食品汚染・残留農薬にもどる

n03301#JAくるめ出荷の春菊に基準の9倍のイソキサチオン〜食べるな危険の回収情報発信#20-12
【関連記事】記事n03302記事n02704記事n02604

 海外からの輸入農産物の残留基準だけでなく、12月近くになると、野菜類を中心に残留基準違反の情報が各地で発出されています(下表参照)。
 ここでは、JAくるめ出荷の春菊における高濃度のイソキサチオンでJAや関係自治体が発出した『食べるな危険!』事例について紹介します。
 なお、私たちが、関係者に送った要望・質問及び[回答]を以下にリンクしておきますので、参考にしてください。
   福岡県宛てJAくるめ宛て福岡市宛て福岡大同青果宛て農薬対策室宛て
   農水省12月24日発出の通知:
     農薬の不適正使用により健康に悪影響を及ぼすおそれがある事案の発生及び農薬の適正使用に係る指導の徹底について

★福岡市の収去検査からはじまった
【関連サイト】福岡市:残留基準値を超えて農薬が検出されたしゅんぎくの流通についての注意喚起(12/08)
             残留基準値を超えて農薬が検出された春菊の流通についての注意喚起(12/10)と追加情報(12/16)
         福岡県:残留基準値を超えて農薬が検出された「しゅんぎく」の流通についての注意喚起
         JAくるめ:残留農薬基準超過農産物の発生のお知らせとお詫び ならびに当該農産物の自主回収のご報告(12/10更新)追加情報
       福岡大同青果株式会社: JAくるめ春菊の自主回収について(12/08→12/14更新)

 春菊の残留農薬についての経緯を、福岡県、福岡市、JAくるめへの問い合わせへの回答などからまとめると以下のようでした。
 ・12月7日
   福岡市食品衛生検査所が、同市中央卸売市場青果市場での収去検査で春菊(1検体)について
   農薬成分240項目の検査を実施した。
 ・12月8日
   市のスクリーニング検査で、農薬3成分(イソキサチオン、アラクロール、テフルベンズロン)が
   食品衛生法の基準値を超過するおそれがあることが判明した。
   特に,イソキサチオンについては,基準値を大幅に超えており、健康被害発生のおそれ
   も考えられ、直ちに,被収去者である「福岡大同青果株式会社」に対し、その旨を通知し、
   自主回収及び出荷者(JAくるめ)への連絡指導がなされた。
   大同青果社は、ただちに、自主回収を行い、出荷元である JAくるめにも、その旨の
   通知を行った。
   当該春菊の一部は、すでに市民へ販売されていたため、市は同日報道発表を行い、
   市民へ広く注意喚起を行った。
 ・12月9日
   福岡市が発表した春菊の残留基準値超過の報道がなされた。
   県は、報道等で事実を知り当該生産者へ現地立入検査を実施。
 ・12月10日
   市の検査結果は、イソキサチオン8.4ppm検出(基準値:0.05ppm)、アラクロール0.03ppm検出
   (基準値:0.01ppm)、テフルベンズロン0.85ppm検出(基準値:0.01ppm)と確定し、
    3成分以外は定量下限値未満。
   市は、食品衛生法に違反していたことから原因究明及び再発防止のためJAくるめを
   管轄する久留米市に通知した。
 ・12月11日
   県は、当該生産者に対する文書警告。JAくるめ、久留米普及指導センターに対し、文書通知した。
   JA、直売所等に対し、「農薬安全使用基準の遵守について」を通知。併せて、講習会実施を依頼。
 福岡県は、イソキサチオンの残留基準を知ったのは、12月9日であり、独自に残留分析をすることはなく、また、市も県も、隣接圃場からのドリフトによるイソキサチオンの汚染残留は確認していませんでした。

★JAくるめは、生産者への指導ができていない
 JAくるめは、春菊の生産出荷者→卸販売会社「大同青果」→小売業者→消費者の経路で販売していました。
 JAによると、『出荷者は研究会組織で出荷される生産者3名と個人で出荷される生産者1名 (当該生産者) の合計4名です。研究会員3名は周年栽培であるため半期に一度の確認を行っていましたが、個人出荷の生産者の防除履歴は確認していませんでした。 問題発覚後に本人確認をしました。』とのことでした。当該生産者は、残留農薬分析は実施しておらず、隣接のタマネギ圃場も全量廃棄処分したため、春菊へのドリフトの確認はしていなかったわけです。
 イソキサチオン含有農薬についての登録内容は以下のようで、当該農協が、生産者にこの適用を守らせず、残留基準違反につながったことは明確です。
  ・春菊への登録内容
       カルホス微粒剤F (登録番号第13873号)
       適用病害虫 ネキリムシ類
       使用方法 作条処理土壌混和
       使用量 6kg/10a 使用時期 定植時 使用回数 1回
  ・たまねぎへの登録内容
       カルホス乳剤(登録番号第12455号)
       適用病害虫 タマネギバエ
       使用方法 土壌灌注
       希釈倍数 500〜1000倍 
       使用液量 
        育苗箱(約30×60×2.5p、使用土壌約2L)1箱あたり500mL
       使用時期 定植前  使用回数 1回
★販売会社は、回収に走ったが、関係者に法的処罰はなし
 当該春菊を販売した大同青果社は、12月8日(その後、12月14日更新)の「JAくるめ春菊の自主回収について」で、販売商品の写真を示し、以下の報告しています。
  2020年12月7日に行われました福岡市食品衛生検査所による残留農薬検査において、
  下記対象物より、3種類の農薬が基準値を超えて検出されており、一部健康被害を及ぼす
  おそれがあります。
  該当出荷者の春菊においては、当社にて12月5日(土)、12月7日(月)、12月8日(火)に
  販売をしております。つきましては、検査所より農薬検出の連絡を受けた12月8日(火)より
  自主回収を行っております。
  下記の販売店で対象物を購入し、保管されている方は、販売店へ返品いただきますよう
  お願い申し上げます。なお、下記対象物を販売した販売店において一切の責任はございません。

