食品汚染・残留農薬にもどる

n02005#グリホサートの小麦での残留実態〜厚労省の基準30ppmをめぐって#19-11
【関連記事】記事t28401記事t30803記事n01604(囲み:除草剤グリホサートについての参考資料)
【参考サイト】食品安全委員会:グリホサートの農薬評価書
       厚労省:グリホサートの残留基準資料
        環境脳神経科学情報センター:2019年5月21日デトックスプロジェクトジャパン立ち上げ講演会資料
                          <除草剤グリホサート、グルホシネートの毒性>とYoutube動画サイト

★厚労省算出の最大1日摂取量では、小麦の食品別寄与率が45.7%を占める
 2015年の4月にIARC(国際がん研究機関)により、グリホサート(商品名ラウンドアップほか)の発がん性ランクが2A(5段階のうち2番目に強いランクで、ヒトに対して恐らく発がん性がある)に強化されたのを契機に、同成分のさまざまな毒性が問題視されはじめました(木村-黒田さんの総説記事28401)。一方で、日本の食品安全委員会は2016年7月、それまでのADI0.75mg/kg体重/日を1mg/kg体重/日に緩和し、ARfDについては、設定する必要はないとしました(EUでは、ADI0.5mg/kg体重/日。ARfDは0.5mg/kg体重である)。
 この決定を受けた厚労省は、2017年のクリスマスに、グリホサートの残留基準の大幅緩和を行いました(記事t31701)。小麦をはじめとした穀類、ゴマ、綿実、ナタネなどが30ppm又は40ppmに設定され、同省の算出した一日のグリホサートの理論最大1日摂取量(TMDI=残留基準×食品の一日平均摂食量)は 1歳以上の一般区分で3925.0μg/人/日、個別食品で100μg/人/日を超えた食品が6件となりました(表1参照)。
 ADI=1mg/kg体重/日とした場合、の対ADI比は、各区分とも安全の目安とする80%を超えることはありませんが、一般区分をみると、全137食品中上位7品目だけで、3593.9μg/人/日(全体の92%)、なかでも、個別食品でもっとも多いのは小麦1794μg/人/日で寄与率は45.7%でした。

 表1 グリホサートの食品別一日推定摂取量(単位:μg/人/日)

 食品名  残留基準  一般区分 幼小児区分 妊婦区分 高齢者区分
 小麦    30ppm*   1794.0   1329.0    2070.0   1497.0   *:EUの基準は10ppm
 大麦    30      159.0      132.0      264 0      132.0
 大豆    20      780.0      408.0      626.0      922.0
 てんさい  15      487.5      415.5      616.5      498.0
 さとうきび  2           196.4      167.2      248.2      200.4
 なたね   30           177.0      111.0      162.0      138.0
 137食品合計       3925.0     2796.8     4344.5     3752.7
   ADI比(%)       7.1       17.0        7.4        6.7 
★小麦の残留量の実態は?
 国産農作物のグリホサートの残留調査は、ほとんど実施されておらず、農水省は、毎年、農作物の残留調査を報告していますが、グリホサートは対象外です(記事n01605)。また、本誌で報告している東京都健康安全研究センターの国内外の農作物の残留調査は、約300の農薬が分析対象になっていますが、グリホサートは含まれません(記事n01002記事n01102など参照)。
 また、厚労省の残留農薬調査のまとめでも、記事n01604の囲み資料にあるように、記載があるのは輸入農作物についてのみです。  ここでは、一番摂取量が多いと思われる輸入小麦とその加工製品中におけるグリホサートの残留調査結果を見てみます。

【1】農水省の輸入小麦調査〜カナダ産検出率96〜100%、最大検出値4.4ppm
 【関連記事】記事t30803(2011-2015年の小麦分析値あり)
 【参考サイト】農水省:米麦の残留農薬等の調査結果(国産品)輸入米麦の残留農薬等の分析結果

