残留農薬・食品汚染にもどる
n03603#東京都健康安全研究センターの2018年度農作物残留農薬調査報告(3)輸入農作物中の残留農薬 (その2)柑橘類とベリー類#21-03
【関連記事】記事n03503(2018年度輸入野菜など)、記事n02303(2017年度輸入柑橘、ベリー)
【参考サイト】東京都健康安全研究センター:研究年報の頁 70号(2019)
輸入農産物中の残留農薬実態調査 (平成30 年度)−果実類−
東京都健康安全研究センターが実施した2018年4月から19年3月にかけての輸入農作物(都内入手)の残留農薬調査結果を、センター年報70号から紹介します。今号は果実類の柑橘とベリー類についてです。
残留分析の対象となった輸入果実類は16種141検体で、分析農薬は代謝分解物を含め、殺虫剤164,殺菌剤69,除草剤61,植物成長促進剤2,共力剤ほか2、合計298成分でした。
★残留農薬検出率は60%
13種84作物から、殺虫剤,殺菌剤及び植物成長促進剤が、合わせ51成分が60%の検出率で、痕跡〜1.2 ppm見出されました。
表1には柑橘類の、表2には、イチゴとベリー類での。農薬残留状況を示しました。他の果実にいては次号の表3に掲載します。
複合残留状況について、今回の調査では、表に1検体で複数の農薬が記載されている以外、前年のように、複合残留状況が何件であるか明確にわかりませんでした。
★柑橘類〜ネオニコチノイド系殺虫剤やクロルピリホス残留が目立つ
柑橘類3種32検体のうち,農薬が検出された作物についての調査結果を表1に示しました。
3種24検体から、合わせて検出率75%で、殺虫剤14成分と殺菌剤6成分の20成分がTr(痕跡)〜270ppb検出されました。クロルピリホスの最大値はトルコ産グレープフルーツの270ppb、ついで、高かったのは、南アフリカ産オレンジのメトキシフェノジド200ppbです。
また,ネオニコチノイド系のアセタミプリドが2種2検体からTr、10ppb検出され,このうちチリ産レモンにおいては果肉からもTr検出されましたが、同じネオニコチ系のイミダクロプリドとチアメトキサムは、果実全体で検出されたものの、果肉からは検出限界以下でした。
殺菌剤では,アゾキシストロビンが南アフリカ産のオレンジ1検体(Trで、4成分複合残留)、ピラクロストロビンがアメリカ産と南アフリカ産グレープフルーツ計6検体から10〜70ppb検出されました。両成分ともに、2010年度より継続調査がされてますが,果実全体で検出されるものの果肉からの検出事例はありません。
今後とも、農薬成分の浸透移行性を配慮して、今後も使用状況や果肉への移行状況について注視していく必要があると、されています。
【オレンジ】三つの産出国のうち、検体数4がアメリカ産で、いずれもネオニコチノイド系が最大でTr検出され、ついで、2検体のオーストラリア産はクロチアニジン20ppbが一番高かったです。南アフリカ産の1検体は、4成分の複合残留で、メトキシフェノジド200ppbが目立ちました。
【グレープフルーツ】四つの産出国のうち、南アフリカ産が5検体で、7成分が検出され、ピラクロストロビンが100%の検出率で20-70ppb残留していました。トルコ産とオーストラリア産では、クロルピリホスがそれぞれ最大270ppb、170ppb見いだされたほか、複合残留も、アメリカ産やトルコ産、南アフリカ産などで認められました。
【レモン】アメリカ産とチリ産に合わせて6成分の残留が検出され、クロルピリホスが100ppb又は90ppbの検体もありました。
new 表1 柑橘類の分析結果 (検出値単位:ppb)
作物名 生産国 左 検出数 農薬名と 検出率
右 検体数 検出範囲 ppb %
オレンジ アメリカ 1 4 アセタミプリド: ND-Tr 25
1 4 イミダクロプリド:ND-Tr 25
1 4 チアメトキサム: ND-Tr 25
オレンジ オーストラリア 2 2 クロルピリホス: Tr-10 100
1 2 クロチアニジン: ND-20 50
1 2 ビリダベン: ND-10 50
オレンジ 南アフリカ 1 1 アゾキシストロビン: Tr
1 1 イミダクロプリド: 30
1 1 ピリプロキシフェン: Tr
1 1 メトキシフェノジド:200
グレープフルーツ アメリカ 1 3 イミダクロプリド:ND-Tr 33.3
1 3 クロルピリホス: ND-20 33.3
1 3 シフルトリン: ND-Tr 33.3
1 3 ピラクロストロビン:ND-10 33.3
