残留農薬・食品汚染にもどる
n02303#東京都健康安全研究センターの2017年度農作物残留農薬調査報告(3)輸入農作物中の残留農薬 (その2)柑橘類とベリー類#20-02
【関連記事】記事n02103(2017年度国産品)、記事n02203(2017年輸入野菜など)、記事n01202(2016年度輸入柑橘類)と記事n01302(輸入ベリー類)
【参考サイト】東京都健康安全研究センター:研究年報の頁 69号(2018)
輸入農産物中の残留農薬実態調査(平成29年度−果実類)
東京都健康安全研究センターの年報69号から輸入果実18種151検体について残留農薬実態調査の結果を2回にわけて、紹介します。何らかの農薬が検出されたのは、17種103検体(検出率68%)です。296の農薬やその代謝物のうち48種類の農薬が痕跡(10ppb未満)〜5500ppb)検出され、その種類別内訳は、下表のようでした。
基準を超えたのは、イスラエル産のグレープフルーのイマザリル1検体で、5500ppbでした。
表1 輸入果実類に検出された農薬の種類別数
有機リン系殺虫剤 9種 有機塩素系農薬 5種
カルバメート系殺虫剤 2種 含窒素系及びその他の農薬 25種
ピレスロイド系殺虫剤 7種
★柑橘類は防かび剤の残留が多く2種以上の複合残留で、検出率は100%
柑橘類は4種40検体が分析され、表2に検出状況を示しました。すべての検体で、何らかの農薬が検出されています(検出率100%、殺虫剤及び殺菌剤が各11種類)。
殺虫剤を検出したのは、17検体(検出率43%)で、最大残留値を示したのはオーストラリア産のオレンジの、有機リン系剤DMTPで240ppbでした。ほかにも、有機リン剤のクロルピリホスが、オレンジ、グレープフルーツ、レモンの3種16検体に最大160ppb残留していました。また、ピレスロイド系では、フェンプロパトリンとシペルメトリンが7検体に見出され、前者はアメリカ産のグレープフルーツに75%の検出率で痕跡〜60ppb残留していました。
近年増加傾向にあるネオニコチノイド系の殺虫剤では、3種類(イミダクロプリド,アセタミプリド,クロチアニジン)が8検体に痕跡〜100ppb残留していました。イミダクロプリドが最も多く、南アフリカ産オレンジとグレープフルーツとイスラエル産スイーティー、アメリカ産レモンなど5検体の全果から検出されたでけでなく、果肉にも同程度が見出されました。
一方。殺菌剤は,柑橘類4種40検体すべてから、11種の食品添加物・防かび剤や農薬が検出されました。ポストハーベスト農薬として長年、汎用されてきイマザリル,TBZ,OPP以外に、2011年にはフルジオキソニル,2013年にはアゾキシストロビン、ピリメタニルが柑橘類に使用可能な食品添加物として日本で認可されたため、防かび剤の種類は増加しました。
イマザリルは柑橘類では、100%の検出率で。最大残留値を示したのは、イスラエル産のグレープフルーツで基準値5000 ppbを超えて5500 ppb検出されました。
他の食品添加物や農薬では、OPPがアメリカ産グレープフルーツに87.5%の検出率で最大1600ppb、TBZが柑橘類4種35検体に見出され、検出率は87.5%で、最大残留値はアメリカ産オレンジで2000ppb。アゾキシストロビンが。アメリカ産レモンすべてに検出され、最大値は600ppb、ピラクロストロビンが柑橘類2種15検体で、最大値は南アフリカ産グレープフルーツ80ppb。ピリメタニルが柑橘類2種3検体で、最大値はイスラエル産スイーティーで220ppb、フルジオキソニルがレモン7検体すべてに見出され、最大残留値はチリ産で1600ppbでした。このうち、TBZ、イマザリル、フルジオキソニルは果肉にも移行していました(最大値は南アフリカ産オレンジのイマザリル)。
柑橘類はすべてイマザリルと他の農薬の複合残留ですが、各検体ごとに何種の農薬が検出されたかは記載がありません。少なくとも4種以上の残留検体があることたしかです。
報告書では、柑橘類に防かび剤名の使用表示があっても、痕跡又は検出しなかった事例があるとの指摘がなされ、『イマザリル,TBZ以外の防かび剤は、原産国の地域や作物の組み合わせで使用状況が多様化してきている傾向が観察された.殺菌剤は耐性菌の発現により動向が変化するため,法規制や使用状況の情報にも留意して調査を行っていく.』とされています。
表2 輸入柑橘類における農薬の検出状況−全果での数値で単位:ppb、()は果肉
作物名 生産国 検出数 最大値 検出率
/検体数 農薬名 ppb %
オレンジ オースト 1 /6 DMTP 240 16.7
ラリア 6(5)/6 TBZ 1800(40) 100(83.3)
1 /6 イプロジオン 110 16.7
1 /6 イプロジオン代謝物 40 16.7
6(6)/6 イマザリル 2100(60) 100(100)
1(1)/6 クロチアニジン 10(10) 16.7(16.7)
4 /6 クロルピリホス 70 66.7
オレンジ 南アフリカ 2(2)/2 TBZ 540(Tr) 100(100)
2(2)/2 イマザリル 990(80) 100(100)
1(1)/2 イミダクロプリド Tr(10) 50(50)
2 /2 ピラクロストロビン 70 100
1 /2 ブプロフェジン 10 50
オレンジ アメリカ 2(1)/6 NAC 1400(Tr) 33.3(16.7)
6(3)/6 TBZ 2000(20) 100(50)
6(6)/6 イマザリル 1200(10) 100(100)
3 /6 クロルピリホス 160 50
1 /6 ピリプロキシフェン 10 16.7