 農水省は海外から輸入される米や麦類の残留農薬について、輸出相手国の港での輸入時調査や日本に着いた時のサーベイランス調査を行っており、相手国や年度によって、調査対象となる農薬数は異なりますが、グリホサートは、前者の調査にはいっています。その検出状況を産出国別年度別に表2に示します。
 2014から2018年において、検出率が高いのはカナダ96-100%、ついでアメリカ93-98%、オーストラリア14-45%、フランス0-18%の順です。プレハーベストとして収穫直前にグリホサートを使っているためか、北アメリカやオーストラリアで検出率が高いとしても、各年の最高検出値は、カナダ産2.3-4.4ppm、アメリカ産0.92-2.0ですから、従来の日本の基準5ppmで、十分対応できたのに、なぜ、30ppmに緩和としたのか理解できません。
  表2 産出国別の小麦中のグリホサート検出状況

     産出国        年度         
               2014   2015   2016    2017    2018  
  アメリカ
   検体数           118      131      105        137        147
   検出数           116      122      102        133        144
   検出率   %      98       93       97         97         98
   検出範囲 ppm  0.01-2.0  0.01-1.9  0.01-0.92 0.01-2.0  0.01-1.9
  オーストラリア
   検体数            41       48      42          37         44
   検出数             8        8       6           6         20
   検出率   %      20       17      14          16         45
   検出範囲 ppm  0.02-0.03 0.2-0.11 0.01-0.04 0.02-0.03  0.02-0.30
  カナダ    
   検体数            77       80      70          75         76
   検出数            74       79      70          75         76
   検出率   %      96       99     100         100        100
   検出範囲 ppm   0.02-3.5  0.02-4.4  0.11-2.4  0.02-3.1   0.06-2.3
  フランス
   検体数            15       17      15          15         16
   検出数             0        3       2           2          0
   検出率   %       0       18      13          13          0
   検出範囲 ppm   <0.02      0.02  0.03-0.13   0.02-2.2     <0.02
【2】農民連食品分析センターによる小麦関連残留農薬調査
 【参考サイト】農民連食品分析センター:Top Page沿革募金・寄贈のお願い公開調査データ

 日本では、グリホサートの小麦への適用は、起耕前、播種前の圃場での散布と、収穫前日までは、圃場の周縁の除草に可となっているだけで、プレハーベスト使用をすれば、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令に違反し、罰則を科せられます。登録に際しての、グリホサートの各種塩類での残留基準試験は22件あり、最大残留値1.6ppmでしたが、なぜか、残留基準は5ppm(これは、飼料と同じ基準)とされていました。ところが、残留データ不明のまま、国際基準に合わせた30ppmに大幅緩和されたのです。前述のように、輸入小麦の残留値は、基準に比べ、低いのですが、市場に流通する小麦製品での残留実態を調べたのは、農業者や消費者の立場で、食の安全を求めているNPO法人農民連食品分析センターです。同センターの調査結果は表3、表4に示したとおりで、その概要は以下のようです。

★小麦製品のグリホサート残留状況調査結果〜検出率71%、最大検出値は全粒粉1.1ppm
【参考サイト】小麦製品のグリホサート残留調査1st(3/10発表)

 <試料>2018年10月から2019 年1月、ネット通販や店舗などからの購入した4種24製品で。内訳は小麦粉:13、全粒粉:6、シリアル:1、パスタ・マカロニ:4
 <グリホサートの分析>グリホサートとその代謝物AMPA(アミノメチルホスホン酸)が分析対象となっており、前者の定量下限値は0.01ppmで、後者は0.05ppm。
 <分析結果>グリホサートは17検体から検出されました(検出率:71%、検出範囲:痕跡〜1.1ppm、原産地記載なし:11)。不検出の7検体のうち3検体の小麦原産地は国産ということです。また、カナダ産小麦を原料とする全粒粉2検体からグリホサートとともに、代謝物AMPAが痕跡みいだされています。

 小麦製品で、グリホサートが検出される理由のひとつは、収穫前のグリホサートのプレハーベスト処理と考えられますが、残留基準30ppmに比べ、低いですが、コメに次ぐ、主食品だけに、人の摂取量を多くする要因のひとつになります。とくに、分析したセンターは『全粒粉での検出が、目立つのは、プレハーベスト処理によって付着したグリホサートを多く含む、外皮いわゆる「ふすま」部分を多く含みためと考えられる』としていることも、気懸りです。
  表3 小麦製品中のグリホサートの分析結果 (単位:ppm)

