『農薬の取扱いについて 化管法は法令上、「化学物質」の定義を「放射性物質を除く元素及び化合物」としており、 現在、農薬も対象物質として選定をされているところである。 本合同会合に先立って開催した化管法施行状況検討会では、事業者からの届出排出量が あまりなく、化管法の期待する自主管理促進としての効果が乏しいことから、対象物質から 除外してもよいのではとの意見があった。 他方、法制定時から農薬は対象物質であり、農薬については使用形態から見て明らかに 環境中に放出されやすい物質であること、届出排出量が少なくなっているのは自主管理の 成果であること、届出外排出量推計は第一種指定化学物質を対象として行うことが法定され ていること、PRTR に基づく農薬の排出量(届出及び届出外推計)は、環境保全施策の対象と される一般公共用水域から取水する水道事業者における恒常的な水質管理に一定活用されて いることから、その環境への排出量を把握する物質として引き続き対象物質とする必要がある との意見もあった。 この点、農薬は対象物質とすることが適当であると考えられるが、その扱いについては 引き続き検討が必要と考えられる。 <新たな第一種指定化学物質の選定方法>選定の基準としては、農薬の製造輸入量のすそ切り値を 、農薬が最終的には環境に排出される性格のものであることから「10 トン以上」と設定して いることを踏まえ、製造輸入量から排出量へばく露指標を見直すに当たっては、この基準を 参考とし 10 トン以上のものを対象とすることが考えられる。 、 農薬については使用形態から見て明らかに環境中に放出されやすい物質であることから、 「1年間の製造・輸入量」10 トン以上の物質を選定することが適当である。 <新たな第二種指定化学物質の選定方法>最終的には環境中に排出される性格のものである として設定されている農薬の基準が、第一種指定化学物質が 10 トン以上であることに対して、 第二種指定化学物質は1トン以上とされていることから、これを参考に排出量1トン以上の ものを対象とすることが適当と考えられる。』と、されていますが、グリホサートやネオニコチノイドなどの新たな毒性が明らかになり、水汚染、大気汚染、土壌残留、散布による周辺への飛散が問題となっていることを念頭に。以下の意見を述べました。
(1)グリホサート系除草剤(グリホサートに関する資料は囲み記事参照) [理由]1、農薬登録のある製剤の出荷量は農薬要覧の統計判明するが、非植栽用として 出荷されているものは不明である。 2、グリホサートは、IRACが。2015年3月、発がん性を2A(ヒトに対して恐らく 発がん性がある )にランク付けした。 3.フランスなどでは、使用規制がすすんでいる。 4、非植栽系除草剤については、農薬取締法の「農薬を使用する者が遵守すべき基準を 定める省令」、登録農薬を対象とした農水省・環境省両局長通知「住宅地等における 農薬使用について」を適用すべきなのに、現状では、化審法と毒劇法以外、法規制が がない。 (2)ネオニコチノイド系、ピレスロイド系、フェニルピラゾール系殺虫剤 [理由]1、水域の生物、陸域の生物、家畜であるミツバチ、ポリネーターへの影響が大きく、 ヒトの尿などに検出されいるが、ほとんど指定物質となっていない。 2、ネオニコチノイド系殺虫剤は、欧米他で、ミツバチやポリネーターの減少につながる 農薬として、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、フィプロニル 使用規制が実施されている。これらのほか、アセタミプリド、チアクロプリド、ニテンピラムらが、 日本の河川水中や、ヒトの尿中に検出されている。 3、ピレスロイド系、その他については、身の回りで下記の成分が使用されている −農薬リスト省略− 4、水田等で多用されるフェニルピラゾレート系のエチプロールも水系汚染が報告されている。 <(1)(2)についての回答>指定化学物質の具体的な選定に当たっては、今回の取りまとめの考え方に基づき、 有害性、環境での検出状況、届出排出・移動量、製造量等に鑑みて別途検討されるものと考えています。
(3)同じ成分又は同じ系列の成分が農薬以外の用途に使用されている場合だけでなく、 使用用途が農薬のみの化学物質についても化管法指定物質とすべきである。とくに、 現在、一般環境中に検出されている農薬成分を優先的に指定すべきである。 [理由]1、昨年の農薬取締法改定にともない、農薬のヒトや環境・生態系への影響防止に ついては、一層、規制がが厳しくなった。 2、環境・生態系・生物多様性の観点から、水域生物のみならず、陸域生物への影響が 懸念される。また、住宅地で使用されることもあるため、化管法により、使用場所 ごとの排出量がわるようにすべきである。 3.環境省の調査では、以下のような農薬が河川に検出されているが、 *は化管法指定されていない。 −農薬データ省略− <(3)についての回答>今回の指定化学物質見直しにおいては、農薬につきましては、 使用用途が農薬のみの物質も含め引き続き対象物質とすることとしております。 指定化学物質の具体的な選定に当たっては、今回の取りまとめの考え方に基づき、有害性、 環境での検出状況、届出排出・移動量、製造量等に鑑みて別途検討されるものと考えています。
