農薬の毒性・健康被害にもどる
n02701#農水省、2018年度の農薬事故公表〜クロピク集団中毒は4件14人#20-06
【関連記事】記事n01101(2017年事故)、
【参考サイト】農水省:2018年度農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況にある被害詳細と平成26〜30年度推移
農水省は、5月29日、平成30年度 農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況についての調査結果を発表しました。この調査は、2018年4月から19年3月までの、人の中毒事故、農作物・家畜・ミツバチ等の被害を都道府県の農政部署から集めて、まとめたものです。ほかにも、農薬散布車などの車両事故による死亡事故などがありませすが、含まれていません。
★人身事故件数は25件42人、作物被害7件、魚類被害5件
2018年度の事故等の統計は、表1に示しました。人の中毒件数は前年より4件増えた25件ですが、中毒者数は、誤用死亡の4人を加え、前年4人増の42人で、クロピクリンによる住民などの中毒14人、農業現場での散布者等の被曝よる中毒8人が目立ちました。無人ヘリコプターの飛散事故は1件が報告されています。人の中毒の詳細は、次節の表2に示します。
、農作物被害7件、魚介類被害5件、家畜・カイコ被害と物損はそれぞれゼロでした。蜜蜂被害の21件については、記事n02703をご覧ください。
【農作物被害】 報告のあった7件で。畔や近隣での除草剤の飛散により、水稲やにんにくが枯れました。ドローンによる除草剤散布で、葉タバコや水稲の被害、鉄道除草剤による大豆・水稲に被害(記事n00802参照)、そのほか、休耕田での粉剤散布による水稲被害やホウレンソウが土壌くん蒸剤(クロルピクリン?)の影響で白化した事例もありました。
【魚類被害】前年13件だった魚類の斃死は、5件に減りましたが、余った農薬希釈液を河川につながる用水路に廃棄した/廃棄のために土壌に撒いた農薬が、河川に流入した/散布に使用する塩ビ管パイプの継手に亀裂が入り農薬が 流出した/散布機器等の洗浄液が流入したなどが汚染につながりました。
表1 2018年度の農薬中毒・危被害件数(農水省公表)
区分 18年 前年件数 被害対象 18年 前年件数 被害対象 18年 前年件数
件数(人数) 増減 件数 増減 件数 増減
死亡 散布中 0( 0) 0 農作物 7 +4 自動車 0 0
誤用 4( 4) +3 家畜 0 0 建築物 0 0
小計 4( 4) +3 カイコ 0 0 その他 0 0
中毒 散布中 12(23) +2 魚類 5 -8 小計 0 0
誤用 9(15) -1 小計 12 -4
小計 21(38) +1 蜜蜂 21* -12
計 25(42) +4
★人の死亡・中毒事故〜死亡4件4人、中毒21件38人
表2に、農薬による人の中毒事故の詳細を示します。といっても、発生場所や原因農薬名は明らかにされていません。
死亡事故の4人の農薬摂取状況はわからず、「農薬による中毒症状と考えられる」となっているだけで、対策には、農薬は飲食物と一緒にしない/他の容器に移し替えない/保管庫に施錠して管理するなどの注意がなされるにすぎません。下記に複数の人が中毒になった事例を示します。
【農水省の集団中毒事例】
・2018年5月 クロルピクリンによる眼の痛み(中軽症 20〜39歳 6人)と
咳・嘔吐(中軽症 0〜19歳 2人)
・2018年5月 クロルピクリンによる眼の痛み(軽症 4人)
土壌くん蒸剤使用時に被覆を行ったが、揮発した農薬が何らかの
理由で漏洩して、近隣住民が体調不良
