食品汚染・残留農薬にもどる
n02704#農水省による国産農作物の2018年度残留農薬調査〜10作物で延べ検出数500をこえる#20-06
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【参考サイト】農水省:国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査の結果についての頁
平成30年度、結果の概要、使用状況調査、農薬別残留調査、作物別残留調査
農水省が5月に発表した、2018年度の国産農作物での農薬使用状況と残留農薬調査農薬の残留状況調査から、分析対象となった10種-476検体の作物別と農薬別の結果を紹介します。
★残留基準違反は、こまつなのダイアジノンとにんじんのイミシアホス各1検体
表1では、作物ごとの検出状況を概観しました。
使用状況調査が実施された476戸の生産農家で栽培された作物1検体分(コメの場合1kg以上、その他は、5個以上かつ2kg)が分析に供されました。
作物ごとに、分析対象となった農薬数は異なります。延べ検体数(=作物数×分析農薬数)は2896で。いずれの農作物も、なんらかの農薬が検出された検体は延べ数で500を超えましたが、残留基準を超えたものは2検体で、こまつな−ダイアジノン0.02ppm(残留基準0.01ppm)とにんじん−イミシアホス0.06ppm(0.03ppm)でした。前者は、使用基準より多い使用量で散布しており、明かな農薬取締法違反ですが、後者については『イミシアホスが長期間土壌に残留し、その後にんじんの生育期の降雨によりイミシアホスが拡散され、当該にんじんの根から吸収されたことが原因である可能性が考えらる』とされました。こんな理由で残留基準がオーバーするというのは驚きです。
10種の作物のうち、延べ検出数の多いのは、日本なし25農薬で191、ピーマン23農薬で59、にら11農薬で58、少ないのは、大豆プロシミドンで3のみ、プロッコリー3農薬で4、にんじん7農薬で8でした。
最大残留値が高いのは、しゅんぎくの クレソキシムメチル7.2ppm。こまつなのクロラントラニリプロール4.9ppm、にらのクレソキシムメチル4.7ppm、非結球レタスのペンチオピラド4.5ppmでした。
主食であるコメは、8農薬が44検体に見出され、殺菌剤フェリムゾンが検出率62.5%(0.06〜0.48ppm)、殺虫剤ジノテフランが検出率56.8%(0.01〜0.21ppm)が目立ちました。
表1 2018年度の農作物別の検体数と分析対象農薬数、延べ検出数
作物名 検体数 分析農薬数: 検出農薬数: 最大残留を
延べ検体数 延べ検出数 示した農薬ppm
コメ 60 45農薬:311 8農薬:44 フェリムゾン0.48ppm
大豆 30 29農薬:206 1農薬:3 プロシミドン0.4ppm
日本なし 60 49農薬:971 25農薬:191 キャプタン 0.41ppm
にんじん 60 34農薬;326 7農薬: 8 イプロジオン0.12ppm
こまつな 57 25農薬:164 16農薬:48 クロラントラニリプロール 4.9ppm
しゅんぎく 59 14農薬:153 11農薬:49 クレソキシムメチル 7.2ppm
ブロッコリー 30 41農薬:167 3農薬:4 ペルメトリン 0.21ppm
非結球レタス 30 30農薬:137 15農薬:37 ペンチオピラド4.5ppm
にら 30 18農薬;106 11農薬:58 クレソキシムメチル4.7ppm
ピーマン 60 44農薬;353 23農薬:59 イプロジオン 1.2ppm
★作物別では葉もの野菜での残留が目立つ
表2に、農作物と農薬の組合せで、検出率が40%を超えるもの(分析検体が1のものを除く)を、検出範囲とともに示します。
日本なし、にら、こまつな、しゅんぎくなどの検出率が高く、殺菌剤アゾキシストロビン、殺虫剤ジノテフランとの組み合わせがめだちました。
表2 検出率40%以上の作物と農薬の組み合わせ
作物名 農薬名 検体数 検出数 検出率 検出範囲
% ppm
大豆 プロシミドン 3 3 100.0 0.14 〜 0.4
日本なし アゾキシストロビン 3 3 100.0 0.04 〜 0.1
日本なし ペルメトリン 3 3 100.0 0.03 〜 0.12
