残留農薬・食品汚染にもどる
n02403#東京都健康安全研究センターの2017年度農作物残留農薬調査報告(4)輸入農作物中の残留農薬 (その3)熱帯果実類ほか#20-03
【関連記事】記事n02103(2017年度国産品)、記事n02203(2017年輸入野菜など)
記事n02303(2017年輸入柑橘類など)、記事n01402(2016年度輸入熱帯果実類)
【参考サイト】東京都健康安全研究センター:研究年報の頁 69号(2018)
輸入農産物中の残留農薬実態調査(平成29年度−果実類)
東京都健康安全研究センターの年報69号から輸入果実のうち熱帯果実ほか10種90検体で、何らかの農薬が検出されたものを表に示しました。296の農薬やその代謝物のうち35種類の農薬が9種50検体の果実類から、検出率が55.6%、検出範囲が痕跡(10ppb未満)〜570ppb(アメリカ産チェリーのフェンプロパトリン)で検出されました。
検出数が多い農薬として、有機リン系のクロルピリホス20検体、ピレスロイド系ビフェントリン12検体、ネオニコチノイド系イミダクロプリド10検体が目立ちましたが、残留基準違反事例はなく、冷凍温州みかんの果肉1検体では、すべての農薬が分析限界以下でした。
★熱帯果実類〜フィリピン産バナナで、クロルピリホス検出率76.5%
表1に、6種の果実の検出状況を示します。
【キウイフルーツ】全13検体中11検体で、すべての農薬が検出限界以下でした。ニュージーランド産キウイにイプロジオンとメチオカルブが検出されたものが1検体づつありました。
【 パイナップル】 全17検体中13検体で、すべての農薬が検出限界以下でした。、フィリピン産4検体に殺菌剤プロクロラズが最大470ppb検出され、うち2検体には、その代謝物 2,4,6-トリクロロフェノールが痕跡みいだされました。
【バナナ】全24検体中3検体で。すべての農薬が検出限界以下でした。全果では、フィリピン産17検体に8種の農薬が見出されました。クロルピリホスの検出率が76.5%と高く、最大40ppbで、1検体は果肉にも移行していました。ビフェントリンも最大30ppb残留しており、検出率は47.1%でした。一番濃度が高かったのは、アゾキシストロビン220ppbでした。
エクアドル産でも全果5検体に2種の農薬が見出され、クロルピリホスの検出率が 71.4 %、ビフェントリンが57.1%でした。
いずれの国のバナナも複合残留があることをうかがわせますが、どの検体か、具体的にわかりません。
【パパイヤ】全3検体中1検体で。すべての農薬が検出限界以下でした。フィリピン産1検体には、アゾキシストロビンとデルタメトリン が、アメイカ産でもアゾキシストロビンとイミダクロプリドが複合残留していました。
【マンゴー】全13検体中8検体で。すべての農薬が検出限界以下でした。メキシコ産の冷凍品には、トリフロキシストロビンが100ppb残留していたほか、3種の農薬が検出されました。
台湾産とベトナム産も冷凍品で、果肉しか分析されていませんが、前者にイミダクロプリド、後者にアセフェートが残留していました。
報告では『マンゴーからはこれまでも全果で検出した農薬やその代謝物が果肉から低濃度で検出される例が観察されており,これら冷凍マンゴーの全果にも果肉と同量以上の濃度で残留していた可能性がある.果肉は基準値の適否検査対象部位ではないが,可食部であり。今後も残留量に留意して調査を行っていく』とされています。
【ライチ】全3検体中1検体はすべての農薬で検出限界以下でしたが、中国産1検体には、シペルメトリン120ppb、クロルピリホス80ppbなど4種の複合残留がみとめられました。
ベトナム産にもクロルピリホス180ppb、シペルメトリン140ppbと高く、具体的には不明ですが、複合残留もありました。
表1 熱帯果実類の農薬検出状況
(単位 ppb、()は果肉、その他は全果)
作物名 生産国 検出数 農薬名 最大値 検出率
/検体数 ppb %
キウイフルーツ ニュージー 1 /12 イプロジオン Tr 8.3
ランド 1 /12 メチオカルブ 40 8.3
パイナップル フィリピン 2 /16 2,4,6-トリクロロ
フェノール Tr 12.5
4 /16 プロクロラズ 470 25
バナナ エクアドル 5 / 7 クロルピリホス 10 71.4
4 / 7 ビフェントリン Tr 57.1
バナナ フィリピン 1 /17 アゾキシストロビン 220 5.9
13(1)/17(1) クロルピリホス 40(20) 76.5(5.9)
1 /17 クロルフェナピル Tr 5.9
2 /17 デルタメトリン 10 11.8
8 /17 ビフェントリン 30 47.1
1 /17 ブプロフェジン Tr 5.9
