環境汚染にもどる

n02104#2018年度のゴルフ場使用農薬の水質調査結果〜水産指針超えは5検体#19-12
【関連記事】記事n00706(2017年ゴルフ場農薬調査)
【参考サイト】農水省:ゴルフ場において使用が計画されている農薬について2019年4月1日〜9月30日の計画書提出状況
        環境省:ゴルフ場暫定指導指針対象農薬に係る水質調査結果の頁
             ゴルフ場で使用される農薬に係る平成30年度水質調査結果について
             都道府県別の水質調査結果農薬別の水質調査結果(排水口)
             水質汚濁の防止及び水産動植物被害の防止に係る指導指針

 ゴルフ場での農薬使用については、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令第5条で、使用計画を提出することが義務づけられ、場外への流出を防止する措置を講ずることが努力規定として求められています。農水省・環境省に計画書を報告したゴルフ場の数は、約2200個所(2019年前半)あります。一方、環境省では、水質汚濁及び水産動植物被害を未然に防止する観点にから、指導指針が強化され、ゴルフ場からの排出水等の農薬調査の対象となるものは、174農薬(157成分)となっています。

★約1500のゴルフ場での排出水中農薬調査
 2018年の排出水調査は、表1のように、全国のゴルフ場の約65%の1481個所で実施されました。調査ゴルフ場数が0〜5と少ない県は、山梨0、山形4、福井と和歌山3、鳥取2 山口1。100個所を越えるのは、兵庫129、茨城116、北海道100などで、対象農薬数は、山梨の0から兵庫の169種まで、大きなバラツキがあり、ゴルフ場あたり平均26農薬が分析されました。なお、ゴルフ場排出水の分析実施は、単なる努力規定ですし、それぞれの検出限界値も異なります。環境省指針では、『調査の実施に当たっては、一般に使用農薬の種類や使用の時期、方法等が病害虫及び雑草の種類、発生時期等に応じて地域により多様であるほか、排出水中への農薬の流出は、農薬の種類、使用方法や現地の地形、土壌、集排水系統等の状況によって異なること等に十分留意する。』となっています。
  表1 ゴルフ場排水口等の水質調査結果及び取組状況の推移
   調査年度       2018年 2017年     
   調査実施ゴルフ場数  1,481  1,435
   調査対象農薬数     174   174
   総延べ検体数     38,188 38,927
   排水口調査延べ検体数  9,165  9,739
排水から81農薬が検出された〜最大値は、バリダマイシン1200μg/L
 2018年度の排水口調査の結果、検出された農薬別の検体数と最大検出値を表2に示しました。延べ総検体数は前年より600近く減少しましたが、検出された農薬は64から81種に、検出率も4.1%から8.0%と増えています。
 検出濃度の最大値が高かったのは、殺菌剤が多く、バリダマイシン1200μg/L、トルクロホスメチル200、テブコナゾール120、プロピコナゾールとメトコナゾール50各μg/L、除草剤はアシュラム系の86μg/Lでした。水濁指針値や水産指針値の多くは、それぞれ、水質汚濁に係る農薬登録基準や水産動植物の被害防止に係る農薬登録基準の10倍値となっており、2018年の検出値で、水濁指針を超えたものはありませんでしたが、水産指針を超えたのは、表中で赤字で示したダイアジノン1検体(指針値0.77μg/L)とピロキサスルホン4検体(指針値7.4μg/L)でした。
 検出率の高かった農薬は、芝用除草剤ピロキサスルホンの43.6%を筆頭に、殺菌剤チフルザミドと除草剤メトラクロールが29%、殺菌剤オキシン銅とトルクロホスメチルが21%、さらに殺菌剤ジラム20%と続きます。総じて、芝用殺菌剤や除草剤が多いことがわかります。
   表2 2018年度のゴルフ場排出水中の農薬検出状況(濃度単位:μg/L)