にら ピリダリル 3 3 100.0 0.07 〜 2.6
ピーマン プロシミドン 9 8 88.9 0.07 〜 0.49
にら ジノテフラン 7 6 85.7 0.03 〜 0.53
にら クレソキシムメチル 20 16 80.0 0.03 〜 4.7
こまつな ジノテフラン 17 13 76.5 0.02 〜 0.8
日本なし フェンプロパトリン 4 3 75.0 0.04 〜 0.06
しゅんぎく クロチアニジン 4 3 75.0 0.07 〜 0.56
にら ペンチオピラド 4 3 75.0 0.02 〜 1.6
日本なし ジノテフラン 35 26 74.3 0.01 〜 0.1
しゅんぎく アゾキシストロビン 10 7 70.0 0.02 〜 2.6
しゅんぎく ジノテフラン 10 7 70.0 0.01 〜 0.55
非結球レタス ペンチオピラド 10 7 70.0 0.02 〜 4.5
日本なし フルベンジアミド 23 16 69.6 0.01 〜 0.05
こまつな クロルフェナピル 3 2 66.7 0.04
こまつな ルフェヌロン 3 2 66.7 0.33 〜 1.1
非結球レタス マンジプロパミド 3 2 66.7 0.03 〜 0.14
米 フェリムゾン 8 5 62.5 0.06 〜 0.48
日本なし ピラクロストロビン 31 19 61.3 0.01 〜 0.1
にら アゾキシストロビン 5 3 60.0 0.03 〜 2.6
日本なし ボスカリド 31 18 58.1 0.03 〜 0.18
米 ブロモブチド 21 12 57.1 0.02 〜 0.1
日本なし シラフルオフェン 7 4 57.1 0.02 〜 0.04
米 ジノテフラン 37 21 56.8 0.01 〜 0.12
にら アセタミプリド 9 5 55.6 0.08 〜 0.45
にら クロチアニジン 9 5 55.6 0.05 〜 0.31
にら シペルメトリン 18 10 55.6 0.06 〜 1.2
こまつな クロラントラニリプロール 13 7 53.8 0.02 〜 4.9
こまつな クロチアニジン 2 1 50.0 0.01
こまつな シペルメトリン 10 5 50.0 0.08 〜 0.61
こまつな ピリダリル 2 1 50.0 0.24
こまつな ピリミホスメチル 2 1 50.0 0.04
しゅんぎく クロルフェナピル 8 4 50.0 0.04 〜 0.43
しゅんぎく ピリダリル 6 3 50.0 0.5 〜 2.6
非結球レタス フルベンジアミド 6 3 50.0 0.64 〜 2.7
非結球レタス ルフェヌロン 2 1 50.0 0.08
ピーマン アゾキシストロビン 14 7 50.0 0.01 〜 0.68
ピーマン クレソキシムメチル 2 1 50.0 0.08
日本なし ビフェントリン 13 6 46.2 0.01 〜 0.03
しゅんぎく アセタミプリド 9 4 44.4 0.02 〜 0.15
にら フルジオキソニル 7 3 42.9 0.03 〜 0.17
ピーマン ジフェノコナゾール 7 3 42.9 0.02 〜 0.1
日本なし ペンチオピラド 19 8 42.1 0.01 〜 0.05
しゅんぎく ニテンピラム 19 8 42.1 0.01 〜 0.16
非結球レタス クロラントラニリプロール 19 8 42.1 0.02 〜 0.33
日本なし クレソキシムメチル 34 14 41.2 0.03 〜 0.22
日本なし シエノピラフェン 10 4 40.0 0.01 〜 0.14
日本なし フェンブコナゾール 25 10 40.0 0.01 〜 0.02
こまつな フルベンジアミド 5 2 40.0 0.01 〜 1.4
非結球レタス ボスカリド 5 2 40.0 0.05 〜 0.2
★農薬別では、ジノテフラン80検体で検出
表3には、農薬別の検出数(検出された作物の種類数と検出検体数及び最大検出値を示した農作物のリストを示しました。
検出された農薬の種類は54種で、延べ501検体に農薬が0.01〜7.2ppm(しゅんぎくのクレソキシムメチル)残留していました。
