農薬の毒性・健康被害にもどる

n01804#厚労省統計による農薬死亡者数、科警研統計による中毒者数は年間250人を超える#19-09
 農薬中毒統計には、農水省の資料(記事n01101参照)のほか、厚労省と科学警察研究所(以下科警研という)のものがあります。今号では、後の二つの資料を紹介します。

★厚労省人口動態統計〜2017年度は死者251人
【関連サイト】厚労統計協会:Top PageICD分類による年次死亡数データ2017年(csvデータ)

 厚労省統計局による人口動態統計は、厚生労働統計協会が毎年上中下の3巻本を出版しています。その中の下巻には、死亡原因別の統計数値が国際分類に従い、掲載されており、農薬による死亡数を調べるのに図書館を利用していました。ところが、今年、発行されたH29年版は、ネットでもダウンロードできることになりましたが(DLサイト)、概要だけで、詳細な統計値はわかりません。そこで、例年どおりの統計のありかを捜し、上記のURLに到達しました。まずは、めでたし。

 人口動態統計については、記事n01101の2016年に続く、2017年の死者数を以下に示します。国際分類コードで整理されており、農薬成分名は不明ですが、2015年⇒2016年で、合計数が62減少し242人であったのにくらべ、2016年⇒2017年は前年増9の251人でした。

表1 厚労省の人口動態統計による2017年の農薬による死者数
 
分類コード                           男   女  合計 前年増減
T60	農薬の毒作用	         142     109   251    9
T60.0	有機燐及びカルバメート殺虫剤     52      32    84      6
T60.1	 ハロゲン系殺虫剤		    1       1     2      1
T60.2	 その他の殺虫剤	    	    5       3     8      4
T60.3	除草剤及び防黴剤*		   45      42    87    -12
T60.4	殺鼠剤	        	    1       0     1      1
T60.8	その他の農薬	    	    2       1     3    0
T60.9	農薬,詳細不明             36      30    66   - 9
★科警研の2016年の農薬中毒者調査の詳細では283人
 警察庁の科警研の調査資料「薬物による中毒事故等の発生状況」には、警視庁が所管する東京都を除く、全国46道府県の地方警察から報告された医薬品や農薬(農薬と衛生害虫用殺虫剤・殺菌剤なども含む)等による中毒事例がまとめられています。薬物や農薬成分ごとの事案が、中毒事案1件ごとに記載されており、中毒者の年齢や性別、原因となった成分名がわかります。
 記事31302に掲載した2013〜15年の3年間の統計につつく、2016年の事例について、成分別の中毒者数をまとめましたので、報告します。
 農薬関連物質を含む事例については農薬分類区分以外に、揮発性毒物、その他という分類があります。表には、揮発性分類のうち硫化水素(石灰硫黄合剤使用)及び塩素ガスとその他分類にある農薬と医薬品等他の物質を同時摂取した事例もあり、これらを合算すると、農薬関連の中毒者数は年間283人でした。
 表2には、農薬成分別の中毒者数を示してあります。自殺や誤飲の結果、死に到ったケースが多いと思いますが、中毒者中の死者数は不明です。表には、複数の農薬製剤や農薬と医薬品その他の薬剤を同時に摂取した事例は、( )に外数として記載(中毒人数は含有される薬剤ごとに、重複カウント)してあります。

【農薬分類にある中毒者数推移】表2の下段にしめしたように、2013年の271人から2016年204人と減少傾向にあります。

【揮発性物質】硫化水素ガスによる自殺事例の総数は、2015年にくらべ14人減り、49人でした。硫黄源として、硫黄合剤が使用されるケースがまだみられ、2016年は18人でした。ほかにも、石灰硫黄合剤そのものを摂取した事例は16年には3人みられました。
 もうひとつ揮発性ガスによる事例として漂白剤や洗剤の成分、次亜塩素酸塩等と酸性物質の混合によって発生した塩素ガスによる中毒事例は4人ありました。漂白や殺菌用の次亜塩素酸塩系製品(アルカリ成分も含む)そのものを摂取した事例は、15年の9人から16年は2人に減りました。