【香料についての意見】 香料は、微量でもヒトが検知し、体調を崩す原因となる化学物質のひとつであるが、 生産量が少ないということで、有害物とはみなされず、化管法の対象になっていない。 しかし、洗濯用柔軟剤や消臭剤として、生活環境で使用されるようになった近年、 香害として問題視されるようになっている。 香料は、医薬品・パーソナルケア製品(いわゆるPPCPs)であり、化管法指定物質とし、 出荷量を明らかにした上、使用規制につなげるべきである。 [理由]1、全国の自治体の中には、香害被害者の主張を受け入れ、施設内での香料 使用に対する注意喚起をもとめるところもある。 2、日本消費者連盟発行ブックレット:香害110番〜香りの洪水が体を蝕む <回答>化管法の物質選定に係る有害性の判断項目としては、評価方法が確立して、一定の データ蓄積のある項目としており、具体的には発がん性、変異原性、経口慢性毒性、 吸入慢性毒性、作業環境許容濃度から得られる吸入慢性毒性、生殖発生毒性、感作性、 生態毒性、オゾン層破壊物質を対象項目としています。 有害性の項目については、基本的には、この考え方に基づき設定の上、具体的な 物質選定が行われるものと考えています。 【合成高分子物質についての意見】 プラスチック製品が廃棄され、自然界で分解・破壊されると、生成した、水に溶けにくい 高分子物質そのものが、マイクロプラスツチックとして、一般環境を汚染することになり、 安易な廃棄をやめることば求められているが、これは、あくまで、二次的なマイクロ粒子を ターゲットしている。 一方、さまざまな製品に、目に見えない形の、ビーズ状マイクロプラや他の化学物質を いれたマイクロカプセルが配合されているが、この製品が環境中に放出された場合、一次 マイクロプラとして、環境汚染につながることは明白である。 一次マイクロプラスチックは、被覆又はマイクロカプセル化肥料、マイクロカプセル化農薬、 マイクロカプセル化シロアリ防除・木材防腐剤だけでなく、化粧品ほかのPPCPs中の マイクロビーズや柔軟剤など家庭用品にもマイクロカプセル化香料として配合されている。 また、合成高分子製繊維から綿ぼこりだなどして、放出されるマイクロ繊維もマイロプラと 同様と考えると、生活環境や一般環境中の一次及び二次マイクロプラ粒子は無数に存在する ことになる。にも拘わらず、それらを吸入した場合、ヒトや環境生物の体内でどのような 作用するか未知なまま、使い続けられている。 マイクロプラスチックは、素材となる高分子物質自体、その原料である未反応のモノマーや 製造段階の触媒や界面活性剤、酸化防止剤その他の添加物、高分子の分解物、高分子に 吸収・吸着した他の有害物質。カプセルのばあい含有されている化学物質が、体内組織の どこに存在し、それらがどのような生理作用をするかを評価する必要がある。 化管法でも今後、検討されるべきである。 [理由]マイクロカプセル化製品においては、中に含まれる化学物質の毒性は、一般に 非マイクロカプセル化製品に比べ、急性毒性が弱いとされているが、カプセル化された 医薬品が局所的あるいは長期的に生理的作用をおよぼし治療効果があるとされている ことから、さまざまな化学物質を含むカプセルを暴露した場合とその単分子体を経気 又は経皮的に暴露した場合とでは、人体組織内で、同等な生理作用を示すか否かは、 不明である、この点を留意すべきである。 <回答>マイクロカプセルを含むマイクロプラスチックの健康影響については、現時点では 未解明な部分が大きく、今後一層の知見の集積が必要と考えています。なお、指定化学物質の 見直しについては、マイクロカプセルに含有されているかどうかにかかわらず、今回の 取りまとめの考え方に基づき、有害性、環境での検出状況、届出排出・移動量、製造量等に 鑑みて別途検討されるものと考えています。
除草剤グリホサートについての参考資料 |
(1)グリホサート成分の出荷量と含有製剤について登録農薬は、アミン、イソプロピルアミン、カリウム,ナトリウム塩ら4種類の成分が年間6000トン弱 出荷されている。最近の農薬出荷量は、てんとう虫情報の記事n00304、記事n01303参照。 いままでに176製剤が登録されたが(ラウンドアップという商品名がよく知られている)、2019年6月現在、 登録が有効な製剤は単剤61と複合剤45ある。 登録のない非植栽用除草剤については、量販店や100円ショップ、インターネットなどで 販売されているが、その数量は不明。 ⇒(7)項も参照 三省堂の「農薬毒性の事典3版」の解説記事参照。 |
