農薬の毒性・健康被害にもどる

n01505#農薬危害防止運動について〜JR線路除草剤も問題#19-06
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 本年の農薬危害防止運動を前に、農水省等の省庁への要望・質問のうち、前号の記事n01405では、住宅地通知に違反する農薬や無登録の非植栽用除草剤の問題をとりあげましたが、ここでは、鉄道等での除草剤散布に関する項(回答内容は囲み記事参照)と最近目立つ、除草剤の空中散布を紹介します。

★農水省も国土交通省も通知を送っているというが
 そもそもの発端は、昨年のJR九州管内、福岡県での。線路除草剤の散布による被害で、農薬危害防止運動についての通知や「住宅地通知」が鉄道会社の末端まで、いきわたっていなかったことが、一番の原因と思われます。農水省らは、[回答]では、JR社には、通知したとしていますが、周辺への農家ら散布を知らせいなかった上、飛散被害がでたわけですから、本省がうちは指導しましたと、責任をJRに転嫁することは許されれません。  わたしたちは、国土交通省へ下記のような返事を送付するとともに、JR九州などに新たな要望と質問をおこないました。

  『農薬危害防止運動についての農水省らからの通知は、『速やかに職員及び関係機関・
   団体等に周知しております。』とのことですが、各鉄道会社から現場の部署や駅などに
   どのように伝わっているわかりません。

   昨年、農薬取締法が改定され、これにともない「農薬を使用する者が遵守すべき基準を
   定める省令」も改定されています。

   特に、第二条(表示事項の遵守)は、いままで、食用作物に特化していましたが、芝、花卉、
   樹木など非食用作物もラベル表示に従うよう指導されることになりました。

   また、通知「住宅地等における農薬使用について」かかわる第六条(住宅地等における農薬の使用)は、
   「住宅の用に供する土地」→「住宅、学校、保育所、病院、公園その他の人が居住し、滞在し、
   又は頻繁に訪れる施設の敷地」と条文が明確化されました。

   これは、線路除草だけでなく、鉄道事業者が管理する駅などの植栽地域にも適用されます。
   今後、貴省から発出される危害防止運動などの連絡通知では、鉄道事業者の現場部署や各駅に、
   十分周知されるようご配慮願います。』
★除草剤の空中散布も問題だ
【関連記事】記事n01501

 除草剤は、地上散布だけの問題ではなく、無人航空機による散布にも目を向ける必要があります。

【宮崎県の植林地で】
 【参考サイト】宮崎県のHP:植林地への無人航空機による農薬散布についての意見と回答(2018年12月4日)
       change.org の署名サイト:【宮崎県林業】山林へのヘリ除草剤散布は反対です!他の解決方法をみんなで考えよう

 宮崎県では、山林での植林地の下草刈りに、除草剤の無人ヘリ空中散布が検討されています。目視できない山林での空中散布では、事故の危険が増すだけでなく、水源汚染、自然環境の破壊、森林の生態系・生物多様性にも影響を与える懸念があります、すでに。昨年11月に試験が行われましたが、反対の声もあり、2020年からの本格実施は、まだ、決まらないようです。(下の写真は2018年11月、宮崎市での試験(宮崎県提供))



【長野県での水田除草剤散布】
 一方、わたしたちは、7月からのドローン型の新ガイドラインらの実施に反対していますが(記事n01501)、すでに、各地で、廃止予定の「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」に沿った空散計画が提出され、実施されています。散布計画を公表している自治体もあります。
 その中のひとつ、長野県では、散布地域ごとに、散布予定日、散布面積、散布農薬名の散布計画一覧表がHPで公開されています。6月下旬現在。79件のあり、水稲が70%を占めげいます。そのうち除草剤の粒剤散布が、5、6月に21件ありました。これらの除草剤空中散布は、HP上では知ることができますが、一覧表には、市町村と地区名があるだけで、地図の表示もありません。住宅地通知が遵守されているかどうか、心配です。
  表 長野県の2019年度の無人航空機散布計画件数

   散布月 全計画数 内水稲計画数 内除草剤粒剤   
   5月    17件  11件     11件
   6月    23   16      10
   7月    22   16       2
   8月    15   12       0
   9月      2    0       0





*** 2019年度農薬危害防止運動などについての要望と質問 (3/26、農水省他宛)***
 回答は 農水省(4/26)、国土交通省(4/19)で、詳細は 以下です。
 <鉄道等での除草剤散布について>

   2018年8月、農薬危害防止運動のさなかに、福岡県内の鹿児島線沿線で、JR九州が鉄道除草のため、
   グリホサートカリウム塩/MDBAカリウム塩/イマザピルらを成分とする除草剤を、夜間、
   作業車から散布し、瀬高駅近郊の大豆畑や水稲に飛散して、作物被害が出ました。
 
   同類の鉄道除草剤の飛散による作物被害は、2004年にはJR東日本磐越東線や水郡線で、
   2012年には近江鉄道沿線で起こっています。2004年の被害発生後、国土交通省鉄道局から、
   農薬危害防止運動についての通知と農水省・環境省両局長通知「住宅地等における農薬使用について」
   (以下、住宅通知という)を添付した国鉄施第59号が発出されてもいます。
 
