農薬の毒性・健康被害にもどる

n03102#札幌市でのカラス死亡原因は農薬入り餌か#20-10
 農薬・殺虫剤によると思われるカラス殺し相次いで報じられています。7月には、仙台市で、ごみあさりのカラス駆除に毒餌が使われ、男性が鳥獣保護法違反の疑いで書類送検されましたが、ここでは、9月に、北海道で起こったカラス事件をとりあげました。

★二十四軒すずらん公園で、カラス25羽が衰弱・死亡しました〜有機リン剤検出
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【関連サイト】YouTube動画(北海道ニュースUHB):9/019/14
       号外ネット9/019/15
       札幌カラス研究会:フェイスブック

 9月の始め、札幌市西区の二十四軒すずらん公園の内外で、カラスの衰弱又は死亡した個体が発見されました。報道をまとめると以下のようです。
  ・9月1日午前6時、近所の人が、カラスの死骸をみつけ警察に通報。
  ・公園周辺で10羽の個体(うち5羽死骸)がみつかった。
  ・高病原性鳥インフルエンザについての簡易試験で陰性であった。
  ・その後、公園内外の調査で、合計25羽の個体がみつかった。
  ・9月14日、原因調査をした警察が、カラスから有機リン剤が検出されたと発表。
 このような情報を耳にすると、反農薬東京グループでは、該当地区の公園管理者に尋ねるのが常のことです。札幌市西区の土木部維持管理課に下記の問い合わせをだしました。
 **お尋ねします**
  1、当該公園で、カラス等の衰弱又は死んだ個体が発見されていますが、その経緯を
   おしえてください。最初に発見された日から現在まで、発見日時ごとに、発見場所、
   野鳥の種類別の被害数(衰弱数、死亡数別をそれぞれ)はどうなっていますか。
   また、人や環境への被害がありましたら、付記ください。

  2、被害原因について、いつどこがどのような調査を実施されましたか。
   病原菌調査、有害物質調査について、調査内容と結果もお示しください。

  3、報道では、有機リン剤が検出されたということですが、検査数と検出数を野鳥の
   種類ごとに、教えてください。
   分析部位、分析対象物質名もお願いします。

  4、カラスに検出された有機リン剤名は、具体的になにですか。
   有機リン剤ごとに、分析部位、検出範囲を教えてください。

  5、カラスが当該物質を摂取した原因はなにとお考えですか。
   どのような調査をされましたか。
   農薬等の有害物質の周辺での使用はありましたか。
   人為的な投与の可能性はありますか。
   不審なえさ類等はみつかりませんでしたか。

  6、再発防止のため、どのような対策をおとりですか。
★カラス死の情報源が報道のみでは、真相は闇の中
 上記のような問い合わせをすると、行政からは回答が得られる場合もありますが(たとえば、記事t21305参照)、今回は、担当部署からの返事は、報道以上のことはわからないということでした。農水省に尋ねても『警察が対応しているものと承知しており、当方では報道以上のことは把握しておりません。』という回答でした。
 報道のみでは、警察が検出した有機リン剤が死因である科学的論拠も、同剤をどのような経路でカラスが摂取したのかもわかりません。

 このような野鳥の死亡原因として、特に、
  @天候・気象などの影響
  Aウェルシュ菌など食中毒菌で汚染されたエサ
  B鳥インフルエンザウイルスやウエストナイルウイルス(記事t09606参照)などによる伝染病
  C周辺での農薬等の散布
  D人為的に農薬や殺虫剤などを混入した毒エサ
 などが、考えられます。

 Aの食中毒の疑いは捨てきれず、これを実証するには、エサ場を調べて、ウェルシュ菌など原因病原菌をみつける必要があります。
 Bについては、石狩振興局保健環境部環境生活課の試験で、鳥インフルが陰性であるとされています。
 Cについては、空中散布のような高濃度散布で直接被曝したり、散布等で汚染された作物を食べたのが原因であれば、周辺での農薬・殺虫剤の使用状況を調査すれば、原因が判明するでしょう。Dの可能性で、警察が死因とするなら、カラスで検出された有機リンの種類、検出部位、検出範囲が明らかなはずで、当該農薬の入手先を捜索しているでしょうし、不審な毒餌があれば、付近での聞き込みや類似事例などの情報も入手していると思われます。
 ともかくも、警察が情報を抱えたままでは、カラスの死の真相は、不明のままです。これでは、身の回りで、入手できる農薬等による野鳥被害の再発防止対策につながりません。早急に、きちんとした科学的解明がなされる必要があります。

 なお、野鳥類の死亡事件で、原因とされた農薬・殺虫剤成分が判明しているのは下表のようです。(記事t26805参照)  ほかにも、野鼠駆除目的の毒餌やそれを食べて死んだ野鼠を餌にした野鳥の二次被害もみられます(記事t15201)。

   表  ラットと鳥類の経口半数致死量 LD50(単位:mg/kg)
         *は有機リン、**はカーバメート、***コリンウズラ
    農薬名      ラット    鳥類       毒劇法     
    MPP*      320〜566   7.2***      劇物(2%以下指定なし) 
    シアノホス*    580〜610    ニワトリ23.5  指定なし
    メソミル**         12〜48     ニワトリ28    毒物(45%以下劇物)
    EPN*             14        ニワトリ171   毒物(1.5%以下劇物)
    エチルチオメトン* 1.9〜15.9  39*      毒物(5%以下劇物)

作成:2020-10-30