グレープ イスラエル 1(1)/1 TBZ 780(10)
フルーツ 1(1)/1 イマザリル 5500(60)
グレープ メキシコ 1(1)/1 TBZ 860(Tr)
フルーツ 1(1)/1 イマザリル 2900(20)
グレープ 南アフリカ 2 /7 DMTP 10 28.6
フルーツ 2(2)/7 TBZ 890(Tr) 28.6(28.6)
7(6)/7 イマザリル 1700(30) 100(86.7)
3(2)/7 イミダクロプリド 20(Tr) 42.9(28.6)
1 /7 クロルピリホス 150 14.3
1 /7 シペルメトリン 40 14.3
1 /7 ブプロフェジン Tr 14.3
6 /7 ピラクロストロビン 80 85.7
3 /7 ピリプロキシフェン 20 42.9
2 /7 ピリメタニル 120 28.6
1 /7 フルジオキサニル 20 14.3
1 /7 プロクロラズ 20 14.3
2 /7 メトキシフェノジド 10 28.6
グレープ アメリカ 7 /8 OPP 1600 87.5
フルーツ 8(7)/8 TBZ 910(60) 100(87.5)
8(7)/8 イマザリル 1100(20) 100(87.5)
5 /8 クロルピリホス 70 62.5
1 /8 シペルメトリン 10 12.5
7 /8 ピラクロストロビン 70 87.5
2 /8 フェンブコナゾール Tr 25
6 /8 フェンプロパトリン 60 75
スイーティー アメリカ 1 /1 TBZ 1800
1 /1 アセタミプリド 100
1(1)/1 イマザリル 3100(Tr)
スイーティー イスラエル 1(1)/1 TBZ 1900(30)
1(1)/1 イマザリル 2000(Tr)
1(1)/1 イミダクロプリド 50(Tr)
1 /1 ピリメタニル 220
レモン チリ 1 /4 PMP 40 25
4(2)/4 TBZ 260(10) 100(50)
4(4)/4 イマザリル 3200(50) 100(100)
1 /4 クロルピリホス 20 25
4(2)/4 フルジオキソニル 1600(Tr) 100(50)
レモン アメリカ 1 /3 NAC 10 33.3
3(2)/3 TBZ 930(10) 100(66.7)
3/3 アゾキシストロビン 690 100
3(3)/3 イマザリル 1400(20) 100(100)
1(1)/3 イミダクロプリド 10(10) 33.3(33.3)
2 /3 クロルピリホス 50 66.7
2 /3 ピリプロキシフェン 20 66.7
3 /3 フルジオキソニル 890 100
★ベリー類〜カナダやアメリカ産のブルーベリーに8-9種の複合残留
ベリー類は4種21検体のうち,表3に示したように4種13検体から、検出率62%で、17種の農薬が痕跡〜970ppb検出されました(内訳は、殺虫剤では、有機リン系4種、ネオニコチノイド系とピレスロイド系が各2種、殺菌剤9種)。最も残留量が高かったのは、メキシコ産ブルーベリーのイプロジオン970ppbでした。
例年どおり,複合残留が目立ち、カナダやアメリカ産のブルーベリーには、同一検体から9種又は8種の農薬が検出されたもの3検体あり、ほかに、6種が1検体,5種が2検体,4種3検体、2種が1検体ありました。
報告書では、検体の90%は冷凍品で、『果皮を剥かずに食べる喫食のしやすさや健康志向から個人消費以外に外食産業等での加工用としても汎用され,特に冷凍品は未洗浄で利用されることも多いため,今後も注意深い観察が必要である』とされています。
表3 輸入べりー類における農薬の検出状況−全果での数値で単位:ppb
作物名 生産国 検出数 最大値 検出率
/検体数 農薬名 ppb %
イチゴ 中国 1 /3 DDVP 30 33.3
2 /3 イミダクロプリド Tr 66.7
1 /3 オメトエート 30 33.3
1 /3 クロルピリホス Tr 33.3
1 /3 メタラキシル 10 33.3
ブラックベリー チリ 1 /1 イプロジオン Tr
ブルーベリー カナダ 2 /4 アセタミプリド Tr 50
2 /4 イミダクロプリド Tr 50
3 /4 キャプタン 30 75
3 /4 シプロジニル 100 75
3 /4 ビフェントリン 70 75
1 /4 ピラクロストロビン 30 25
1 /4 フルジオキソニル 30 25
3 /4 ボスカリド 340 75
2 /4 マラチオン Tr 50
ブルーベリー チリ 1 /1 イプロジオン Tr
1 /1 シプロジニル 30
1 /1 フルジオキソニル Tr
1 /1 ボスカリド 120
ブルーベリー メキシコ 1 /1 アセタミプリド 100
1 /1 イプロジオン 970
1 /1 イプロジオン代謝物 230
1 /1 シペルメトリン 70
1 /1 ボスカリド 40
ブルーベリー アメリカ 1 /3 アゾキシストロビン 60 33.3
1 /3 イプロジオン 20 33.3
1 /3 イミダクロプリド 20 33.3
2 /3 キャプタン 170 66.7
2 /3 シプロジニル 270 66.7
2 /3 シペルメトリン 120 66.7
1 /3 ピラクロストロビン 10 33.3
3 /3 フルジオキソニル 400 100
1 /3 ボスカリド 130 33.3
2 /3 マラチオン 20 66.7
ラズベリー セルビア 1 /1 シプロジニル 100
1 /1 ピラクロストロビン Tr
1 /1 ピリメタニル Tr
1 /1 フルジオキソニル 100
1 /1 ボスカリド 50
作成:2020-02-29