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n03502#農水省による国産農作物の2019年度残留農薬調査11作物で延べ検出数は421#21-02
【関連記事】記事n02704(2018年度)、記事n03401
【参考サイト】農水省:国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査の結果について(令和元年度)の頁
結果の概要(2019年度)、使用状況調査、農薬別残留調査、作物別残留調査
農水省が1月に発表した、2019年度の国産農作物における残留農薬調査は、11作物約480検体(農薬と作物の組合せにでいえば、のべ数約3100件)について実施されました(報告には、別途ももについての記述もあるが、作物別一覧にはのっていない)。
★残留基準違反はなかったが
表1では、作物ごとの検出状況を概観しました。
使用状況調査対象となった約480戸の生産農家から、栽培された作物1検体が分析に供されました。作物ごとに、分析対象となった農薬数は異なり、延べ検体数(=作物数×分析農薬数)は3387、そのうち、なんらかの農薬が検出された作物検体は延べ数で421でした。残留基準・一律基準を超え食品衛生法違反となった事例はありませんでした。
11種の作物のうち、延べ検体数の多いのは、りんごが49農薬で772検体、いちご59農薬で743、ついで、コメが48農薬316検体、かぶの根24農薬308検体、かぶの葉34農薬230検体とつづきます。検出数が多かったのは、りんごが19農薬132検体、ほうれんそうが10農薬63検体、いちごが20農薬55検体で、かんしょと未成熟とうもろこしでは、農薬は検出限界以下でした。
最大残留値が高かったのは、ほうれんそうのイミダクロプリド4.6ppm、かぶの葉のジノテフラン4.6ppmでした。
コメでは、8農薬が31検体に見出され、最も残留値が高いのは、イソプロチオランが0.34ppmで、検出率が高いのは、殺菌剤フェリムゾンが55.6%(0.03〜0.18ppm)、殺虫剤ジノテフランが42.4%(0.01〜0.13ppm)でした。
表1 2019年度の農作物別の検体数と分析対象農薬数、延べ検出数
作物名 検体数 分析農薬数: 検出農薬数: 最大残留値を 最大検出率を
延べ検体数 延べ検出数 示した農薬(ppm) 示した農薬 %
コメ 60 48農薬:316 8農薬:31 イソプロチオラン0.34 フェリムゾン55.6
かんしょ 30 20農薬:88 0農薬:0 ー ー
かぶの根 60 24農薬:308 4農薬:14 ジノテフラン0.08 ジノテフラン41.7
かぶの葉 39 34農薬;230 16農薬:52 クロルフェナピル4.6 シアゾファミド71.4
チンゲンサイ 30 20農薬:81 12農薬:36 ジノテフラン2.7 ジノテフラン80
ほうれんそう 60 26農薬:165 10農薬:63 イミダクロプリド4.6 ジノテフラン81.8
かぼちゃ 30 28農薬:112 2農薬:3 ジノテフラン0.08 ジノテフラン66.7
未成熟とうもろこし
30 41農薬:117 0農薬:0 ー −
えだまめ 30 35農薬:152 9農薬:12 エトフェンプロックス2.3 エトフェンプロックス30.8
いちご 60 59農薬;743 20農薬:55 アセタミプリド1.0 プロシミドン55.6
りんご 60 49農薬;772 19農薬:132 キャプタン1.9 キャプタン81.4
★作物別ではチンゲンサイ、ほうれんそう、りんごでの残留が目立つ
表2に、農作物と農薬の組合せで、検出率が50%を超えるもの(分析検体が1のものを除く)を、検出範囲とともに示します。