(2)グリホサートの毒性について環境脳神経科学情報センター:2019年5月21日デトックスプロジェクトジャパン立ち上げ講演会資料 <除草剤グリホサート、グルホシネートの毒性>とYoutube動画サイト 木村ー黒田純子さんの毒性問題の総説 <除草剤グリホサート/「ラウンドアップ」のヒトへの 発がん性と多様な毒性> (上−安全とはいえない農薬の基準値:「科学」2019年10月号p933−944(修正版) 、 下−次世代影響が懸念されるグリホサートなど日本の農薬多量使用の危険性:「科学」11月号p1036-1047 食品安全委員会:農薬評価書で、ADIは1mg/kg体重/日。ARfDは設定の必要ない。農水省の農薬抄録 IRAC:記事t28401.htm(発がん性ランク2A) アメリカを中心に、ガン患者によるメーカーのモンサント (買収会社バイエル)への損害賠償訴訟が増加している。 |
(3)食品中の残留農薬についてフジテレビ商品研究所の残留基準DB:グリホサートの残留基準一覧、厚労省の資料 残留基準設定:てんとう虫情報の記事t31204、記事t31701 残留実態:厚労省の平成19〜23年度 食品中の残留農薬等検査結果 食品残留検査の詳細報告;2013年度、2014年度、2015年度 (てんとう虫情報の記事t30803) 一般社団法人農民連食品分析センター:小麦製品のグリホサート残留調査1st、ほかにワインやビールの分析値あり。 食品中のグリホサートの残留分析データは少ない。輸入大豆の多くは、グリホサート耐性の 遺伝子組換え種であるが、厚労省の資料には、2014、15年度とも、2検体しか分析報告がない。 ■2013、14、15年度厚労省の食品中のグリホサート残留分析結果■ (分析検査数は、すべて輸入品のみで、国産品の検査数はゼロ) 2013年 検査数 検出数 検出範囲 2014年 検査数 検出数 検出範囲 大豆 5 1 0.36ppm 大豆 2 0 小豆類 99 16 0.01-0.3 小豆類 33 0 そら豆 1 0 その他の豆類 12 6 0.01-5 その他の豆類 29 9 0.1-0.75 ブロッコリー 1 0 アスパラガス 4 0 グレープフルーツ 2 0 その他のきのこ類 2 0 バナナ 2 0 その他の野菜 1 0 茶 4 4 0.06-0.24 オレンジ 1 0 コーヒー豆 2 0 グレープフルーツ 2 0 その他の加工食品 3 0 その他のかんきつ類果実 1 0 合 計 61 10 いちご 2 0 ぶどう 2 1 0.01 マンゴー 1 0 2015年 検査数 検出数 検出範囲 その他の果実 1 0 大豆 2 0 茶 10 5 0.07-0.14 小豆類 1 0 その他の加工食品 22 4 0.06-0.6 その他の豆類 11 6 0.01-0.12 合 計 183 36 にんじん 1 0 バナナ 2 0 アボガド 3 0 茶 5 2 0.11-0.15 コーヒー豆 2 0 その他の加工食品 11 3 0.01-0.13 合 計 43 11 |
(4)水系汚染と水道監視目標値グリホサートは水系や地下水汚染につながり、水道水に混入することになる。 水道水監視項目の目標値は2mg/Lで、120ある対象農薬の中で最も高値である。 アメリカでは、0.7mg/Lであり、EUはもっと厳しく、ひとつの農薬で0.1μg/L、総農薬で 0.5μg/Lが目安である。 2020オリ・パラに向け こんなに高い管理値では、海外からの選手や観客に、安心して、水道水を 飲んでもらえないことになるとの主張は、『水道水の安全管理の目標値として妥当な値である と考えます。』として一蹴された。 てんとう虫情報:記事t29701、記事t30103、記事n01103 に示したように、水道事業体は、目標値の比較でしか検出状況を公表しておらず、実測値不明。 2013年度 目標値(2mg/L)超過なし、2015-16年度 目標値(2mg/L)1%(0.02mg/L)超過なし |
