所に300kg以内」という国の指示に反して7倍もの
量を1か所に埋設している。今こそ、完全撤去を実現すべきだと思う。
<市長>本市の基本的な考えとして、完全撤去を求めて行いくという姿勢に変わりはない。
また、撤去の要望については、これまで継続して九州森林管理局長宛に提出しており、
直近では平成30年2月に撤去要望を行っている。
今回の新聞記事について、林野庁に問い合わせをしたところ、現在、政府の地震調
査研究推進本部の資料等を参考にして、断層から埋設地までの距離を考慮し、どれ
くらい影響があるか検討しているところであり、その後、影響が懸念される埋設地
については、除草剤の撤去も検討することになるとのことだった。
しかし、撤去の検討については、撤去した後の除草剤の無害化処理技術が、まだ確
立していないため、そのことも考慮した検討になるとのことだった。従って、完全
撤去の実現には、まだ、相当な時間がかかると思われる。
そのため、本市としては、九州森林管理局に対して、完全撤去を強く働きかけていきたい。
【藤井】私は、科学専門の学者から0ダイオキシンの無害化処理は可能だと聞いている。
実際に五島列島や四国では完全撤去されている所もある。埋設されてから47年、今
こそ「完全撤去を実現する」という気概で臨んで頂きたい。その為に、営林署と担
当課と議会も含めた協議の場を改めて設けて頂きたい。
<市長>国に対して完全撤去を求めていく中で協議の場を設けることは意義があるこ
とと考える。早期に実現できるよう九州森林管理局と協議をしたい。
【藤井】市長も私も現職の間に完全撤去を実現したい。市長の答弁の実現をお願いする。
作成:2019-06-30