食品汚染・残留農薬にもどる

n01605#農水省による国産農作物の2017年度残留農薬調査#19-07
【関連記事】記事n01502記事n00203(15、16年度)

 前号につづいて、農水省が6月に発表した農薬の残留状況調査から、2017年度の国産農産物の農薬別及び農産物別の結果を紹介します。

★対象作物10種477検体で、農薬検出数は延べ350
 生産農家477戸から得た作物の2017年度の農薬残留調査の結果を表1に示しました。作物ごとに、分析対象となった農薬数は異なります。延べ検体数=作物数×分析農薬数は、 2842で、いずれの農作物も、なんらかの農薬が検出され、検出検体は延べ350でしたが、残留基準を超えたものはありませんでした。
 10種類のうち、検出数の多い作物は、ブドウ116、ホウレンソウ59、ミズナ41、ネギ39で、少ないのはダイコンとタマネギ各2です。農薬別で最大残留値が高いのは、殺虫剤ジノテフラン(ホウレンソウの3.6ppmm)、フルベンジアミド(ミズナの2.8ppm)です。
 主食であるコメは、7種の農薬が検出され、その詳細は、こちらのようで、斑点米カメムシ防除に使うジノテフランが検出率も47.2%と高く、ワーストワンでした。
 
  表1 2017年度の農作物別の検体数と分析対象農薬数、延べ検出数 

  作物名  検体数 分析農薬数  検出農薬数  最大残留を 
            延べ検体数   延べ検出数  示した農薬ppm
  コメ    60  45農薬:300   7農薬:29  ジノテフラン 0.21
  ブドウ   60  49農薬:599   24農薬:116  クレソキシムメチル 1.3
  ダイコン  60  41農薬:372   1農薬: 2   ホスチアゼート 0.05
  サトイモ  29  20農薬; 71   3農薬: 7  アゾキシストロビン 0.08
  ホウレンソウ58    28農薬:191  12農薬:59   ジノテフラン 3.6
  ミズナ   30  16農薬: 95  11農薬:41  フルベンジアミド 2.8
  ネギ    60  51農薬:473  13農薬:39   イプロジオン 0.49
  タマネギ  30    38農薬:245   1農薬:2    アセフェート 0.04
  ナス    60  53農薬;411  14農薬:28  イプロジオン 0.77
  サヤインゲン30  21農薬; 85   9農薬:27  フルジオキソニル 1.5

★作物別では葉もの野菜での残留が目立つ
 表2に、農作物と農薬の組合せで、検出率が50%を超えるものと、検体数5以上で、検出率30〜59%のものを、検出範囲とともに示します。なお、1検体しか分析していないものは除きました。
 ホウレンソウやミズナでの検出率が高く、ジノテフランやジアゾファミド、フルフェノクスロンとの組み合わせがめだちました。ブドウでも、クレソキシムメチルやクロチアニジンが高い検出率でした。
   表2 検出率30%以上の作物と農薬の組み合わせ

 作物名      農薬名     検体数 検出数 検出率 検出範囲 
                            %   ppm    
 ホウレンソウ   クロチアニジン     3       3     100    0.19 〜0.38
 ホウレンソウ   ジメトモルフ        3       3     100    0.05 〜0.26
 ホウレンソウ   チアメトキサム      2       2     100    0.13 〜0.17
 ミズナ      ジノテフラン     13      13     100    0.02 〜2.1
 ミズナ      フルベンジアミド    2       2     100    0.87 〜2.8
 ネギ       プロシミドン        2       2     100    0.07 〜0.15
 ナス       プロシミドン        2       2     100    0.2  〜0.25
 サヤインゲン   ボスカリド          5       5     100    0.13 〜0.53
 ホウレンソウ   シアゾファミド     16      12      75    0.02 〜2.4
 ミズナ      フルフェノクスロン 15      11      73.3  0.03 〜1.2
 ホウレンソウ   ジノテフラン        7       5      71.4  0.01 〜3.6
 ミズナ      クロラントラニリプロール7   5      71.4  0.02 〜0.1
 ブドウ      クレソキシムメチル 19      13      68.4  0.04 〜1.3
 ホウレンソウ   スピノサド          6       4      66.7  0.02 〜1.2
 サヤインゲン   アゾキシストロビン  6       4      66.7  0.07 〜1.4
 ブドウ      クロチアニジン     17      11     64.7  0.01 〜0.21
 ブドウ      マンジプロパミド   17      11      64.7  0.03 〜0.25
 ホウレンソウ   フルフェノクスロン 25      16      64    0.03 〜2.3
 ブドウ      フルオピコリド      5       3      60    0.02 〜0.44
 サヤインゲン   アセタミプリド      5       3      60    0.03 〜1
 ブドウ      フルベンジアミド    9       5      55.6  0.02 〜0.07
 ホウレンソウ   クロラントラニリプロール9   5      55.6  0.04 〜0.9
 サトイモ     アゾキシストロビン  8       4      50    0.02 〜 0.08
 サヤインゲン   ジノテフラン        8       4      50    0.02 〜0.82
 コメ       ジノテフラン       36      17      47.2  0.01 〜0.21
 ブドウ      アゾキシストロビン 17       8      47.1  0.02 〜0.05
 ブドウ      ジノテフラン       15       7      46.7  0.01 〜0.05
 サヤインゲン   フルジオキソニル   13       6      46.2  0.03 〜1.5
 ブドウ      テブコナゾール     31      14      45.2  0.06 〜0.87
 コメ       フェリムゾン        7       3      42.9  0.03 〜0.07
 サトイモ     フルベンジアミド    5       2      40    0.01 〜 0.04
 ブドウ      ビフェントリン     16       6      37.5  0.01 〜0.04
 ブドウ      フェンブコナゾール  6       2      33.3  0.01 〜0.02