(5)飛散・土壌汚染環境省:農薬飛散リスク評価手法等確立調査検討会の頁にある 平成20年度農薬飛散リスク評価手法確立調査報告、平成21年度農薬飛散リスク評価手法確立調査報告(5年間のまとめ) ⇒てんとう虫情報の記事t21301 【飛散量調査】散布当日に、散布区域内5地点と区域外4方向、1m、5m及び10m地点に感水紙(水滴が落下した個所が 青く変色することにより飛散が判明する。 画像解析により変色部の比率を測定し被覆面積率とする)を置いて実施され、区域外では、 風下側の1m、5m地点に各々被覆面積率0.051、0.010%で飛散粒子が見られた。 【気中濃度】散布区域内の1地点で0.2mと1.5mの高さ、区域外の4方向で1、5、10m地点で 大気が採取された。グリホサートは、区域内0.2m高のみで検出され、その濃度は散布4時間後の 0.28μg/m3が最高で、散布1日後には検出限界以下(0.05μg/m3)になった。 区域外に散布液ミストが飛散しているにもかかわらず、気中濃度はいずれも検出限界以下。 【土壌中濃度】散布区域内の1地点で、深さ5cmまでの表層土が採取された。 土壌中の濃度は散布直後0.15μg/gであったが、1日後は0.28μg/gと高まり、7日後で0.20、 30日後で0.18μg/gとほとんど減少しなかった。 【グリホサート飛散による農作物の被害】 てんとう虫情報:記事t15604、記事t15707、記事t19204、記事t25401、記事n00802 青森県つがる市での道路除草剤散布(ラウンドアップマックスロードなど)で、道路沿いの 農作物が枯れましたが、道路から50m以内の被害が約88%、110mのところでも被害ありました。 |
(6)人体汚染グリーンピース・ジャパンの調査:10日間オーガニック食品だけの生活(有機生産物で尿中検出減少。記事t30503参照) デトックスプロジェクトジャパン:集会のプレスリリース(国会議員23名の毛髪を検査したところ、16名から、 グリホサートおよびその代謝物であるAMPA検出) |
(7)非植栽用の登録のないグリホサート系除草剤農薬取締法の条文では、登録のない除草剤については、 容器包装に『当該除草剤を農薬として使用することができない旨の表示』を、 販売者は『公衆の見やすい場所に、除草剤を農薬として使用することができない旨の表示』を 義務付けられています。 非植栽系除草剤は農薬ではないため、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」や 通知「住宅地等における農薬使用について」は適用されませんが、農水省は 『農薬に該当しない除草剤について、問い合わせ等があった際は、 周囲に配慮して使用するよう助言しております。』としています(記事n01405)。 農水省:2019/03/28発出の通知「農薬として使用することができない除草剤の販売等について」(本文とチラシ) 上記農水省の通知について、関連業界へ問い合わせ中です。販売店宛て、業界団体宛て 環境省:「平成18年度殺虫剤等に関する使用実態等調査業務」報告書 H25年度調査報告、平成26年度調査報告書 これらの報告は、農薬以外の家庭用殺虫剤や除草剤の動向調査です。 主に、成分や製剤数があがっており、除草剤はグリホサート系が多いが出荷量は不明。 グリホサートについては、H18年調査で出荷推定量約 1,750tとある。 てんとう虫情報:記事t21602 記事t22503 記事t28505 記事t31004 記事n00803 記事n00803 記事n01405 記事n01602 |
(8)その他の情報・有機農業ニュースクリップのHP:グリホサート関連年表 グリホサート基本データ ・食品安全委員会:食品安全総合情報システムで、グリホサート検索を ・国立医薬品食品衛生研究所:「食品安全情報」で、グリホサート検索を |
「農薬等」の製剤を総量で年間1トン以上取り扱う販売業者に指定物質を含む 製剤の販売量の届出を義務づけることを提案する とした上、指定物質とすべき農薬等 の成分のリストをあげた。しかし、2008年11月21日に関連省令見直しでは、要望内容の 殆どが実現しなかった。 |
【3】項で、化管法における指定化学物質の見直しについて、再度要望をおこなった。 化学物質の中には、農薬と同じ化学物質であっても、法規制のないシロアリ防除剤、 木材保存剤、不快害虫用殺虫剤、衣料用防虫剤、非植栽用除草剤などとして、身の 回りで多用されている化学物質は、化管法指定がない限り、の出荷量は不明のまま となっている。 その後、化管法指定化学物質の見直しはなく、ピレスロイド系殺虫剤、ネオニコチ ノイド系殺虫剤、グリホサート系除草剤の中には、ヒトや環境・生態系に有害である にも拘わらず、化管法の適用はない。 |
意見2-9で 身の回りでは、ピレスロイド系殺虫剤、ネオニコチノイド系殺虫剤、 グリホサート系除草剤はじめ、多くの神経毒性や環境ホルモン作用のある化学物質が使 用されており、生活環境や一般環境での汚染調査を実施するとともに、これらの出荷量 を把握するため、早急に指定化学物質を見直すべきである、とした。 |
要望2で、グリホサートや殺虫剤やネオニコチノイド系殺虫剤などの化学物質につ いて、化管法の指定物質とし、原体や製品の製造・輸入数量、用途分類別出荷量の報告 を義務付け、これらの使用目的別数量等を公表、ヒトや環境への影響を配慮して、使用 制限すべきである、としたが、実現していない。 |