検体数が多い作物の中で、検出率が高いのは、果実ではりんご、野菜ではチンゲンサイとほうれんそうで、前者では殺菌剤キャプタン、後者ではネオニコチノイド系殺虫剤ジノテフランとの組み合わせが目に付きます。
表2 検出率50%以上の作物と農薬の組み合わせ
作物名 農薬名 検体数 検出数 検出範囲 検出率
かぶの葉 チアメトキサム 2 2 0.02 ppm 100 %
チンゲンサイ チアメトキサム 3 3 0.04〜0.13 100
りんご ジノテフラン 9 8 0.01〜0.04 88.9
ほうれんそう ジノテフラン 11 9 0.01〜2.9 81.8
りんご キャプタン 59 48 0.01〜1.9 81.4
チンゲンサイ ジノテフラン 15 12 0.02〜2.7 80
ほうれんそう クロラントラニリプロール
14 11 0.04〜1.7 78.6
もも ジノテフラン 21 16 〜0.14 76.2
チンゲンサイ フルフェノクスロン 4 3 0.02〜0.28 75
かぶの葉 シアゾファミド 14 10 0.02〜0.31 71.4
ほうれんそう クロチアニジン 10 7 0.01〜0.27 70
かぶの葉 ジノテフラン 15 10 0.01〜1.9 66.7
かぼちゃ ジノテフラン 3 2 0.01〜0.08 66.7
りんご アクリナトリン 9 6 0.01〜0.03 66.7
ほうれんそう フルフェノクスロン23 14 0.04〜1.6 60.9
かぶの葉 クロルフェナピル 10 6 0.12〜4.6 60
チンゲンサイ クロランラニリプロール
5 3 0.03〜0.23 60
チンゲンサイ アセタミプリド 7 4 0.03〜0.16 57.1
チンゲンサイ シペルメトリン 7 4 0.12〜1.3 57.1
米穀 フェリムゾン 9 5 0.03〜0.18 55.6
いちご プロシミドン 9 5 0.03〜0.77 55.6
ほうれんそう イミダクロプリド 21 11 0.05〜4.6 52.4
米穀 イソプロチオラン 2 1 0.34 50
かぶの葉 クロチアニジン 2 1 0.01 50
チンゲンサイ イミダクロプリド 2 1 0.12 50
チンゲンサイ クロルフェナピル 4 2 0.13〜2.0 50
チンゲンサイ フルベンジアミド 2 1 0.11 50
えだまめ フルベンジアミド 2 1 0.51 50
えだまめ ペルメトリン 2 1 0.31 50
りんご トリフロキシストロビン
14 7 0.02〜0.03 50
もも イミダクロプリド 2 1 0.08 50
★農薬別では、ジノテフラン81検体で検出
表3には、農薬別に、検出作物の種類数と検出数、最大検出作物とその最大検出値を示しました。
検出された農薬の種類は56種で、延べ419検体に農薬が0.01〜4.6ppm(かぶの葉のクロルフェナピルとほうれんそうのイミダクロプリド)残留していました。
検出件数が多い農薬の順は、ネオニコチノイド系のジノテフラン81検体(うち、もも16、チンゲンサイ12)、ついで、キャプタン48(すべてりんご)、アセタミプリド28(りんご14)、クロラントラニリプロール20(ほうれんそう11)、シアゾファミド18(かぶの葉10)、フルフェノクスロン18(ほうれんそう14)、フルベンジアミド17(りんご13) と続きます。
最大検出値が高い作物で、1ppmを超えるのは、イミダクロプリド(ほうれんそう4.6ppm)、クロルフェナピル(かぶの葉4.6ppm)、ジノテフラン(ほうれんそう2.9ppm)、シアゾファミド(ほうれんそう2.4ppm)、エトフェンプロックス(えだまめ2.3ppm)、アゾキシストロビン(かぶの葉2.0ppm)、キャプタン(りんご1.9ppm)、クロラントラニリプロール(ほうれんそう1.7ppm)、シペルメトリン(チンゲンサイ1.3ppm)、トルフェンピラド(かぶの葉1.1ppm)、フルフェノクスロン(ほうれんそう1.6ppm)でした。しかし、今回の報告では、同一検体での複合残留の実態は不明です。