   また、鉄道だけでなく、道路での除草剤散布でも飛散による作物被害の事例がでています
   (たとえば、2007年6月青森県つがる市の県道、2012年7月山形県酒田市県道でグリホサート系除草剤散布)。
   今回のJR九州の事例について、福岡県の農林水産部署によると、鉄道会社には、農薬危害防止運動に
   ついての通知を行っておらず、当然ながら、飛散被害防止のための指導も、これまで実施されて
   いませんでした。以下の項目について教えてください。

 【2-1】農水省や国土交通省は、鉄道業者や道路管理者に対する農薬危害防止運動や住宅地通知を、
   どのようなルートで、鉄道や道路関係者に連絡されていますか。直近の事例を発出年月とともに
   教えてください。
  <農水省回答>
   危害防止運動については、鉄道業者や道路管理者に対しては所管省庁である国土交通省より
   毎年度周知しています。本事案が発生した昨年度にあっては、平成30年4月に厚生労働省・
   農林水産省・環境省から、国土交通省宛に通知「平成30年度農薬危害防止運動の実施について」
   用についても、危害防止運動と併せて、周知しているところです。
  <国土交通省回答>
   農薬危害防止運動の実施について、昨年、国土交通省は5月に厚生労働省、農林水産省、環境省
   連名の協力依頼文書を受け、速やかに職員及び関係機関・団体等に周知しております。

 【2-2】本件のJR九州による危被害について、農水省は、いつ、どこから、どのような
  報告を受け、どのような調査と指導をなさいましたか、月日の順に、その経緯と散
  布状況及び被害状況の内容を教えてください。また、文書指導があれば、文書もお
  示しください。
 <農水省回答>
  本事案につきましては、福岡県を通じて、事案の事実関係について報告を受けてお
  ります。当省から、福岡県に対して本事案の原因究明に努め、原因に基づく必要な
  指導を実施するよう依頼しており、福岡県は、JR九州に対して、農薬飛散防止対策
  の徹底及び再発防止に向けた取組の実施等を依頼したと承知しています。本事案の
  詳細な内容については、JR九州にお問い合わせください。
 

 【2-3】夜間に、作業車両からの除草剤散布であったと聞いていますが、散布した日時を
  教えてください。夜間ならば、周辺状況がみえず、危険だと思われます。農水省・
  国土交通省は、夜間散布をやめるよう指導してください。
 <農水省回答>
  農薬散布は、無風又は風が弱いときに行うなど、近隣に影響が少ない天候の日や時
  間帯を選ぶとともに、農薬散布区域の近隣に学校、通学路等がある場合には、万が
  一にも子どもが農薬を浴びることのないよう散布の時間帯に最大限配慮するなど、
  農薬を使用する際は、周辺に十分に使用するよう指導しております。夜間における
  農薬散布は一般的ではありませんが、日中は人や車の通行が絶えない場所など、や
  むを得ない場合に限られると考えられます。引き続き飛散防止のための農薬の適正
  使用の指導に努めてまいります。
 <国土交通省回答>
  JR九州が散布した日時は
  ・平成30年8月1日0時20分〜3時20分
  ・同年8月6日23時〜8月7日1時40分 です。


 【2-4】農薬危害防止運動の実施要綱には『散布時における近隣作物や住宅地等周辺への
  飛散防止の徹底』との指導が明記されていますが、鉄道業者がこれを遵守しなかっ
  たことが、本事例の一因であると考えます。農水省・国土交通省は、JR九州が農
  薬取締法関連法令のどのような点に違反をしているとお考えになりますか。
 <農水省回答>
  本事案の報告によると、農薬の飛散が原因であるとの可能性があるため、引き続き
  飛散防止対策をはじめ、農薬の適正使用の指導に努めてまいります。


 【2-5】今後、鉄道会社や道路管理者に対して、管理する線路や道路などの除草には、農薬散布を
    実施しないよう求めるとともに、万一散布する場合は、農薬による危害防止対策として、
  散布計画を予め提出させ、飛散防止措置等の内容をチェックし、沿線農家や住民等に散布を
  周知するなどが、必要と思います。
  農水省・国土交通省は、どのようなアクションをおとりになるお考えですか。
 <農水省回答>
  鉄道用地等で使用する除草剤の飛散による農作物等への被害の防止については、従前より、
  国土交通省を通じて、関係者への指導をお願いしているところです。
  昨年、鉄道用地の除草剤の散布に関連して農作物の被害が発止した事案については、除草剤の散布を
  実施した事業者に対して、事案が発生した県の農薬指導部局から再発防止の指導を行っており、
  また、当該鉄道会社に対しては、国土交通省より、当該事案の共有と併せて、文書による
  注意喚起、再発防止の指導が行われたものと承知しています。
  また、農林水産省としては、国土交通省に対して、通知「2019年度農薬危害防止運動の実施について」
  を発出し、関係者への指導をお願いするとともに、都道府県に対しては、農業場面のみならず、
  道路、公園等といった不特定多数の方が立ち寄る公共施設の所管部局の担当者等を対象とした
  講習会等の積極的な開催をお願いしているところです。
 <国土交通省回答>JR九州に対し、再発防止を徹底するよう指導するとともに、他の鉄道事業者に
  事実関係を周知し、同様の事象が発生することのないよう指導いたします。
  以上

作成:2019-06-30