行政・業界の動きにもどる

n02401#パブコメ意見だしました〜3件(PRTR法指定物質、水道農薬目標値、ジフェノコナゾールの食品添加物指定)#20-03
 3月には、表記の3件のパブコメ意見の募集がありました。提出した意見の概要を示します。

★PRTR法指定物質は562から664へ〜第一種527(特定は27)、第二種137)とする見直し案提示
【関連記事】記事t24306記事t24606記事t28605記事n01604
【参考サイト】環境省ほか:PRTR法合同会合報告(案)に対する意見募集
          報告案資料(第一種指定化学物質候補案第二種候補案)

 化管法(PRTR法)は、『特定の化学物質の環境への排出量に関する措置(PRTR)並びに事業者による化学物質の性状及び取扱いに関する情報(SDS: Safety Data Sheet、旧MSDS)の提供に関する措置等を講ずることにより、事業者による化学物質の管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的とした』法律で、事業者が自主的に、抑制の方向に向かうことを期待されており、指定された物質の製造・販売・使用が直接法的に規制されるわけではありません。
 「第一種指定化学物質」は、人や生態系への有害性(オゾン層破壊物質を含む)があり、環境中に広く存在する(暴露可能性がある)と認められる物質で、事業者には排出・移動量と取扱いに関するSDSを国に届けでることが義務づけられており、国は集計データを公表し、国民は、事業者に開示を要求できます。とくに、発がん性、生殖細胞変異原性及び生殖発生毒性が認められる「第一種指定化学物質」は、「特定第一種指定化学物質」とされます。
 「第二種指定化学物質」は譲渡・提供する際、SDS資料の提供が事業者に義務付けられます。

 反農薬東京グループでは、 化管法について、昨年5-6月の「化管法見直し合同会合取りまとめ(案)」のパブコメ意見募集の際、農薬についての意見を述べました。この時の募集結果は 提出者数:19団体・個人、意見提出数:57件で、環境省らから意見についての考え方合同会合での取りまとめ文書が公表されています。
 その後、昨年12月3日に第一回合同会合(資料等)、本年2月19日には、第二回合同会合(資料等)が開催されています。
  追記 ⇒ 5月1日:PRTR対象物質等専門委員会合同会合報告(案)」に対する意見募集の結果について
         合同会合(第3回)議事次第・配付資料・審議結果意見の概要及び考え方(541 団体・個人から提出数:662 件)


 わたしたちは、今回、下記のような意見を提出しました。本文中の表など省略した部分は こちらでごらんください。
【意見1】物質選定において、有害性の判断基準として、発がん性、神経毒性、免疫毒性、生殖毒性等について、
  評価する場合、現行の動物実験をできるだけ減らし、それにかわる試験で評価を行うべきである。
  また、発達神経毒性、発達免疫毒性も評価すべきである。
  たとえば、細菌や、人や動物の血液や神経細胞を用いた試験、IgGのような免疫抗体による感作性の作用、
  神経系への作用、環境ホルモン作用などの試験も実施する。

【意見2】人への影響についての情報を収集し、科学的に完全な因果関係が立証されなくとも、予防原則に基づいて、
  物質選定を行うべきである。たとえば、
 (1)国民からの情報提供された事故情報データバンクシステムなどの利用。
 (2)人体を汚染している化学物質の調査で、日常的な汚染が判明している−たとえば、血液、脂肪、
   尿など排泄物、爪・体毛。その他分泌物などに農薬やその代謝物が検出されている−情報の利用。
 (3)健康への影響との関連が疑われる人の疫学調査結果の利用。

【意見3】物質選定の判断材料となる環境調査については、空気、水、土壌などの一般環境中の調査だけでなく、
  採取地域を配慮し、かつ定量限界値を統一して調査すべきである。農薬の場合、春から夏にかけての使用が多く、
  冬場は少ない。水系、底質、魚介類の農薬分析は、農業地域での季節変化がわかるよう試料を採取し、継続的に
  調査することが必要である。
  そのほか、ダイオキシン類がみられる廃棄物処理場、有害フッ素系難燃剤がみられる自衛隊や
  アメリカ軍管理地域、などの特定汚染地域での調査もすべきである。
  また、生活環境生物への影響調査は、個々の種の生息状況だけでなく、生態系全体への影響・生物多様性に
  関する調査も実施して、その結果を選定に反映させるべきである。

【意見4】わたしたちが、いままでのパブコメで、身の回りで広く使用されている農薬として、
  強く名指ししてきた化学物質は、下記であり、化管法で指定されていない成分が多い。
  指定により、地域別出荷量が明確になることを望む。
 (1)グリホサート系のイソプロピルアミン塩、カリウム塩 
 (2)ネオニコチノイド系のアセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、
   チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラムの7成分
 (3)農薬で最も住民中毒の多いクロルピクリン(=トリクロロニトロメタン、第一種指定化学物質)
 (4)神経毒性が強く、EUでは、すでに、再評価制度で、適用規制が実施されている有機リン剤やピレスロイド剤。