・2018年10月 農薬名不明による眼の痛み、側頭部の 痛み(軽症 20〜39歳 1と60〜79歳 2人)
長期間、屋外に保管していた農薬の缶の劣化により、内容物が流出し、
揮発した農薬に暴露した。
・2018年H12月 農薬名不明による眼の痛み(中軽症 5人)
農薬販売者が、農業者から回収した廃棄予定の農薬の瓶を運搬中、
瓶を入れていた段ボールが破れ、落下、破損し、揮発した農薬に
暴露した。
農薬中毒となった原因で多かったのは、表2に記したように、マスク・メガネ・服装等装備不十分が6件。保管管理不良や泥酔等による誤飲誤食が3件ですが、原因不明の中には、誤飲誤食の事例があるかもしれません。
9月には無人ヘリの散布農薬が飛散して、隣接農地の作業者の被曝中毒1人が発生しています。
new 表2 2018年度の人の農薬事故 (農水省詳細報告資料より作成)
原因略号 a:マスク、メガネ、服装等装備不十分 6件 e:保管管理不良や泥酔等による誤飲誤食 3件
b:使用時に注意怠り、本人曝露 1 f:薬液運搬中の 容器破損、転 倒等 1
c:散布農薬の飛散によるもの 1 g:その他 2
d:農薬使用後の作業管理不良 4 h:原因不明 7
発生月 中毒程度 被害数 中毒発生時の状況/症状 原因
2018年4月 軽症 1 認知症の方が飲料と間違えて飲用/嘔吐 e
4月 死亡 1 農薬による中毒症状と考えられる/急性薬物中毒 h
4月 不明 1 クロルピクリン土壌くん蒸剤の使用時に被覆を行わず、
揮発して近隣住民が被害/体調不良,めまい,頭痛,脱力感 d
5月 不明 1 同上 /体調不良,眼の痛み d
5月 中軽症 6 同上/体調不良,眼の痛み
中軽症 2 同上/体調不良,咳,嘔吐 d
5月 軽症 4 クロルピクリン使用時に被覆を行ったが、揮発した農薬が何らかの
理由で漏洩し、近隣住民が被害/体調不良,眼の痛み d
5月 中軽症 1 散布時の装備不十分/頭痛,めまい,嘔気,口腔内がヒリヒリする a
5月 死亡 1 農薬による中毒症状と考えられる/心肺停止 h
5月 中軽症 1 農薬による中毒症状と考えられる/意識朦朧 h
6月 死亡 1 農薬による中毒症状と考えられる/不明 h
6月 軽症 1 散布時の装備不十分/接触性皮膚炎 a
6月 軽症 1 農薬散布時の強風・風向きにより暴露 /頭痛,嘔吐 b
6月 不明 2 散布時に装備が不十分(防護服,マスク.手袋を着用していたが、
保護メガネを着用していなかった。)/眼の痛み a
8月 中軽症 1 調製時に装備が不十分 /顔の腫れ,目の痛み a
8月 軽症 1 散布時に装備が不十分/角膜びらん,充血 a
8月 不明 1 農薬による中毒症状と考えられる/のど痛,胸痛,発汗,体痛,呼吸痛 h
8月 軽症 1 農薬による中毒症状と考えられる/顔色が悪い,冷や汗,眩暈,吐き気,嘔吐 h
9月 軽症 1 無人ヘリ散布農薬が飛散し、隣接水田で農作業者が暴露/顔面の発疹 c
10月 軽症 1 農作業中に農薬を誤って飲用/発汗 e
10月 軽症 3 長期間、屋外に保管していた農薬の缶の劣化により、内容物が流出し、
揮発した農薬に暴露/眼の痛み、側頭部の痛み g
12月 中軽症 5 農薬販売者が、農業者から回収した廃棄予定の農薬の瓶を運搬中、瓶を
入れていた 段ボールが破れ、落下破損し、揮発した農薬に暴露/眼の痛み f
12月 軽症 1 長期間保管していた農薬の瓶を倒し、納屋内に異臭が発生/眼の痛み g
2019年1月 中軽症 1 調製時又は散布時に装備が不十分/赤腫 a
2月 死亡 1 農薬による中毒症状と考えられる/不明 h
2月 中軽症 1 農薬を清涼飲料水と間違えて飲用/意識朦朧 e
作成:2020-06-30