分類      サンプル名               小麦の原産地 製造者・販売者       グリホ分析結果   AMPA分析結果

シリアル オールブランフルーツミックス  記載なし    日本ケロッグ株式会社    検出せず          検出せず
パスタ    スパゲッティ                 カナダ      株式会社朝日            0.09              検出せず
パスタ    パスタ オーマイ1.7mm        記載なし    日本製粉株式会社        0.07              検出せず
パスタ    GABAN BlackSpaghetti         記載なし    株式会社ギャバン GO     0.11              検出せず
マカロニ  マカロニ                     カナダ     (株)コルノマカロニ     検出せず          検出せず
小麦粉    デュラムセモリナ粉      カナダ/アメリカ (株)パイオニア企画     0.03              検出せず
小麦粉    薄力粉小麦粉                 記載なし    奥本製粉株式会社        0.02              未検査
小麦粉    強力小麦粉                   記載なし    日本製粉株式会社        0.37              検出せず
小麦粉    昭和天ぷら粉                 記載なし    昭和産業株式会社        検出せず          検出せず
小麦粉    日清フラワー薄力小麦粉       記載なし    日清フーズ株式会社      検出せず          検出せず
小麦粉    日進クッキングフラワー       記載なし    日清フーズ株式会社      痕跡              検出せず
小麦粉    日清カメリヤ強力小麦粉       記載なし    日清フーズ株式会社      0.09              検出せず
小麦粉    CGC薄力小麦粉                記載なし    日本製粉株式会社        痕跡              検出せず
小麦粉    ローソンセレクト薄力小麦粉  記載なし    日本製粉株式会社        痕跡              検出せず
小麦粉    日清コツのいらない天ぷら粉  記載なし    日清フーズ株式会社      痕跡              検出せず
小麦粉    セブンイレブン天ぷら粉       記載なし    日本製粉株式会社        痕跡              検出せず
小麦粉    カナダ産 強力小麦粉          カナダ      昭和産業株式会社        0.168             検出せず
小麦粉    オーマイ 強力小麦粉          記載なし    日本製粉株式会社        0.179             検出せず
全粒粉    全粒粉100%で焼けるパン用粉   カナダ主体  株式会社富澤商店B      1.05              痕跡
全粒粉    全粒粉(強力粉)          カナダ/アメリカ (株)パイオニア企画     0.88              痕跡
全粒粉    日清全粒粉パン用             記載なし    日清フーズ株式会社      1.1               検出せず
全粒粉    北海道産全粒粉小麦春よ恋     北海道      株式会社富澤商店B       検出せず          検出せず
全粒粉    小麦粉春よ恋(石臼挽き)       北海道      株式会社富澤商店A       検出せず          検出せず
全粒粉    里山の全粒粉                 静岡県      ポラーノ農園            検出せず          検出せず
★食パン等のグリホサート残留状況調査結果〜検出率76%、最大検出値0.23ppm
【参考サイト「食パンのグリホサート残留調査」(4/05発表)

 <試料>2019年3月から4月にかけて、市販のパン類15製品を購入。うち、食パンが13検体(国産小麦と記載されているものが3、JAS有機栽培利用が1、小麦産地記載のないものが9。また、全粒粉を使用している旨の記載のある製品が4)と菓子パン2でした。  <グリホサートの分析>定量下限値はグリホサート0.01ppm、AMPAは0.05ppmです。
 <分析結果>表4に示したように、パン類15検体のグリホサート検出率は73%(11検体)で。食パン9検体から痕跡〜0.23ppmのグリホサートが、1検体からAMPAが痕跡が。又、菓子パン2検体からグリホサートが痕跡と0.05ppm検出されました。
 全粒粉を使用している4検体で、グリホサートの数値が高い傾向が見られ、国産小麦を使用している3検体すべてで、グリホサートは検出されませんでした。

 総じて、パン類におけるグリホサートの残留は、小麦粉などの加工製品のように1ppmを超えるものは、みられませんでした。
今後、穀類以外の植物油や大豆など豆類からのグリホサートの摂取や水汚染による飲料水経由や除草剤散布地域での大気経由の摂取を考慮し、人のグリホサートの取り込み総量がどの程度になっているかをもっと調べるべきでしょう。
  表4 食パン等のグリホサートの分析結果 (単位:ppm)

