食品汚染・残留農薬にもどる

n02003#厚労省の輸入食品監視調査結果−2019年5月〜10月の残留農薬基準違反#19-11
【関連記事】記事n01504(2018年11月-2019年4月)
【参考サイト】厚労省:輸入食品監視業務の頁にある違反事例
           平成25〜26年度 食品中の残留農薬等検査結果について(国産・輸入別、食品別の残留データあり):
           2015年度(1033p)、2016年度(954p)

 記事n01504に続き、厚労省管轄の検疫所での輸入食品検疫検査で、残留農薬が基準を超えて検出された事例について、2018年11月〜2019年4月の半年分をまとめました。
 なお、この調査は、日本の残留基準に適合するかどうかを判定に使われ、基準より低い残留量は発表されません。残留分析結果そのものを公表している機関はあまりなく、東京都健康安全研究センター調査が参考になります(記事n01102など)。また、厚労省は。自治体等の調査データを年度ごとに、pdf版で詳細報告書を公表しています。

★違反件数は62件〜31品目の食品で、29種の農薬に基準超え
 残留基準又は一律基準違反数は前の半期より4件減少の62件(延べ件数は63件で、うち、食品添加物使用基準違反2件、一律基準0.01ppm違反は37件)で、多いのは6月18件、7月16件月で平均10件でした。
半年間に、21カ国、31品目の輸入食品(冷凍や加工食品も含む)から29種の農薬の食品衛生法違反(検出範囲は、ペルー産キノアのフィプロニル0.004ppm〜南アフリカ産グレープフルーツのイマザリル5.6ppm)がありました。
 違反を摘発した検疫機関は12で、件数が多い検疫所は横浜13、東京12、大阪8件の順でした。違反が判明したのは命令検査が18、モニタリング検査が35、自主検査が8件ありました。下表に、食品別、生産国別、農薬別の件数を違反の多い順に示します。
 さらに、違反事例のうち、厚労省や地方自治体、出荷先らが広報したものの一部を囲み記事に示しました。

【食品別の違反】
 表(a)の食品別違反で、前の半期13件であったバナナ(フィリピン産でフィプロニル違反)が1件と大幅に減少したかわりに、香辛料や冷凍のトウガラシが10件で、ワースト1位に浮上しました。ついで、同じく13件あったカカオ豆が6件減少し7件で2位でした。以下、セロリ6件、タマネギ4件、ネギ3件と続きました。
 トウガラシは、スリランカ産の香辛料4件にドリアゾホスが0.05-0.26ppm、ベトナム産2件にプロピコナゾールの、同じくベトナム産冷凍もの2件にトリシクラゾールの違反がみられました。
 カカオ豆は、2,4-Dが7件(うちベネズエラ産に3件、ガーナとエクアドル産各1件)で0.02-0.05ppm見出されたほか、ガーナ産にはクロルピリホスが0.08ppm、ベネズエラ産にはシペルメトリンが0.04ppm残留していました。
 セロリは、アメリカ産にアセフェート3件(0.03-0.05ppm)、メタミドホス1件、ビフェントリン1件、イギリス産にフルジオキソニル1件の違反がありました。  タマネギは、以前から検出されていた中国産のチアメトキサムが4件0.03-0.06ppmでした。ネギも中国産3件で、うち、2件でチアメトキサム3ppmの残留が報告されています。  前の半期で多かったオオバコエンドロ6件、ニンニク4件、ゴマとニンジン各3件がゼロになりました。

【生産国別の違反】
 表(b)の生産国別違反では、ワースト1位は、前の半期から4件増えた中国が17件、2位は9件増のアメリカが11件、ついで、ベトナム5件、スリランカとベネズエラ4件でした。  中国は、上述のようないタマネギ4件とネギ3件のほか、野菜類での違反が目立ち、菊の花のクロルピリホス、乾燥ナツメのピラクロストロビンやプロピコナゾール。冷凍二枚貝のプロメトリンなどもありました。タイの3件では、ドリアンのプロシミドンが2件でした。
 前の半期で7件であったエクアドル(うちカカオ豆の2,4−Dが6件)は1件に減少しました。

【農薬別の違反】
 表(c)の農薬別違反件数では、ワーストワンは前の半期の3件から復活して8件となったチアメトキサム、2位が8件減の2,4−Dで5件、3件増のトリアゾホス5件、ついで、6件減のクロルピリホス4件、プロピコナゾール4件。新顔のデルタメトリン/トラロメトリン総和4件、アセフェート、ビフェントリン、プロシミドンが各3件ありました。
 チアメトキサムは上述のように中国産に最高3ppm(ネギ)のほか、ウガンダ産ゴマの種子に0.07ppm検出されました。2,4−Dはいずれもカカオ豆、トリアゾホスはスリランカ産トウガラシ系香辛料に最大で0.26ppm、クロルピリホスは中国産サトイモに0.27ppm、プロピコナゾールはタイ産スナップエンドウに0.11ppm。デルタメトリン/トラロメトリン総和は、トウモロコシやポップコーン類でいずれもアメリカ産で0.15ppm検出されています。  前の半期で、違反が5件あったプロフェノホス(うちベトナム産のオオバコエンドロ4件)、4件だったヘキサコナゾール(うちベトナム産のオオバコエンドロ2件)、3件だったシペルメトリン(うちベトナム産のオオバコエンドロ2件)がそれぞれ、1件となっています。
 なお、1月に、横浜市で検出されて問題となったアメリカ産のグレープフルーツのジヒドロストレプトマイシン及びストレプトマイシンは、その後の検疫所の調査にはありません(記事n01202の囲み)。