★ジノテフランは57検体で検出
 表3には、農薬別の検出数(検出された作物の種類数と検出検体数及び最大検出値を示した農作物のリストを示しました。
 検出された農薬の種類は48種で、延べ350検体に農薬が0.01〜3.6ppm(ホウレンソウのジノテフラン)残留していました。
 検出件数が多い農薬の順は、ネオニコチノイド系のジノテフラン57検体(うちコメ17、ミズナ13)、ついで、IGR系のフルフェノクスロン27(うちホウレンソウ16、ミズナ11)。殺菌剤アゾキシストロビン26(うちネギ9、ブドウ8)、クロチアニジン20検体(うちブドウ11)とシアゾファミド20検体(うちホウレンソウ12)と続きます。
 最大検出値が多い作物で、目立つのは、ホウレンソウで、イミダクロプリド、クロチアニジン、クロラントラニリプロール、シアゾファミド#、ジノテフラン#、シペルメトリン、ジメトモルフ、フェニトロチオン、フルフェノクスロン#、マンジプロパミド#等10種の農薬で、最大残留値を示した(#印は1ppmを超えた)ほか、スピノサドでも1.2ppmでした。  1ppm以上見出されたのは、ミズナのフルフェノクスロン1.2ppmとフルベンジアミド2.8ppm、ブドウのクレソキシムメチル1.3ppm、サヤインゲンのアセタミプリド1ppm、アゾキシストロビン1.4ppm、フルジオキソニル1.5ppmでした。ただし、同一検体での複合汚染の実態は不明です。
 表3  農薬別の検出数と最大検出作物(数値は検出値ppm)
    農薬名            検出作物の    最大検出作物と
                      種類数と検出数  最大検出値ppm
アクリナトリン        2種:4      ブドウ:0.19
アセタミプリド      4種:8      サヤインゲン:1
アセフェート       1種:2      タマネギ:0.04
アゾキシストロビン    5種:26          サヤインゲン:1.4
イプロジオン       2種:5           ナス:0.77
イミダクロプリド     4種:14     ホウレンソウ:0.6
エトキサゾール      1種:1      ブドウ:0.21
エトフェンプロックス   1種:1           コメ:0.01
クレソキシムメチル    1種:13     ブドウ:1.3
クロチアニジン      4種:20     ホウレンソウ:0.38
クロラントラニリプロール 5種:15     ホウレンソウ:0.9
クロルフェナピル     2種:3      ミズナ:0.71
クロロタロニル(TPN) 2種:7           ネギ:0.13
シアゾファミド      5種:20         ホウレンソウ:2.4
ジノテフラン       7種:57     ホウレンソウ:3.6
シプロジニル       1種:1      ブドウ:0.04
シペルメトリン      1種:1      ホウレンソウ:0.38
シメコナゾール      1種:1      ネギ:0.04
ジメトモルフ       1種:3           ホウレンソウ:0.26
シラフルオフェン     1種:1           コメ:0.01
スピノサド        2種:5      ホウレンソウ:1.2
チアメトキサム      2種:3           ホウレンソウ:0.17
テブコナゾール      1種:14          ブドウ:0.87
トリシクラゾール     1種:1      コメ:0.05
トリフルラリン      1種:2      ミズナ;0.02
トルフェンピラド     1種:2           ネギ:0.13
ノバルロン        1種:1      ナス:0.21
ビフェントリン      1種:6           ブドウ:0.04
ピリダリル        1種:5      ナス:0.15
ファモキサドン      1種:6      ブドウ:0.26
フェニトロチオン(MEP)2種:2           ホウレンソウ:0.03
フェリムゾン       1種:3      コメ:0.07
フェンブコナゾール    1種:2           ブドウ:0.02
フルオピコリド      1種:3      ブドウ:0.44
フルジオキソニル     2種:7           サヤインゲン:1.5
フルトラニル       2種:4      コメ:0.07
フルフェノクスロン    2種:27          ホウレンソウ:2.3
フルベンジアミド     4種:10     ミズナ:2.8
プロシミドン       2種:4      ナス:0.25
ブロモブチド       1種:5      コメ:0.07
ヘキシチアゾクス     1種:1           サヤインゲン:0.02
ベンチアバリカルブ
     イソプロピル  2種:4      ブドウ:0.13
ペンチオピラド      3種:6           ナス:0.2
ボスカリド        2種:7      サヤインゲン:0.53
ホスチアゼート      1種:2           ダイコン:0.05
マンジプロパミド     3種:13     ホウレンソウ:1.3
メソミル         1種:1      ネギ:0.04
メタラキシル
 (メタラキシルMを含む)1種:1           ブドウ:0.03

作成:2019-07-30