  □対象物
   1.出荷者 :久留米市農業協同組合(JAくるめ)
   2.品目  :春菊
   3.販売数 :568袋(回収済み300袋、未回収268袋)
                ※12月14日(月)8:00時点
   4.販売日・販売数・販売店
  【12月7日(月)販売分】販売数:168袋 うち98袋回収済み
   ・(有)イトシマヤ、・あかね、・(株)ヒラノ、・松永青果
   ・ファミリーマートの九産大駅前店、福岡和白三丁目店、
      多の津一丁目店、福岡香椎照葉四丁目店、原田二丁目店、
      福岡二又瀬新町店

  ※12月5日(土)、12月8日(火)販売分につきましては、今回残留農薬検査を行った商品では
   ないものの、同一生産者による出荷のため自主回収を行っております。

  【12月5日(土)販売分】販売数:250袋 うち52袋回収済み
   ・フードウェイ トリアス店、新飯塚店
   ・生鮮市場みかん 室住店、 ・ハイマート 飯塚店

  【12月8日(火)販売分】販売数:150袋 全量回収済み(市場外に出回る前に回収済み)
 JAのとった再発防止策は、下記のように、とおり一片の事項しかありません。
  (1)園芸生産部会長・研究会長・出荷者に対して文面にて農薬の適正使用注意喚起を実施
  (2)全ての出荷者に対して農薬の安全使用講習会を実施
  (3)生産履歴の緊急点検を実施
  (4)全品目の残留農薬検査を実施
  (5)個人出荷者に対する農薬適正使用講習会を実施
 県の9日の立ち入り検査で、当該生産者が、春菊へ適用外使用をしており、使用履歴に正しく記載されていないことが確認され、適用外の農薬散布が、農薬適正使用基準違反に該当したため、文書警告がなされていますが、農薬中毒を起こす恐れのある重大事例であるにも拘わらず、直接の生産者はもちろん、出荷販売に携わったJAや卸会社も含め、県や市による農薬取締法や食品衛生法違反の告発はなされていません。このことは、下段にあげた過去の高濃度残留による違反事例とかわりません。違反関係者には、指導や警告だけでなく、法的措置をとるのが筋でしょうに。


表 最近の残留基準違反等の事例

年月日 生産又は出荷者 作物又は製品名・違反農薬名 備考
2020/12/07 福岡県・グリーンコープ生協 ふくおか 化学合成農薬と化学肥料は3年以上不使用として販売 お詫びとご報告〜「産直下郷農協野菜セット」について、化学合成農薬を使用した 野菜をお届けしていた可能性があることがわかりました
2020/11/30 群馬県・JAあがつま 乾燥加工品5種(「生姜粉末」「生姜糖」「桑の葉粉末」「七福茶」「J-herb どくだみ」)にプロペタンホス0.07ppm検出(基準0.01ppm) 県内直売所や道の駅で販売。お詫びと自主回収等のお願い
2020/11/27 埼玉県・JAいるま野 水菜にフェニトロチオン0.05ppm検出(基準0.01ppm) あぐれっしゅ川越で販売。残留農薬基準超過についてのお詫び
2020/11/20 山口県・JA山口県 ホウレンソウにフェニトロチオン0.2ppm検出(基準0.1ppm) あぐりプラザおふくで販売。残留農薬基準超過の発生とお詫び並びに自主回収のご報告について
2020/11/09 インド産ゴマ 酸化エチレン 輸入者Picard SAS社。当該ゴマを原材料に用いた製品に残留の疑いで、千葉市の自主回収情報
2020/11/03 福井県・ゲンキードラッグストアーズ 金沢市の収去検査により、プライベートブランドの冷凍枝豆にジフルベンズロン0.02ppm(基準0.01ppm)検出 輸入者河田トレーディング。商品回収に関するお詫びとお願い
2020/10/26 株式会社壮関 イチジク加工品ら4品目にクロフェンテジン0.12ppm(基準0.01ppm)検出 商品自主回収に関するお知らせ
2020/09/24 中国産生姜 クロチアニジン0.10ppm(基準0.02ppm)検出 輸入者:源清田商事株式会社。recall-plusのニュース

 いままでの高濃度残留違反事例〜てんとう虫情報より
 ・t20904#08年の後半の国産農作物の残留基準違反#09-01
    2009/10  山口県 チンゲンサイ アセフェート10.9ppm(基準5)、
   2009/12 静岡県 ホウレンソウ エトフェンプロックス12.3ppm(2)

 ・t26605#残留農薬違反事例〜毒・劇物指定のある成分の使用が目立つ#13-10
   2013//05 山形県 コマツナ イソキサチオン12.35ppm(0.1ppm)

 ・t26803#国産食品の残留違反〜山口産ホウレンソウにアセフェートが15ppm、代謝物メタミドホスには頬被り#13-12
  10月 山口県 ホウレンソウ アセフェート 15ppm

作成:2020-12-30