食品汚染・残留農薬にもどる

n03302#厚労省の輸入食品監視調査結果−2020年5月〜2020年10月の残留農薬基準違反#20-12
【関連記事】記事n02804(2019年11月-2020年4月)
【参考サイト】厚労省:食品中の残留農薬等の頁にある食品中の残留農薬等調査:
              輸入食品監視業務の頁にある違反事例
              輸入食品等の食品衛生法違反事例(2020年度分、xls版)
              平成25〜26年度 食品中の残留農薬等検査結果について(国産・輸入別、食品別の残留データあり):
               結果まとめ2015年度詳細(pdf版1033p)、2016年度詳細(pdf版954p)
            2020年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果(中間報告)の公表監視指導(指導計画中間報告)

 記事n02804に続き、厚労省管轄の検疫所での輸入食品検疫検査で、残留農薬が基準を超えて検出された事例について、2020年5月〜2020年10月の半年分をまとめました。
 なお、この調査は、基準より低い残留量は発表されません。残留分析結果そのものを公表している機関はあまりなく、東京都健康安全研究センター調査が参考になります(2017年度の調査で、記事n02203記事n02303記事n02403など)。
 なお、厚労省の食品中の残留農薬等の頁にある<食品中の残留農薬等調査(平成28から令和元年)は表2から、<2019-20年度検査命令実施通知と検出結果は表3から、それぞれリンクを辿ってください。

★違反件数は延べ69件(実検体数62)〜25品目の食品で、26種の農薬に基準超え
 残留基準又は一律基準違反の延べ件数は前の半期より6件増加の69件(うち、一律基準0.01ppm違反は45件)で、多いのは7月21件、月平均11件でした。
 半年間に、13カ国、25品目の輸入食品(冷凍や加工食品も含む)から26種の農薬の食品衛生法違反(検出範囲は、ハンガリー産はちみつのクマホス0.01ppm〜中国産マツタケのアセトクロール4.14ppm)がありました。
 違反を摘発した検疫機関は15で、件数が多い検疫所は横浜10、成田空港9、東京8、下関と神戸二課7、大阪6件の順でした。違反が判明したのは命令検査が28、モニタリング検査が35、自主検査が6件ありました。
 食品別、生産国別、農薬別の件数を違反の多い順に表1に示します。
  表1  2020年5月〜20年10月の内容別違反件延べ数 ()は実検体数

  (a)食品別              (b)生産国別          (c)農薬別
  カカオ豆    9	        中華人民共和国 29       2,4-D             9
  タマネギ    7	        ベトナム   12(8)        チアメトキサム    9
  エゴマ     6(4)          大韓民国    8(5)        プロシミドン      8
  ブロッコリー5	 	エクアドル  5	        シペルメトリン    6
  マンゴー    5	        タイ        3	        アセトクロール    3
  トウガラシ  4(3)         ベネズエラ  3	        トリアジメノール  3
  ニンジン    4	        メキシコ    3	        ハロキシホップ    3
  オオバコエンドロ 4(1)	イタリア    1	        プロピコナゾール  3
  ニンニクの茎3	        オランダ    1	        プロフェノホス    2
  小豆      2	        ハンガリー  1	        ヘキサコナゾール  2
  オクラ     2	        フィリピン  1	        イソプロチオラン/インドキサカルブ/クマホス/クロルピリホス/
  シソクサ    2	        マラウイ    1	        クロルフェナピル/ジフェノコナゾール/ジフルベンズロン/
   ニラ      2(1)                   ジメトモルフ/チアクロプリド/テトラコナゾール/ピリダベン/ 
  バレイショ  2                     ピリミホスメチル/フィプロニル/ペルメトリン 各1
  ネギマ*/ホウレンソウ/マツタケ/アマメシバ/ドリアン/   
  バナナ/パプリカ/マカダミアナッツ/小麦製品 各1
  合計数 69 (62)   注* ネギマは加工品で、原料の生鮮ネギに換算しての違反
【食品別の違反】
 表(a)の食品別違反で、前の半年から、ワースト一位に浮上したのはカカオ豆9件(いずれも2,4-D:0.02-0.40ppm、生産国はエクアドル5件、ベネズエラ3件)でした。タマネギが前半期0件から7件の二位に、ついで、エゴマが6件、ブロッコリーとマンゴーが各5件と続きました。二位のタマネギの7件は、以前に検出されていた中華人民共和国(以下、中国という)産のチアメトキサムが0.03-0.07ppmでした。エゴマの6件は、すべて、大韓民国産(以下、韓国という)で、パクロブトラゾール、インドキサカルブ、チアクロプリドほかの残留基準違反がみられました。
 前の半期11件で一位のトウガラシ類が大幅に減少し、8件のポップコーンや5件のアボカドはゼロになりました。
 検査で最大残留をしめした中国産マツタケのアセトクロールは日本では登録のない除草剤で、現地で散布時期と重なったためと考えられています。

