環境汚染にもどる

n01905#農薬及び関連物質による危被害 (3)水系への流出や魚毒事件#19-10
 10月12日から13日に来襲した台風19号により、全国各地で、農家や水田、畑が浸水したり、収穫前後の作物が水をかぶり、大きな被害がでており、いまだ全貌がつかめません。犠牲になられた方へお悔やみ、被災された方にはお見舞い申しあげます。

★台風水害による農薬等有害物の流出
 河川などの氾濫で、福島県や長野県の工場から、毒物や有害廃棄物が流出し、静岡県では、工場保有の農薬も行方不明になっています。
 農家や販売店にストックされている農薬の流出や、無人航空機その他の散布装置の被害も気になります。
 さらに、原発事故による放射能汚染地域では、土壌やストックしていた放射性廃棄物が流出して、放射性物質が拡散する危険を無視できません。

【福島県郡山市 シアン化物流出】メッキ工場からの毒物シアン化ナトリウムの流失が報告されています。
 郡山市の流出メッキ工場は、エム・ティ・アイ社サンビックス社で、いずれも、氾濫した阿武隈川近辺にあります。

 郡山市はエム・ティ・アイ調査結果(水質調査地点図土壌調査地点図)とサンビックス調査結果(流出経路地図)を報告しています。
 前者については、工場出口調整池の貯留水にシアン化合物が濃度23mg/L(排水基準0.5mg/L)、阿武隈川に流入する直前の1箇所で0.3mg/L検出されました。市の対応は、以下のようです。
  ・周辺住民への周知
   宅地を含む周辺土壌からシアン化合物が検出されなかったことから、避難の呼びかけを
    終了することとし、周辺住民(世帯数 24世帯)に知らせる。
  ・周辺環境調査
   阿武隈川流入点前(水穴排水樋管)における水質検査を継続する。
 しかし、報道によると、メッキ工場周辺住民の健康状態を調べたところ、20人が下痢や吐き気などの体調不良を訴えていたことが、わかったそうです。

【福島県本宮市 有害廃液流出】10月25日以後も、本宮市にある2つの工場からの有害廃棄物の流出が明らかになってきました。
  阿武隈川水系水質汚濁対策連絡協議会の発表(10月25日10月28日)によると、本宮市にある、アイシー産業社から有害物質入りのドラム缶(トリクロロエチレン、ジクロロメタン、イソプロピルアルコール等)が、本宮アルマイト工業社からは、フッ化水素アンモニウム廃液入りタンクが流出していたとのことです。

【長野市 シアン化物流失】長野市では、千曲川の堤防決壊で、浸水したメッキ工場からシアン化ナトリウムが流出しました。
 県の調査では、工場の敷地内土壌で最大2.6ppm、敷地外で最大2.3ppmのシアン化合物が検出されましたが、土壌含有量基準50ppnmより低く、健康リスクは低いと判断されています。

【静岡市 農薬リン化アルミニウム剤流失】10月17日、静岡市の食用油会社J-オイルミルズは、台風19号による高潮で、工場内の薬物保管庫がらリン化アルミニウムくん蒸剤フミトキシン(特定毒物で。水と反応してリン化水素ガスを発生する)の1kg入り容器が4本流出し。うち1本は敷地内で発見されたが、残り3本が不明であると広報し、工場内外を探索するとともに、近隣住民、漁業組合の皆様には説明会を実施いたします、としました。

★塩素系物質による水系汚染
 水害被害地域における感染症対策として、厚労省が発表した家屋の防疫対策では、次亜塩素酸系消毒剤も挙がっているので、注意を要します。主な消毒剤の表では、2006年に、反農薬東京グループなど26団体と4個人による浸水時のクレゾール使用についての要望(2006/2/06)で指摘したクレゾールが消えています。
 ここでは、この半年で報道された塩素系物質による汚染を紹介します。

【京都府 塩素系物質の水道水汚染】京都府の乙訓浄水場(京都市西京区)は桂川を水源とし、周辺の2市1町(向日市、長岡京市、大山崎町)に水道水を供給していますが、6月21日から、相次いで、異臭の訴えがよせられました。臨時に送水の水質検査が実施されましたが、水道水の基準に異常はみられず(検査結果)、原因はすぐには特定されませんでした。その後、8月20日結果報告で、『浄水及び分水点での水質検査で、定量下限付近のクロロフェノールが存在することがわかった/河川水に混入したフェノール等が浄水処理工程で注入する塩素によりジクロロフェノール及びトリクロロフェノールを生成し、これに塩素臭等が加わり異臭を強く感じたものと推測』との結論がだされました。再発防止のため、官能試験を強化し、異臭を感じた場合、他浄水場系からの応援給水と粉末活性炭の注入を行うそうですが、根本の水源でのフェノール類汚染原因が不明では心もとないことです。

【宮城県 工場廃水から塩素−魚へい死】10月2日、宮城県岩沼市のトーヨータイヤ社が。仙台工場からの排水により、地域を流れる五間堀川で一時的に塩素濃度が高くなる事象が確認されたとの、お詫びを発表しました。冷却水を滅菌処理するために使用している次亜塩素酸ソーダ液を高い濃度で、排水路から放出したということです。数十匹の魚の死亡が確認されています。

【北海道 プール消毒で体調不良】 10月4日、北海道岩見沢市の市民プールで、消毒用塩素濃度が2.5ppm(通常0.4〜1ppm)の高濃度となり、中学生2人が体調不良を訴えました。自動塩素投入器の不備が原因のようです。

★静岡市 庵原川・神明川で農薬などによる魚毒死
 10月3日、静岡市の庵原川(いはらがわ)水系で魚の大量死が、見つかりました。現場近くでは、今年の4月5日に庵原川で。ハゼなど約1000匹の魚類がへい死が、6月21日には神明川雨水1号幹線で、オイカワなど約700匹の魚類がへい死が報告されていましたが、原因は確定していませんでした。
 10月のアユ・オイカワなど約800匹の魚類がへい死は、両河川の合流地点下流でおこったもので、今回は河川水と死魚の農薬分析が実施されました。河川水からは農薬は検出されなかったものの、魚のエラから、ピレスロイド系農薬ビフェントリンが0.18ppm、同エトフェンプロックス0.06ppmと防疫用殺虫剤プロペタンホス0.09ppmが検出され、農薬や殺虫剤が原因である疑いが強くなりましたが、市は、『今回河川に農薬などの成分が混入した経緯等は不明だが、市販されている家庭用・園芸用薬剤の中には、上記成分を含むものもあるため、薬剤を河川等に誤って投棄しないよう、地元自治会や農協などの協力を得ながら、農薬などの適正使用について改めて注意喚起を行う。 』としています。


作成:2019-10-30