環境汚染にもどる
n03501#2019年度のゴルフ場使用農薬の水質調査結果〜排水から74種の農薬検出#21-02
【関連記事】記事n02104(2018年ゴルフ場農薬調査)
【参考サイト】農水省:ゴルフ場において使用が計画されている農薬についてと令和2年度農薬使用計画書(ゴルフ場)提出状況
環境省:ゴルフ場暫定指導指針対象農薬に係る水質調査結果の頁
ゴルフ場で使用される農薬に係る平成31年度水質調査結果について(2020/12/10)
都道府県別の水質調査結果、農薬別の水質調査結果(排水口)
ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止及び水域の生活環境動植物の被害防止に係る指導指針についての頁
水質汚濁の防止及び水域の生活環境動植物の被害防止に係る指導指針(2020/03/27、旧指針)
水濁指針値と水産指針値、指導指針の運用に当たっての留意事項等について(2020/03/27)
ゴルフ場は全国に2100ほどありますが、そこでの農薬使用については、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令第5条で、使用計画を提出することが義務づけられ、場外への流出を防止する措置を講ずることが努力規定として求められています。
環境省は「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁及び水域の生活環境動植物の被害防止に係るの指導指針(水質汚濁については水質指針=水質汚濁に係る農薬登録基準値の10倍値、水域被害防止については水産指針=水産動植物の被害防止に係る農薬登録基準値の10倍値)を設定し、排水口において、指針値を超えないよう指導しています。
今回の調査での対象農薬は、231農薬(208成分)でした。
★約1600のゴルフ場での排出水中農薬調査
2019年の排出水調査は、表1のように、全国47都道府県のゴルフ場の約76%の1607個所で実施されました。調査ゴルフ場数が0〜5と少ない県は、鳥取県2,和歌山県と山口県3、山形県5。100個所を越えるのは、栃木県102、埼玉県102、北海道111、茨城県112、兵庫県145。対象農薬数は、鳥取の9から兵庫の182種まで、大きなバラツキがあり、ゴルフ場あたり平均26農薬が分析されました。なお、ゴルフ場排出水の分析実施は、農薬の種類ごとに検出限界値も異なります。環境省指針では、『調査の実施に当たっては、一般に使用農薬の種類や使用の時期、方法等が病害虫及び雑草の種類、発生時期等に応じて地域により多様であるほか、排出水中への農薬の流出は、農薬の種類、使用方法や現地の地形、土壌、集排水系統等の状況によって異なること等に十分留意する。』となっています。
表1 ゴルフ場排水口等の水質調査結果及び取組状況の推移
調査年度 2019 2018年
調査実施ゴルフ場数 1,607 1,481
調査対象農薬数 231 174
総延べ検体数 41,962 38,188
排水口調査延べ検体数 10,916 9,165
★排水から74農薬が検出された〜最大値は、アシュラム100μg/L
排水口調査の結果、検出された農薬別の検体数と最大検出値を表2に示しました。調査したゴルフ場数、対象農薬数、延べ総検体数とも前年より増加していましたが、検出された農薬は81種から74種に、検出率も8.0%から6.9%へと減っています。
検出濃度の最大値が高かったのは、除草剤アシュラム100、殺菌剤テブコナゾール70とメトコナゾール59各μg/Lでした。2019年の検出値で、水濁指針を超えたものはなく、水産指針を超えたのは5件で、表中で赤字で示したダイアジノン1検体(指針値0.77μg/L)とピロキサスルホン3検体(指針値7.4μg/L)、オキシン銅1検体(指針値18μg/L)でした。
50検体以上調査され、検出率の高かった農薬は、殺菌剤ペンフルフェン42.0%を筆頭に、殺菌剤チフルザミド30.3%、除草剤ピロキサスルホン29.7%、除草剤メトラクロール系22.2%、さらに殺虫剤シクラニリプロル、殺菌剤トルクロホスメチル、殺菌剤オキシン銅と続きます。総じて、芝用殺菌剤や除草剤が多いことがわかります。
表2 2019年度のゴルフ場排出水中の農薬検出状況 (濃度単位:μg/L)
農薬名 検体数 検出数 最大 農薬名 検体数 検出数 最大
検出濃度 検出濃度
MCPA系3農薬 50 2 1 トリフロキシストロビン21 1 2.0
アシュラム 791 124 100 トリフロキシスルフロン
アセフェート 40 1 0.31 ナトリウム塩 33 3 2.3
アゾキシストロビン 529 56 20 トルクロホスメチル 171 31 10
アトラジン 30 4 3 ナプロパミド 57 5 2.0
アミカルバゾン 7 3 8.0 ハロスルフロンメチル 73 2 2
アラクロール 20 2 28 ピラゾスルフロンエチル11 1 0.6
イプロジオン 100 1 3 ピリベンカルブ 24 3 0.006
イマゾスルフロン 18 3 4.5 ピロキサスルホン 128 38 24
イミダクロプリド 94 3 3.0 フェニトロチオン 143 9 4
イミノクタジン系2農薬193 1 6 フェノキサスルホン 52 4 1
オキシテトラサイクリン14 2 0.001 フラメトピル 25 1 0.1