農薬名           検体数  検出数   最大値      農薬名         検体数  検出数  最大値  
MCPA系3農薬   39      4        5         テブフェノジド    47     1     0.0005
アシュラム系      491     70       86         トリアジフラム    68     1         5
アセフェート       66      1                 トリクロピル      93     1         1.5
アゾキシストロビン436     72       20         トルクロホスメチル201    43     200
アトラジン         10      4        3.1       ナプロパミド      56     1       1
イソプロチオラン   79      2        0.3       バリダマイシン    34     2      1200
イプロジオン      106      6       11         ハロスルフロンメチル98    1         1
イマゾスルフロン    8      1        7.8       ヒメキサゾール    56     3         1
イミダクロプリド  101      1     0.0005       ピラゾスルフロンエチル18  3         5
イミノクタジン系2農薬142  2        1         ピリブチカルブ    48     1       0.0005
エトベンザニド     27      2        1         ピロキサスルホン  94    41        16
オキサジアルギル   40      2        4         フェニトロチオン 125     3         6.1
オキサジクロメホン120      2        1.4       フェノキサスルホン 42     6         4
オキシン銅(有機銅)133     28        4         フラザスルフロン  77     4         3
オリザリン         14      2        2         フルキサピロキサド 60     8         7 
カズサホス          1      1        0.6       フルジオキソニル   28     1      0.0005
カフェンストロール 88      6       20         フルトラニル       88     4         0.3
キャプタン         88      1        1         フルベンジアミド   79     2         0.6
クミルロン         34      1        0.4       フルポキサム      129    13         5
グリホサート系4農薬32     1        0.01      プロジアミン       78     4         0.5
クロチアニジン    415     51       10         プロパモカルブ     30     1      0.0005
クロラントラニリプロール204  7      1.9       プロパルギット(BPPS)1     1      0.0005
クロリムロンエチル 52      1        1.8       プロピコナゾール  135    11        50
クロロタロニル(TPN)160  1      0.0005      プロピザミド      126     6         9
シアゾファミド     86      2        8         プロピネブ         51     1        20
ジカンバ系3農薬   51      1        3         ヘキサコナゾール   70     6         1
シクロスルファムロン147    3        5         ペルメトリン       92     4         1
ジチオピル         84      2       10         ペンシクロン      346    30         8.4
ジフェノコナゾール 92      5       20         ペンチオピラド     40     1      0.0005
シプロコナゾール   95     10        3         ペンディメタリン  138     3         1
シメコナゾール     51      3        1         ペンフルフェン     54     9         5
ジラム             45      9        5         ベンフルラリン     50     1      0.0005
ダイアジノン      106      8       1.2        ボスカリド         77     4         0.11
チアクロプリド     29      3        2         ホセチル           67     1         0.01
チアメトキサム    125     61       27         メコプロップ系4農薬134   8        40
チウラム又はチラム148      3        2         メタラキシル系2農薬122   6         1.6
チオジカルブ      118      2        1         メトコナゾール     52     3        50
チオファネートメチル119    2        3         メトラクロール系2農薬42 12        43
チフルザミド      255     74       17         メプロニル         79     2         3
テトラコナゾール   66      1        0.2       リムスルフロン      8     1         2
テブコナゾール    206     22      120           合  計         9165   734   
★ゴルフ場農薬〜芝地の殺菌剤に要注意!
【参考サイト】緑の安全推進協会;Top Page 情報の窓
       環境省PRTR情報:集計結果概要届出外推計資料 2017年度にある
            農薬に係る適用対象別・対象化学物質別の届出外排出量推計結果

 ゴルフ場・緑地分野の農薬製剤販売実績については、業界団体の緑の安全推進協会が会員情報をもとに、調べています。2018、19年度の結果は、表3のようで、2019年総出荷量は約7300トンでした。用途別では、除草剤が約75%の5529トンを占め、そのうち4411トンが緑地用、1108トンが芝用、殺菌剤891トンの殆どが芝用です。
 化管法の指定農薬に限れば、2017年度の成分別年間排出推定量(=出荷量相当)で、ゴルフ場使用量が多いのは、クロロタロニル26.3トン、チオファネートメチル20.6トン、アゾキシストロビン20.2、テブコナゾール20.1、プロピザミド18.6、メトラクロール13.1、メコプロップ12.2、オキシン銅11.9、2,4−D9.3、イプロジオン8.1各トン/年でした。なお、表2に見られるネオニコ系(イミダクロプリド、クロチアニジン、チアクロプリド、チアメトキサム)は化管法指定のない農薬のため、統計値がありません。
 また、ゴルフ場内では、地上散布だけでなく、ドローンなどの無人航空機の空中散布にも注意を払う必要があります。
   表3 2018,19年度 ゴルフ場、緑地分野の農薬製剤出荷実績 (単位 トン。2018年度で?は数値が合わない)
 使用場所   芝          樹木           緑地          合計
 用途    実績     前年比    実績      前年比    実績      前年比   実績  前年比
              2018→19     %        2018→19     %        2018→19               2018→19     
  殺虫剤     364→409  112.3    365→330  90.5     1→ 1      89.4      730→740   101.4
  殺菌剤     829→891  107.5       0→ 1  114.2       0→ 0       0        829→891   107.5
  除草剤    1089→1108 101.8        7→ 9   124.7    4975?→4411 101.7     6071?→5529 101.8
  植調剤      37→59   158.7      2→ 2  104.9     52→ 41   78.3       91→101    111.6
  その他      62→60    97.6      31→42  133.6      0→ 0      0.0       94→103   109.7
    計       2381→2527 106.2     406→384  94.5   5027?→4453 101.5     7814?→7364  102.6

作成:2019-12-30、更新:2020-01-23