【生産国別の違反】
 表(b)の生産国別違反では、延べ検出数のワースト一位は、前の半期から一気に3倍以上に増えた中国が29件、二位は2倍になったベトナムが12件、ついで、韓国8件とつづきました。  中国は、タマネギ7件(すべてチアメトキサム)、ブロッコリー5件(すべてプロシミドン)、ニンジン4件(うちトリアジメノール3)で、残留値が高いのは、上述のマツタケのほか、ネギマのジクロルボス3.3ppm(分析は加工品だが、生鮮の換算値として)があります。ほかにも、バレイショ、小豆、ニンニク、オクラ、ホウレンソウなど野菜類に残留違反が多くみられました。
 ベトナムは、8検体(トウガラシ類3検体、シソクサ2体ほか)に検出され、一番残留値が高かったのはシソクサのジフェノコナゾール2.4ppm、複合残留で目立ったのは、オオバコエンドロの4農薬(クロルピリホス1.6、シペルメトリン0.10、プロフェノホス0.68、ヘキサコナゾール0.18各ppm)でした。  韓国は、エゴマが4検体(延べ検出数6件)で、うち1検体はインドキサカルブ1.1、パクロブトラゾール0.18、テフルベンズロン0.80各ppmの複合残留でした。また、ニラにも2農薬が複合残留しています。

【農薬別の違反】
 表(c)の農薬別の延べ違反件数のワースト一位は前の半期から1件減りましたが2,4-Dの9件(すべてカカオ豆)と1件から大幅増のチアメトキサム9件(すべて中国産で、タマネギの0.07pppmが最大値)。三位がプロシミドン8件(うち中国産6件でブロッコリーが5件)で、韓国産ニラが0.19ppmと一番高かったです。  四位のシペルメトリンは6件(うちマンゴー4件、メキシコ産3、タイ産2)で、メキシコ産が0.31と0.32ppmと高い値でした。

【違反の原因と措置】
 原因については、不明又は特定できない事例が延べ数の半数以上の39で、うち中国での事例が16と多くみられました。同国からの輸入が多いせいでしょうか。その内容をみると、隣接圃場からのドリフトによる汚染が8件のほか、日本の基準の認識不足、契約外の原料使用、農薬使用量の管理不足があげられていました。その他の国では、ベトナムで、農薬使用時期の管理不足が指摘されました。
 措置については、内容別の件数は下記のようでした。このうち、全量又は一部消費されたものには、韓国産エゴマやニラ、中国産マツタケ、ベトナム産シソクサやアマメシバがありました。
    廃棄、積み戻し等を指示(全量保管)  19	   廃棄、積み戻し等を指示
     積み戻し                              15	        (一部販売済み、残余保管中 )2
     廃棄                                  10	   一部消費済み、残余廃棄                 2
     全量販売済み                           9	   一部消費済み、残余分は回収の上廃棄済み 1
     積み戻し(第三国)                     7	   全量消費、廃棄済み                     1
     全量消費済み                          3

表2 食品中の残留農薬等の頁にある<食品中の残留農薬等調査(平成28から令和元年)>より  
食品中の残留農薬等検査結果 残留農薬等一日摂取量調査結果
平成30年度について
 結果まとめ全体版(898p)
令和元年度一日摂取量
平成29年度について
 結果まとめ全体版(910p)
平成29年度一日摂取量
平成28年度について
 結果まとめ全体版(946p)
平成28年度一日摂取量

表3 2019-20年度検査命令実施通知と検出結果へのリンク
年月日産地・作物・農薬の検査命令内容検査結果
2019/12/24マレーシア産ゆり科野菜(ネギ属の野菜)で、にんにくとにらを掛け合わせたもののクロルピリホス12/24検出データ(違反残留値;0.03&0.17ppm)
2019/12/24インド産フェンネルの種子及びその加工品のトリアゾホス 
2020/01/10イタリア産うるち米のピリミホスメチル 
2020/02/13米国産とうもろこし(爆裂種に限る。)のデルタメトリン及びトラロメトリン 
2020/03/04ペルー産カカオ豆の2,4−D 
2020/03/16エジプト産キンセンカのクロルピリホス 
2020/03/25@オランダ産セルリアック及びその加工品のクロルプロファム及び
Aベトナム産きだちとうがらし及びその加工品のトリシクラゾール
3/25検出データ(違反残留値;@0.04&0.08ppm、A0.02&0.02&0.05ppm)
2020/04/10ベトナム産赤とうがらしのプロピコナゾール 
2020/06/11ベトナム産きだちとうがらしのヘキサコナゾール、プロピコナゾール 
2020/06/15中国産にんじんのトリアジメノール6/15検出データ(違反残留値:0.2&1.0ppm)
2020/07/14中国産ほうれんそうのディルドリン(アルドリンを含む)、エンドリン、クロルピリホス 
2020/07/31韓国産エゴマのパクロブトラゾール7/31検出データ(違反残留値:0.05&0.18ppm)
2020/08/13中国産ばれいしょのハロキシホップ8/13検出データ(違反残留値:0.02&0.02ppm)
2020/08/18@タイ産マンゴーのシペルメトリン及びAベトナム産青とうがらしのプロピコナゾール8/18検出データ(A違反残留値:0.03&0.06ppm)
2020/08/18中国産ばれいしょのハロキシホップ 
2020/08/21韓国産エゴマのパクロブトラゾール 
2020/09/18中国産にんにくの茎のチアメトキサム 
2020/11/20コートジボワール産カカオ豆の2,4−D及びスペイン産うるち米のテブコナゾール 
2020/11/26中国産にんじんのジメトモルフ 

作成:2020-12-30