**** 2消安第4308号の別添へのコメント ****
【1.事案の概要】 福岡県での春菊における高濃度残留事案を念頭においた説明ですが、作物名も、残留基準違反のイソキサチオンや他の違反農薬の成分名が示されることもなく、『当該有効成分の残留濃度及び急性参照用量から見て、当該農作物の摂取により、
健康に悪影響を及ぼすおそれがあることが判明し、当該農作物に対し、管轄の食品
衛生検査所は絶対に喫食しないよう注意喚起を行い、また、出荷した卸売会社等は
自主回収を行うこととなった。』と記載されているだけです。
このような一般的な説明では、インパクトがありません。福岡市の収去検査により、基準違反がみつかったという実例を明確に解説すべきでしょう。
【2.残留基準値超過が発生した原因等】 『 県が当該農作物を出荷した生産者等に聞き取り調査を行った結果、生産者団体には所属しているが、作物部会には所属していない生産者(1名)が家庭菜園に散布した農薬の残液を適切に処理せず、同農薬の適用農作物等の範囲に含まれない農作物に散布したことが直接の要因であることが判明した。』とあり、『当該生産者においては、
・農薬のラベルの確認が不十分であること
・農薬の使用履歴が記帳されていないこと
・農薬タンク及びホース内の洗浄が不十分であること
・農薬の保管状況が適切ではなかったこと
が判明し、農薬の使用等に関する知識及び理解が極めて不十分であった。』とされていますが、これらの事項は、いままでも、さんざん指導されていた内容にすぎません。記載の4点は、日常的なミスでもおこることで、出荷したJAくるめや販売会社の実態を調べ、生産者への指導に欠けていた事項・理由を明らかにして、その責任をきちんと糾すべきです。
【3.県が事案発生以前に実施していた指導内容等】 以下の指摘があります。 部会員のみに指導していたとは、単なる言い逃れです。個々の生産者へ行政の指導が行き届かない現行の仕組みをどのように改善するか、具体的な方向性がみえません。
・主に生産者団体や直売所の部会員を対象に、農薬適正使用講習会を定期的に実施し、
農薬の適正使用に係る指導を実施していた。
・生産者団体等に所属していない生産者の把握は困難であるが、要請に応じて農薬の適正使用に
係る情報提供を行ってきた。しかし、当該農家は、県から直接指導を受けたことはなかった。
【4.県内における今後の指導内容の改善】 下記の項目と対策が記載されています。しかし、その前に、やるべきことは、段階的でもいいですから、期限を決めて、農薬の使用を減らしていくことが、不可欠だということを認識すべきです。
・県は不適正使用を行った生産者に対しては文書による警告を行い、今後農薬使用基準に違反して
農薬を使用することがないよう誓約書の提出を求めるとともに、
、・県が作成した当該農作物に適用がある農薬登録一覧表を手交し、最新の農薬の登録情報を入手するよう指導した。
・当該事案が発生した生産者団体管内の生産者を対象とした農薬適正使用にかかる講習会を生産者団体と
開催し、再発防止に努めるとともに、再発防止に向けた以下の取組を進めることとしている。
(1)農薬に関する知識や理解が十分でないことへの対策
(1-1)県下一斉に、全ての生産者団体及び直売所が、所属する全組合員に対し、県の協力の下、
農薬適正使用講習会を実施する。併せて、県GAP等の取組を促す。
(1-2)県のホームページで適正使用に関する資料を掲載し、農薬使用者が常に農薬の適正使用に
関する知識と理解を深められるようにする。
(2)周知指導の行き届きにくい農薬使用者への対応
(2-1)地域協議会の活用や直売所、農薬販売店の協力の下、生産者団体外の直売所への出荷者や
個人出荷者等の周知指導の行き届きにくい農薬使用者に対して、講習会への参加を呼びかけ、
必要に応じ、直接指導を行う。
(2-2)農薬販売店に、生産者が農薬ラベルを遵守する、農薬を使用した際は記帳する等のポスター等を
配布するとともに、農薬販売時に生産者に対して、注意喚起の声掛けを行うよう依頼する。
(2-3)=(1-1)の文中「県の協力の下」が「各普及指導センター協力の下」と変更
(2-4)=(1-2)
(3)農薬の使用に関する記帳を行わないことへの対策
(3-1)生産者団体や直売所に対して、集荷時に生産者から提出された農薬散布履歴の確認を必ず行い、
(3-2)農薬の使用状況に問題が無いことを確認した上で、農作物を受け入れることも
検討するよう指導する。
(3-3)JAに対して、集荷時における農薬の使用状況の確認に加えて、出荷前の自主検査も
検討するよう促す。
作成:2021-01-30