【意見5】生体内での作用機構が同類の化学物質は、まとめて、管理すべきである。
  たとえば、化学構造が類似している物質群(有機リン系、ネオニコチノイド系、ピレスロイド系など)

【意見6】農薬の発がん性については、食品安全委員会のように。健康への影響を評価して、ADIを設定する際に、
  食品からの摂取ルートのみを対象にしたうえ、動物実験で発がん性が認められても、非遺伝毒性メカニズム
  だから閾値があるとする立場はとるべきでないと考える。
  なぜなら、現実には、農薬やこれと同じ成分を経口以外の経路で摂取していること/他の発がん性物質や
  放射性物質との相乗作用が不明であること/すでにガンを発症している患者への影響もわからないことなどを、
  配慮すると、当該物質の摂取をできるかぎり、減らすべきと考える。また、人は、発がん性のある
  化学物質を複数種摂取していることも懸念される。ちなみに、当グループが、食品安全委員会が評価した
  農薬について、調べた結果を表1にまとめた。156種の下記農薬成分が、非遺伝毒性メカニスムによる
  発がん性を示すとされている。
  表1 食品安全委員会が非遺伝毒性メカニズムと考えている発がん性農薬 −省略−

【意見7】パブコメ意見(参考資料3)として、指定を削除された農薬、農薬用途だけではなく、
  衛生害虫殺虫剤、シロアリ駆除剤、非農地用除草剤として身近で使用されている農薬類似成分、
  水質や魚介類に検出されている農薬などを表2に示し、指定することを求めたが、受け容れられなかった。
  同表には、今回提示されている第一種及び第二種物質案にある農薬類に★又は■印をつけてみた。
  新たに指定予定の物資を明示するとともに、指定リストにないものは、その理由を示されたい。
 表2 いままでのパブコメで指定を求めた農薬成分 −省略−

【意見8】パブコメ意見(参考資料2)として、出荷量がそれほど、多くないにも拘わらず、身近で使用され、
  健康被害をあたえている化学物質がある。香料及びマイクロプラスチック類が該当し、これらを
  化管法で検討することを求めたが、原案では触れられていない。再考を求める。  −詳細省略−

 <参考資料1> 当グループHPより、下記記事
  n01604#化管法パブコメでの主張〜グリホサート、ネオニコチノイド、香料、マイクロカプセル#19-07
   http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/kiji/n01604.htm

 <参考資料2> パブコメ案件番号 195190012 への
   当グループの2019年6月投稿意見
   http://home.catv.ne.jp/kk/chemiweb/kiji2/prtr190613.txt

 <参考資料3> パブコメ案件番号 195080004 への
   当グループの2008年5月投稿意見
   http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/jimu/pub080528.txt
以上 
 なお、環境省らは、3月19日、2018年度のPRTRデータを公表しました。どのような農薬や殺虫剤が指定物質となっており、どのような場所で、どの程度使用されているかを調べるのに便利です。
  平成30年度PRTRデータの概要等について−化学物質の排出量・移動量の集計結果等
   概要経年変化環境省PRTRインフォメーション広場(平成30年度:集計結果の概要届出外推計資料−排出量推計結果はこちら−)

★水道水質管理目標設定項目の改定案〜農薬目標値は緩和や強化
【関連記事】記事n01103
【参考サイト】 厚労省:「水道水の水質管理目標設定項目の改正案」に関する御意見の募集について
             改正案反農薬東京グループの意見
           第21回厚生科学審議会生活環境水道部会(3/23):議事次第資料

 昨年1月につづき、水道水の水質基準の改定が提案され、パブコメ意見が募集されました。このうち、農薬については、下記の目標値の見直しで、パブコメ結果を踏まえ、、原案通り、4月1日から施行されます。
  略号   農薬名   食品安全委員会  ADI      評価値 mg/L   対応
           の評価結果通知   mg/kg体重/日  新 ⇒ 現行   方針 
  対-027 カルタップ   R01.6.4           0.03             0.08    0.3     強化
  対-044 ジクワット    R01.10.8          0.0058           0.01    0.005   緩和
   対-090 プロチオホス  H30.10.23         0.0027           0.007   0.004   緩和
   他-044 セトキシジム  H30.12.4      0.088            0.2     0.4     強化
   他-045 チアクロプリド H30.10.23      0.012            0.03      -    新規設定
   他-047 チオシクラム  R01.6.4           0.021            0.05    0.03    緩和
     対:対象農薬(検出状況や使用量などを勘案し、浄水で検出される可能性の高い農薬)
   他:その他の農薬(測定しても浄水から検出されるおそれが小さく、検討の優先順位が低い)

 わたしたちの主な意見は下記でした。
【意見】体重50kgの成人が一日に水を2L飲むと仮定した場合、ADIの10分の1を超えなければ可として、
  設定され下記の農薬の評価値に反対である。
  当グループは参照資料に示したいままでのパブコメ意見で、現行の「水質管理目標設定項目」の
  総農薬方式に反対し、EU=ヨーロッパ連合で行われている単一農薬濃度で0.0001mg/L=0.1μg/L、
  総農薬濃度で0.0005mg/L=0.5μg/Lのような管理方式をとるべきであると主張してきたが、受け容れられていない。
 