【違反の原因と措置】
 違反原因については、すべての事例で不明となっており、きちんと調べる必要があります。  違反食品の措置については、廃棄、積み戻し等を指示(全量保管)が47件と最も多く、廃棄、積み戻し等を指示(一部販売済み、残余保管中)が6件、廃棄、積み戻し等を指示(調査中)が5件ありました。
 全量販売済みの4件は、アメリカ産ラズベリー(メトキシフェノジド0.21ppm)、タイ産ドリアン(プロシミドン0.06ppm)、オランダ産セルリアック(クロルプロファム0.04ppm)、中国産ネギ(ピリプロキシフェン0.06ppm)、全量消費済みは1件で、プロシミドン違反のタイ産のドリアンでした。
  表  2018年11月〜19年4月の内容別違反件数  ( )は前の半期の違反数

(a)食品別               (b)生産国別          (c)農薬別                  
                                                  
トウガラシ 10(2)       中華人民共和国   17(13)	  チアメトキサム      8(3)
カカオ豆  7(13)       アメリカ合衆国   11(2)	  2,4−D       5(13)	
セロリ   6(0)        ベトナム       5(9)	  トリアゾホス       5(2)	
タマネギ  4(1)        スリランカ      4(0)	  クロルピリホス      4(10) 
ネギ    3(0)        ベネズエラ      4(2)	  デルタメトリン
アボカド  2(1)        タイ         3(4)	   及びトラロメトリン   4(0)
サトイモ  2(3)        ガーナ        2(4)	  プロピコナゾール     4(1)
トウモロコシ2(0)        フィリピン      2(13)	  アセフェート       3(0)
ドリアン  2(0)        メキシコ       2(1)	  ビフェントリン      3(1)
ナツメ   2(0)                                  プロシミドン       3(6)	
ポップコーン2(0)        台湾など12ヵ国各  1	  イマザリル        2(2)
                                                  トリシクラゾール     2() 
カキなど18作物種各1                               フィプロニル       2(13)	
ウナギなど2魚介類各1                              メトキシフェノジド    2(0) 
                                                  イミダクロプリドなど16農薬各1

*** 囲み記事:厚労省や地方自治体、出荷事業者らが公表した違反事例 ***

公表月日違反食品出荷事業者検出農薬
2019/04/05中国産らっきょの甘酢製品神戸市・黒田食品イソプロカルブ:0.06ppm
 【違反概況】通常ならば、販売者が回収の責を負うのですが、お知らせ(4/05)によると会社は自主回収ができず、廃棄となりました。そのため事後の処理を弁護士に対応させるとの通知書が発せられました。
 らっきょを輸入し黒田食品に売った東海澱粉社は、商品を製造・販売しているわけではないので、黒田食品の法的手続きへの移行はは迷惑だとの言い分のお知らせ(4/08)をだしています。迷惑なのは、食品衛生法違反の食品を買わされた消費者です。
2019/05/30ニュージーランド産たねなし柿川崎市・コストコホールセールジャパンメトキシフェノジド:0.03ppm
 【違反概況】モニタリング検査で、違反が判明し、コストコ社が、返品・返金のお知らせを発しています。
2019/06/12中国産ワサビ大阪市・明星貿易プロシミドン:0.07ppm
 【違反概況】関西空港の検疫所によるモニタリング検査で、違反が判明し、大阪市が回収命令をだしました。この輸入品をお客に提供していたグルメ杵屋レストランからもお詫びが発出されています。
2019/06/18メキシコ産アボカド東京都・Wismettacフーズビフェントリン:0.04ppm
 【違反概況】ユニオン社が輸入したものにも0.09ppm検出され、厚労省は検査命令(6/18)をだしました。
2019/07/09アメリカ産セロリ京都市・ローヤル社メタミドホス:0.02ppm
 【違反概況】京都市の自主回収情報によれば、7月4日から回収開始。その後、同セロリをもちいた加工製品−香味小夜子漬物マルハチのセロリ塩漬−から、メタミドホスの原材料であるアセフェートが0.05ppm検出され、回収されています。
2019/08/02タイ産ドリアンプラトーン・アジアンフード社プロシミドン:0.05ppm
 【違反概況】厚労省の発表によれば、ほかに、理賢社の輸入品にも0.02ppmの違反例があり、検査命令がだされています。
2019/08/22ポップコーンの素神戸物産社ピリミホスメチル:検出濃度不明
 【違反概況】販売された5商品に使用された原料のコーンの産地不明なまま、回収・返金が行われています。
2019/09/02オランダ産セルリアック東京都・エヌエイティ社クロルプロファム:0.04ppm
 【違反概況】東京都品川区が違反公表、回収指示しています。
2019/09/13中国産青ネギ京都市・誠明貿易社チアメトキサム:3ppm
 【違反概況】神戸検疫所のモニタリング検査で、違反がみつかりました。
2019/10/25ネギ東京都・上海コウヨウ食品ピリプロキシフェン:0.6ppm
 【違反概況】東京都中央区が違反公表、回収指示しています。

作成:2019-11-30