1 /17 プロクロラズ 20 5.9
1 /17 ボスカリド Tr 5.9
パパイヤ フィリピン 1 / 1 アゾキシストロビン Tr
1 / 1 デルタメトリン 10
パパイヤ アメリカ 1 / 2 アゾキシストロビン 90 50
1 / 2 イミダクロプリド Tr 50
マンゴー 台湾 (1)/(1) イミダクロプリド (30)
マンゴー ベトナム (1)/(1) アセフェート (Tr)
マンゴー メキシコ 1 / 2 イミダクロプリド Tr 50
1 / 2 シハロトリン 30 50
1 / 2 トリフロキシストロビン100 50
1 / 2 ピラクロストロビン 20 50
ライチ 中国 1 / 1 TPN Tr
1 / 1 クロルピリホス 80
1 / 1 シペルメトリン 120
1 / 1 ピラクロストロビン 10
ライチ ベトナム 1 / 2 アソキシスロトビン 20 50
1 / 2 キナルホス Tr 50
1 / 2 クロルピリホス 180 50
1 / 2 シハロトリン Tr 50
1 / 2 ジフェノコナゾール 50 50
1 / 2 シペルメトリン 140 50
1 / 2 フィプロニル Tr 50
1 / 2 ペルメトリン Tr 50
★その他の果実類〜チェリーやブドウは5種以上の複合残留が多い
表2に、3種の果実の検出状況を示します。メロンでは、イミダクロプリドの残留が目立ちました。
【チェリー】アメリカ産の1検体には、フェンプロパトリン570ppb、ピラクロストロビン 280ppb、ボスカリド220ppbなど5農薬が、ハンガリー産の1検体にも、イプロジニル50ppbを最高に5農薬が複合残留していました。
【ブドウ】オーストラリア産1検体には、プロチオホス540ppb。ボスカリド441ppbをはじめ7農薬が。アメリカ産1検体にも、シプロジニル120ppb、クロチアニジン100ppbなど7農薬が見出されました。チリ産も複合残留ですが、3検体にボスカリドが160ppb、アセタミプリドが110ppbガ検出されました。
【メロン】全9検体中2検体で、すべての農薬が検出限界以下でした。アメリカ産とメキシコ産のいずれでも、イミダクロプリドが検出されており、両者をあわせた検出率は77.8%で、果肉への移行が、アセタミプリド、ペルメトリンとともに確認されています。
報告書では、メキシコ産について『メロンと同じくウリ科の野菜であるかぼちゃからも,本年度の調査で同様の殺虫剤が高い検出率で検出されており,メキシコにおいて
ウリ科作物の害虫防除に汎用されていることが示唆された』との指摘がみられます。
表2 その他の果実類の農薬検出状況
(単位 ppb、()は果肉、その他は全果)
作物名 生産国 検出数 農薬名 最大値 検出率
/検体数 ppb %
チェリー ハンガリー 1 / 1 アセタミプリド 10
1 / 1 イプロジニル 50
1 / 1 シハロトリン 10
1 / 1 シプロジニル Tr
1 / 1 ボスカリド 10
チェリー アメリカ 1 / 1 シハロトリン 20
1 / 1 トリフルミゾール Tr
1 / 1 ピラクロストロビン 280
1 / 1 フェンプロパトリン 570
1 / 1 ボスカリド 220
ブドウ オースト 1 / 1 キノキサフェン 10
ラリア 1 / 1 テトラコナゾール Tr
1 / 1 ピラクロストロビン 40
1 / 1 ピリメタニル 30
1 / 1 プロチオホス 540
1 / 1 ボスカリド 440
1 / 1 ミクロブタニル 10
ブドウ チリ 1 / 3 アセタミプリド 110 33.3
1 / 3 イミダクロプリド Tr 33.3
1 / 3 ジフェノコナゾール 10 33.3
1 / 3 シプロジニル 90 33.3
1 / 3 テブコナゾール Tr 33.3
1 / 3 フルジオキソニル 20 33.3
2 / 3 ボスカリド 160 66.7
ブドウ アメリカ 1 / 1 アセタミプリド 60
1 / 1 クロチアニジン 100
1 / 1 シプロジニル 120
1 / 1 シフロトリン Tr
1 / 1 テブコナゾール 30
1 / 1 トリフルミゾール 10
1 / 1 フルジオキソニル 70
メロン アメリカ 1(1)/2(2) イミダクロプリド Tr(Tr) 50(50)
1 / 2 ビフェントリン 10 50
メロン メキシコ 1(1)/7(7) アセタミプリド 20(Tr) 14.3(14.3)
6(6)/7(7) イミダクロプリド 40(30) 85.7(85.7)
4 / 7 フェンプロパトリン 50 57.1
3(3)/7(7) ペルメトリン 20(Tr) 42.9(42.9)
1 / 7 ボスカリド Tr 14.3
作成:2020-03-30