検出件数が多い農薬の順は、ネオニコチノイド系のジノテフラン80検体(うち、こめ21、こまつな13)、ついで、クレソキシムメチル34(うちにら16、日本なし14)。アゾキシストロビン26(うちピーマンとしゅんぎく各7)、アセタミプリド26(うち日本なし13、にら5)、クロラントラニリプロール25、フルベンジアミド24 と続きます。
最大検出値が高い作物で、目立つのはクレソキシムメチル(しゅんぎく7.2ppm)、クロラントラニリプロール(こまつな 4.9ppm)。 ベンチオピラド(非結球レタス 4.5ppm )、その他最大値が1ppm以上見出されたのは。 フルベンジアミド(非結球レタス2.7ppm)、アゾキシストロビン(にら/しゅんぎく:2.6oom) 、ピリダリル(にら/しゅんぎく2.6ppm)、イプロジオン(ピーマン1.2ppm) 、シペルメトリン( にら1.2ppm)。フルフェノクスロン(しゅんぎく1.2ppm)、フルフェヌロン (こまつな1.1ppm) でした。残念ながら、同一検体での複合汚染の実態は不明です。
表3 農薬別の検出数と最大検出作物(数値は検出値ppm)
農薬名 検出作物の 最大検出作物と
種類数と検出数 最大検出値ppm
アクリナトリン 1種: 1 日本なし:0.01
アセタミプリド 6種:26 にら :0.45
アゾキシストロビン 8種:26 にら/しゅんぎく:2.6
イプロジオン 2種: 5 ピーマン : 1.2
イミシアホス 2種: 2 にんじん : 0.06
イミダクロプリド 1種: 4 ピーマン : 0.18
インドキサカルブ 1種: 1 非結球レタス : 0.04
キャプタン 1種:19 日本なし : 0.41
クレソキシムメチル 4種:34 しゅんぎく : 7.2
クロチアニジン 7種:20 しゅんぎく : 0.56
クロラントラニリプロール 5種:25 こまつな : 4.9
クロルフェナピル 5種:12 ピーマン : 0.94
クロロタロニル(TPN) 1種: 5 ピーマン : 0.42
シアゾファミド 1種: 4 こまつな : 0.24
シエノピラフェン 1種: 4 日本なし : 0.14
ジノテフラン 7種:80 こまつな : 0.8
ジフェノコナゾール 1種: 3 ピーマン : 0.1
シフルフェナミド 1種: 1 ピーマン : 0.1
シペルメトリン 3種:17 にら : 1.2
シラフルオフェン 2種: 5 日本なし : 0.04
スピノサド 1種: 3 にら : 0.1
ダイアジノン 1種: 1 こまつな : 0.5
チアメトキサム 4種: 7 非結球レタス: 0.07
テブコナゾール 1種: 1 日本なし : 0.15
テフルトリン 1種: 1 こまつな : 0.02
テフルベンズロン 1種: 1 日本なし : 0.04
トラロメトリン 1種: 2 日本なし : 0.02
トリフルミゾール 1種: 1 ピーマン : 0.19
トルフェンピラド 3種: 4 ピーマン : 0.52
ニテンピラム 1種: 8 しゅんぎく:0.16
ビフェントリン 1種: 6 日本なし : 0.03
ピラクロストロビン 2種:20 日本なし : 0.1
ピリダベン 1種: 1 ピーマン : 0.04
ピリダリル 5種: 9 にら/しゅんぎく: 2.6
ピリミホスメチル 1種: 1 こまつな : 0.04
フェリムゾン 1種: 5 米 : 0.48
フェンブコナゾール 1種:10 日本なし : 0.02
フェンプロパトリン 1種: 3 日本なし : 0.06
フサライド 1種: 2 米 : 0.04
フルジオキソニル 1種: 3 にら : 0.17
フルフェノクスロン 3種:13 しゅんぎく:1.2
フルベンジアミド 5種:24 非結球レタス : 2.7
プロシミドン 3種:13 ピーマン : 0.49
プロチオホス 1種: 1 にら : 0.06
プロピザミド 1種: 2 しゅんぎく: 0.03
ブロモブチド 1種:12 米 : 0.1
ペルメトリン 3種: 5 ブロッコリー :0.21
ペンシクロン 1種: 1 米 :0.01
ペンチオピラド 4種:19 非結球レタス: 4.5
ボスカリド 3種:21 非結球レタス: 0.2
マンジプロパミド 1種: 2 非結球レタス: 0.14
ミクロブタニル 1種: 1 ピーマン : 0.07
メタラキシル 1種: 1 にんじん : 0.08
ルフェヌロン 2種: 3 こまつな : 1.1
作成:2020-06-30