オキシン銅 143 25 19 フルキサピロキサド 84 13 42
カフェンストロール 74 8 5 フルセトスルフロン 5 1 3.3
え1 1
クロチアニジン 524 83 17 フルベンジアミド 97 2 4
クロラントラニリプロール215 9 2 フルポキサム 118 3 2.0
クロリムロンエチル 45 3 4 プロピコナゾール 99 6 0.001
クロルフルアズロン 95 1 0.2 プロピザミド 184 28 44
クロロタロニル 263 2 6 プロベナゾール 1 1 0.001
シアゾファミド 91 2 8 フロラスラム 18 2 1
ジカンバ系3農薬 57 1 2.3 ヘキサコナゾール 88 5 1.5
シクラニリプロール 32 6 6.0 ベノミル 29 1 14.0
シクロスルファムロン 176 13 2 ペルメトリン 127 2 1
ジチオピル 106 1 0.8 ペンシクロン 392 28 8
ジフェノコナゾール 86 4 20 ベンタゾン 13 1 1.1
シプロコナゾール 110 6 17 ペンディメタリン 174 1 1
シマジン 54 1 1.20 ペンフルフェン 69 29 10
ダイアジノン 113 4 2 ボスカリド 81 2 1.0
チアクロプリド 31 1 6 ホセチル 69 2 0.60
チアメトキサム 120 16 10 ホラムスルフロン 82 3 1.4
チオジカルブ 144 1 2.2 メコプロップ
チオファネートメチル 111 4 4 カリウム塩系4農薬 135 9 39
チフルザミド 267 81 40 メソミル 8 1 1
テブコナゾール 224 13 70 メタラキシル系2農薬 132 2 0.1
トリアジフラム 74 2 5 メトコナゾール 62 2 59
トリクロピルトリエチル メトラクロール系2農薬 54 12 34
アンモニウム 80 2 13.86 無機銅系5農薬 1 1 0.84
トリネキサパックエチル42 1 0.001 合計 10916 749
★ゴルフ場農薬〜芝地の殺菌剤にも注意を
【参考サイト】緑の安全推進協会;Top Page 情報の窓
環境省PRTR情報:集計結果概要(2018年度。2020/03/19公表)、届出外推計資料 2018年度にある
農薬に係る適用対象別・対象化学物質別の届出外排出量推計結果
ゴルフ場・緑地分野の農薬製剤販売実績については、業界団体の緑の安全推進協会が会員情報をもとに、調べています。2018年4月から19年3月の結果は、表3のようで、総出荷量は約7360トンでした。用途別では、除草剤が約75%の5529トンを占め、そのうち4411トンが緑地用、1108トンが芝用、殺菌剤891トンの殆どが芝用です。
ほかに、ゴルフ場内では、地上散布だけでなく、ドローンなどの無人航空機の空中散布にも注意を払う必要があります。
表3 ゴルフ場、緑地分野の農薬製剤出荷実績(2018年4月から19年3月) (単位 トン)
使用場所
用途 芝 樹木 緑地 合計
殺虫剤 409 330 1 740
殺菌剤 891 1 0 891
除草剤 1108 9 4411 5529
植調剤 59 2 41 101
その他 60 42 0 103
計 2527 384 4453 7364
【化管法指定のゴルフ場使用農薬】化管法(PRTR法)指定農薬成分(農薬活性成分で、溶剤・界面活性剤などの補助成分は除く)の年間出荷量を表4に示しました。
2018年度の成分別年間排出推定量(=出荷量相当)で、ゴルフ場使用量が多いのは、殺菌剤クロロタロニル(TPN)23.0、除草剤プロピザミド22.6、殺菌剤テブコナゾール22.9各トン年でした。なお、表2に見られるネオニコ系殺虫剤(イミダクロプリド、クロチアニジン、チアクロプリド、チアメトキサム)は化管法指定のない農薬のため、ゴルフ場使用の統計値がありません。
表4 PRTR法指定のゴルフ場農薬 年間出荷量
農薬名 出荷量 農薬名 出荷量 農薬名 出荷量
2,4−D 8050 シマジン 2959 フェニトロチオン 397
アセフェート 2551 ダイアジノン 947 フェリムゾン 1290
アゾキシストロビン19271 チウラム 5.1 ブタミホス 1200
アトラジン 1405 チオジカルブ 2697 フルトラニル 5020
イソキサチオン 478 チオファネートメチル12925 プロチオホス 910
イソプロチオラン 3416 テトラコナゾール 100 プロピコナゾール 1790
イプロジオン 6375 テブコナゾール 22853 プロピザミド 22592
オキサジクロメホン3816 テブフェノジド 440 ベノミル 335
オキシン銅 13233 トラロメトリン 9.2 ペルメトリン 1510
カフェンストロール3937 トリクロピル 125 ペンディメタリン 1071
クミルロン 1215 トリクロルホン 529 ミクロブタニル 35
クレソキシムメチル 320 トリフルラリン 14 メコプロップ 11803
クロロタロニル 23021 トリフロキシストロビン3274 メソミル 51
シアナジン 897 ハロスルフロンメチル3044 メトラクロール 13978
ジクロベニル 1867 ピリブチカルブ 1410 メプロニル 1466
ジフェノコナゾール1187 フィプロニル 137 (単位 kg/年)
作成:2021-02-28