【殺虫剤と除草剤】殺虫剤ではカーバメート系メソミルが26人、除草剤ではパラコート・ジクワットが44人で、ワースト1であることは、前年と変わりませんでした。前者はランネート、後者はプリグロックスLとしてよく知られる毒劇法指定の農薬です。
 指定のない、有機リン系MEP(スミチオン)とマラソンが各18人、記事n01802でとりあげたグリホサートが30人と多いことも、身近にある農薬だけに、今後も心配です。

【ピレスロイドとネオニコチノイド】ピレスロイド系は、2015年6種9人あったものが、16年はゼロとなりましたが、ネオニコチノイド系は、モスピランの成分アセタミプリドなどの複合摂取を含め2016年は6人と、前年より増加しました。

【その他の農薬等】
 有機リンのパラチオンもそうですが、販売禁止農薬で、登録失効しているベンゾエピンが、いまだ、回収されずに、残存しているせいか、2016年にも中毒被害が発生しています。
 また、農薬ではありませんが、ジクロロベンゼンやクレゾールによる中毒がそれぞれ、1人と3人みられました。

表2 2015〜16年の農薬別中毒数 <出典:科警研資料59号、60号>
            ( )は複数薬剤摂取で外数、重複カウントあり
農薬名         中毒者数                 農薬名         中毒者数
                  2015年     2016年                  2015年     2016年    
■揮発性物質                                ■除草剤
硫化水素            60(1)      46(1)            MCPA            (1)         (3)
 うち石灰硫黄合剤s使用   9         18               MCPP           1           (2)
塩素ガス                 -          4               2,4−PA            -          (1)
■有機リン系殺虫剤                                  グリホサート             34(8)      30(6)
DDVP                1(4)        (1)            グルホシネート          3          8(2)
DEP                  1(1)       5(2)            ジクワット                1          6
DMTP                2(1)       4               トリフルラリン           -           (1)
EPN                   1          1               ブロマシル                -           (1)
EDDP                 -          1               パラコート・ジクワット*2 39(2)      44(6)
MEP                  12(5)      18(7)               *2 パラコートとジクワット複合製剤又は両剤の混合事例
MEP・マラソン*1     15(3)       7(2)            パラコート              13(3)       1
   *1 MEPとマラソンの複合製剤又は両剤の混合事例     ペンタゾン           1          (1)
アセフェート            3(5)       4(5)            メトリブジン             -           (1)
イソキサチオン        -          2               
エチルチオメトン         -          1	            ■その他の農薬      
ジメトエート            (1)       1               アミトラズ          1          1(1)   
ダイアジノン            -          1(1)            クレゾール             4          3
パラチオン              1          1(1)            クロルフェナピル   	      3(1)        (1)
ピリミホスメチル     -      (1)            ジクロロベンゼン       (1)       1
フェントエート(PAP)     3           (1)            トリホリン                -           (1)
マラソン              24(5)      18(5)            ベンゾエピン              -          1
■カーバメート系殺虫剤                              ワルファリン             -           (1)
BPMC             2           (1)            次亜塩素酸塩           9(1)       2(2)
メソミル                41(4)      26(8)            石灰硫黄合剤             4          3
■ネオニコチノイド系殺虫剤                          無機銅          -     (1)
アセタミプリド        1           (2)           
イミダクロプリド        (1)       1               ■ピレスロイド系殺虫剤  9種6(5)       -
クロチアニジン        (1)       1(1)
チアメトキサム       -      1 
                                                                                             

    ■農薬分類の中毒者合計数*3   ()は その他の農薬に分類されたもので内数
      2013年 14年 15年  16年
       271    267    243   204     *3 科警研の農薬分類にある合計数
      (51)   (40)  (42) (22)  
    ■その他の分類*4           *4 科警研の他の分類にあり、医薬品などのほか
        2013年 14年 15年  16年    農薬成分を含むもの
       31   34   38   29 

作成:2019-09-30