 [理由1]カルタップの代謝物のひとつであるネライストキシンは、チオシクラムやベンスルタップ
  と共通である。また、ベンスルタップは、ラットの慢性毒性/発がん性併合試験で、雄に精巣間細胞腫の
  発生頻度増加が認められたが、非遺伝毒性メカニズムとされている。このような成分は出来る限り
  その摂取を減らす必要がある。
  各農薬のADIは、カルタップ0.03 mg/kg体重/日、チオシクラム0.021mg/kg体重/日、
  ベンスルタップ0.025mg/kg体重/日であり、総合評価として、ADIは0.016mg/kg体重/日となっている。
  カルタップ単独だけではなく、3農薬をあわせて評価すべきである。
 [理由2]プロチオホスは、塩素処理で生成するオキソン体も合算して、評価されている。
  他の有機リン剤においても、同様のメカニズムで作用するだけでなく、代謝物としてオキソン体が
  生成することも共通である。全有機リン剤を合算した目標値の設定が必要である。
★ばれいしょのジフェノコナゾール残留基準を緩和し、食品添加物・防黴剤に指定
【参考サイト】厚労省;ジフェノコナゾールの添加物への指定及びジフェノコナゾール等の規格基準の設定に関する御意見の募集について
       概要(残留基準関係資料食品添加物関係資料)、反農薬東京グループの意見(ジフェノコナゾール食品添加物同残留基準)

 日本では、収穫後の作物を農薬である殺菌剤で処理することはできません。そのため、当該化学物資の食品添加物・防黴剤指定が不可欠です。国産品には防黴剤は不要ですが、柑橘類やその他の果実類の輸出国から使用を求められ、残留基準を緩和して、輸入相手国の意向にそわせた事例は多くあります。古くは、OPP、TBZ,イマザリル、近年では、アゾキシストロビン(記事t25104)、ピリメタニル(記事t25405)、フルジオキソニル(意見募集反対意見)、プロピコナゾール(意見募集反対意見)が、消費者の反対運動にも拘わらず、食品添加物指定されました。
 こんどは、ばれいしょへのジフェノコナゾールの収穫後使用が目論まれ、パブコメ意見募集が行われました。残留基準も現行の0.2ppmの20倍である4ppmとするとの案です。わたしたちは、パブコメで食品添加物指定反対の意見を述べ、以下のような理由をあげました。
 [理由1]日本やEUでは、収穫前の作物に殺菌剤としての用途はあるが、収穫後の適用はない。
  また、ばれいしょへの適用登録もない。
  アメリカとカナダでは、防かびを目的として、ジフェノコナゾールをキャッサバ、さといも、
  ばれいしょ等の収穫後に、塊茎にスプレー液で処理している(そのため、両国では、
  残留基準が4.0ppmとなっている)。
  日本が。ばれいしょ輸入のために食品添加物指定をする必要はない。輸入相手国には、
  日本国内同様、収穫後使用を認めず、本成分処理以外の冷暗所保存などの防黴対策を求めればよい。

 [理由2]ジフェノコナゾールは、マウスの18カ月発がん性試験で、肝細胞腺腫及び肝細胞癌が
  認められるが、非遺伝毒性メカニズムと考えられている。
  食品添加物として、浸透性のある本成分を塊茎に使用すれば、ポテトチップその他、ばれいしょ
  加工品への残留量が増大する。このような成分の摂取は出来る限り減らすべきで、収穫後に
  食品添加物・防黴剤として使用することは許可すべきでない。

 [理由3]ばれいしょの残留基準を4ppmとすると、推定摂取量TMDIへの寄与率が国民全体区分で
  21%と食品中で一番たかくなる。そのため、暴露残留量を1.2ppmとして、EDIを算出し、
  対ADI比を低値にみせかけている(それでも、幼小児は70.2%と高い)。
  食品添加物用途をなくせば、この比率はもっと下がり、消費者の安全・安心につながる。
 
  区分     国民全体    幼小児      妊婦      高齢者
 推定摂取量  TMDI  EDI   TMDI  EDI   TMDI  EDI   TMDI  EDI
  μg/人/日   738.3 169.0   447.4 111.3   669.8 158.1  843.5 185.1
  対ADI比(%) 139.6  31.9   282.4  70.2    119.3  28.1  156.6  34.4

 [理由4]短期推定摂取量ESTIの算出に際しても、暴露数値を残留基準よりも、低値(残留試験の中央値)
  にしている食品が、国民全体区分で64種、幼小児区分で36食品である。
  ばれいしょでは、暴露残留量を食品添加物基準4ppmより少ない1.9ppmとしているが、ESTIの
  対ARfD比は、幼小児区分で20%である。
  食品添加物用途をなくした方が、TMDI同様、この比率は下がり、国民の安全・安心につながる。

作成:2020-03-31、更新:2020-05-03