表3 農薬別の検出数と最大検出作物(数値は検出値ppm)
農薬名 検出作物の 最大検出作物と 農薬名 検出作物の 最大検出作物と
種類数と検出数 最大検出値 種類数と検出数 最大検出値
アクリナトリン 2種:10検体 いちご :0.30 ppm ピラクロストロビン 2種: 4検体 いちご :0.03 ppm
アセタミプリド 5種:28検体 いちご :1.0 ピリダリル 2種: 2検体 チンゲンサイ:0.25
アセフェート 1種: 1検体 かぶの葉 :0.01 ピリベンカルブ 1種: 1検体 いちご :0.04
アゾキシストロビン 3種: 8検体 かぶの葉 :2.0 フェニトロチオン 1種: 2検体 りんご :0.09
イソプロチオラン 1種: 1検体 米穀 :0.34 フェリムゾン 1種: 5検体 米穀 :0.18
イミシアホス 1種: 1検体 ほうれんそう:0.02 フェンピラザミン 1種: 1検体 いちご :0.12
イミダクロプリド 3種:13検体 ほうれんそう:4.6 フェンピロキシメート 2種: 4検体 えだまめ :0.08
エチプロール 1種: 1検体 えだまめ :0.01 フェンプロパトリン 1種: 1検体 りんご :0.04
エトフェンプロックス 2種: 5検体 えだまめ :2.3 フルジオキソニル 2種: 3検体 いちご :0.12
キャプタン 1種:48検体 りんご :1.9 フルチアニル 1種: 1検体 いちご :0.02
クレソキシムメチル 2種: 2検体 いちご :0.03 フルフェノクスロン 3種:18検体 ほうれんそう:1.6
クロチアニジン 5種;13検体 ほうれんそう:0.27 14検体で0.04〜1.6
クロラントラニリプロール フルベンジアミド 5種:17検体 えだまめ :0.51
4種:20検体 ほうれんそう:1.7 ほかに りんご13検体:0.01〜0.05
クロルフェナピル 3種: 9検体 かぶの葉 :4.6 プロシミドン 1種: 5検体 いちご :0.77
クロロタロニル 1種: 1検体 りんご :0.01 ブロモブチド 1種: 5検体 米穀 :0.05
シアゾファミド 3種:18検体 ほうれんそう:2.4 ヘキシチアゾクス 1種: 1検体 いちご :0.03
シエノピラフェン 1種: 6検体 いちご :0.27 ペルメトリン 1種: 1検体 えだまめ :0.31
ジノテフラン 8種:81検体 ほうれんそう:2.9 ペンシクロン 1種: 1検体 米穀 :0.01
ジフェノコナゾール 1種: 1検体 いちご :0.07 ペンチオピラド 1種: 6検体 いちご :0.18
シプロジニル 1種: 1検体 りんご :0.06 ボスカリド 2種:13検体 いちご :0.29
シペルメトリン 3種:11検体 チンゲンサイ:1.3 マラチオン 1種: 1検体 かぶの葉 :0.03
シラフルオフェン 1種: 1検体 米穀 :0.01 マンジプロパミド 1種: 1検体 ほうれんそう:0.32
スピノサド 2種: 2検体 かぶの葉 :0.06 ミクロブタニル 1種: 2検体 いちご :0.16
ダイアジノン 1種: 1検体 りんご :0.04 メソミル 1種: 1検体 かぶの葉 :0.082
チアクロプリド 3種: 7検体 いちご :0.27 メタミドホス 1種: 1検体 かぶの葉 :0.14
チアメトキサム 3種: 6検体 チンゲンサイ:0.13 ルフェヌロン 1種: 3検体 いちご :0.13
テブフェノジド 1種: 1検体 りんご :0.01
トリシクラゾール 1種: 1検体 米穀 :0.11
トリフロキシストロビン1種: 1検体 りんご :0.03
トルフェンピラド 2種:10検体 かぶの葉 :1.1
ノバルロン 1種: 2検体 いちご :0.16
作成:2021-02-28