分類    サンプル名            小麦原産地     製造者・販売者        グリホサート    AMPA
                                                 分析結果(ppm)   分析結果(ppm)
食パン   麦のめぐみ全粒粉入り食パン       記載なし       敷島製パン株式会社(Pasco)   0.15           検出せず
食パン   ダブルソフト全粒粉           記載なし       山崎製パン株式会社          0.18           検出せず
食パン   全粒粉ドーム食パン           記載なし       パンリゾッタ東武池袋店
                                                             (山崎製パン系列店)    0.17           検出せず
食パン   健康志向全粒粉食パン          記載なし       株式会社マルジュー          0.23           検出せず
食パン   ヤマザキダブルソフト          記載なし       山崎製パン株式会社          0.1            検出せず
食パン   ヤマザキ超芳醇             記載なし       山崎製パン株式会社          0.07           検出せず
食パン   Pasco超熟                記載なし       敷島製パン株式会社(Pasco)   0.07           検出せず
食パン   Pasco超熟国産小麦                国産           敷島製パン株式会社(Pasco)   検出せず       検出せず
食パン   本仕込み                         不明           フジパン株式会社            0.07           検出せず
食パン   朝からさっくり食パン             不明           株式会社神戸屋              0.08           痕跡
食パン   パン 国産小麦                    国産           まるまぱん                  検出せず       検出せず
食パン   有機食パン                       記載なし       有限会社ザクセンW           検出せず       検出せず
食パン   十勝小麦の食パン             国産(北海道/十勝) (東都生協取り扱い)        検出せず       検出せず
菓子パン アンパンマンのミニスナック       記載なし       フジパン株式会社            0.05           検出せず
菓子パン アンパンマンのミニスナックバナナ 記載なし       フジパン株式会社            痕跡           検出せず
★酒類中のグリホサート調査〜ワインやビールにも検出される
【参考サイト】輸入ワインのグリホサート残留状況調査(2018/12)
         輸入ワインのネオニコチノイド系農薬など残留農薬131成分調査2018 1st(2019年7月)
         市販ビールのグリホサート残留調査2019(2019/08)

 農民連食品分析センターでは、2018年に輸入ワイン、2019年に国産と輸入ビールのグリホサートの調査をしています。
 <ワイン>入手期間は、2018年5月から11月で、14カ国で製造された22製品で。グリホサートは、9カ国13製品から、痕跡〜0.05ppmの範囲で検出されました。

 <ビール、発泡酒など>入手期間は、2019年3月から4月で、ビール15製品、発泡酒2製品、リキュール類(発泡性)5製品の合計22製品中、2検体(日本製発泡性リキュール「麦とホップ黒」とアメリカ製発泡酒「ブルームーン缶」)に痕跡のグリホサートが検出されました。

  ワインの原料であるブドウの残留基準は0.5ppmですが、各種グリホサート塩の残留試験24件の最大残留値は0.1ppmです。また、ビールの原料である大麦の残留基準は30ppmですが、各種グリホサート塩の国内での残留試験12件の最大残留値は<0.04ppmです。また、ホップの基準は0.1ppmで、残留試験データはありません。さらに、日本の水道水でいえば、目標値は2ppmですが、実測値はその1%未満の<0.02ppmです。
 酒中のグリホサートの由来が明確ではなく、有害物質であるアルコールとグリホサートの相乗毒性がどうなるか不明です。現在のレベルで農薬汚染したワインやビールを飲むことの人の健康への影響は、本稿では触れませんでしたが、グリホサート以外にもワインには、ネオニコチノイド系(アセタミプリド、イミダクロプリド、チアクロプリド、チアメトキサム)やその他の農薬が複合残留していることも判明しており、やはり、残留農薬量を出来る限り、減らすことを目指すほかありません。

***  グリホサートの毒性については、木村ー黒田純子さんの下記総説をご覧ください   ***
  <除草剤グリホサート/「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性>
   (上)安全とはいえない農薬の基準値:「科学」2019年10月号p933−944
   (下)次世代影響が懸念されるグリホサートなど日本の農薬多量使用の危険性:「科学」11月号p1036-1047


作成:2019-11-30、更新:2019-12-02