1 3 フェンブコナゾール:ND-Tr 33.3
グレープフルーツ オーストラリア 1 2 イミダクロプリド:ND-70 50
2 2 クロルピリホス: 60-170 100
グレープフルーツ トルコ 1 2 エトキサゾール: ND-Tr 50
2 2 クロルピリホス:130-270 100
1 2 ピリダベン: ND-20 50
1 2 シペルメトリン: ND-60 50
1 2 ピリプロキシフェン:ND-20 50
1 2 ブプロフェジン: ND-100 50
グレープフルーツ 南アフリカ 2 5 DMTP : ND-10 40
1 5 クロルピリホス: ND-Tr 20
2 5 クロルフェナピル:ND-20 40
1 5 シペルメトリン: ND-80 20
5 5 ピラクロストロビン:20-70 100
1 5 ブプロフェジン: ND-Tr 20
1 5 メトキシフェノジド:ND-10 20
グレープフルーツ メキシコ 1 1 イソカルボホス: Tr 100
レモン アメリカ 2 3 クロルピリホス: ND-100 66.7
1 3 ピリプロキシフェン:ND-10 33.3
レモン チリ 1 3 アセタミプリド: ND-10 33.3
1 3 果肉のアセタミプリド:ND-Tr 33.3
3 3 クロルピリホス: 10-90 100
2 3 ピリダベン: ND-10 66.7
2 3 ピリメタニル: ND-Tr 66.7
1 3 ブプロフェジン: ND-Tr 33.3
★イチゴ、ベリー類〜複合残留や殺菌剤キャプタンにも要注意
3種19検体中、3種15検体に、合わせて、検出率79%で、殺虫剤10成分,殺菌剤14成分の農薬がTr(痕跡)〜1200ppb検出されました。最大値は、アメリカ産ブルーベリーのキャプタンです。
殺虫剤では、蜂群崩壊症候群の一因とされているネオニコチノイド系アセタミプリドがアメリカ産イチゴに、また、ブルーベリーではアメリカ産とカナダ産とチリ産に、イミダクロプリドほかが合わせて延べ数で8検体検出されました。同系殺虫剤は蜂群崩壊症候群の一因として挙げられており, 2018年5月には欧州委員会でクロチアニジン,イミダクロプリド,チアメトキサムの屋外での使用禁止が採択されていますが、日本では、いまだ、登録・使用がつづいており、欧州産以外の輸入作物にも、残留が確認されています。
また、複合残留については、アメリカ産イチゴには9成分の農薬が残留していたほか、ベリー類でも複合残留が多くみられ、10成分残留が2検体、9成分が3検体、7成分と6成分が2検体、5成分が1検体、3成分が1検体、2成分が3検体、1成分が1検体の検出でした。
研究者は、ベリー類は果皮を剥かずに生のまま喫食することが多く、残留農薬をそのまま摂取する可能性があるため,引き続き監視が必要である、としています。
【イチゴ】4つの産出国のうち、トルコ産の検体数が2、チリ、中国、アメリカ産は1でした。アメリカ産は9成分の複合残留で、合わせて270ppbを超えていました。
【ベリー類】ブルーベリーの産出国はカナダ、チリ、アメリカの合わせて10検体。カナダ産4検体では11成分(イプロジオン530ppb、ボスカリド470ppb、キャプタン340ppbほか)、チリ産2検体では7成分(ボスカリド250ppbほか)、アメリカ産4検体では17成分(キャプタン1200ppb、イプロジオン910ppbほか)が検出されました。検出率が100%だったものには、カナダ産でボスカリド/ビフェントリン/キャプタン/シプロジニル/フルジオキソニル、アメリカ産でキャプタン/シプロジニル/フルジオキソニルがありました。
ラズベリーはハンガリー産1検体で、2成分が複合残留していました。
new 表3 イチゴ・ベリー類の分析結果 (検出値単位:ppb)
作物名 生産国 左 検出数 農薬名と 検出率
右 検体数 検出範囲 ppb %
イチゴ チリ 1 1 アゾキシストロビン:Tr
1 1 イプロジオン: 40
イチゴ 中国 1 1 ピラクロストロビン:Tr
イチゴ トルコ 1 2 TPN: ND-20 50
1 2 ボスカリド: ND-Tr 50
イチゴ アメリカ 1 1 アセタミプリド: 30
1 1 キャプタン: 90
1 1 シプロジニル: 60
1 1 トリフルミゾール: 10
1 1 ピリメタニル: 50
1 1 フルジオキソニル: 10
1 1 フルトリアフォール:Tr
1 1 フロニカミド: 20
1 1 ミクロブタニル: Tr
ブルーベリー カナダ 1 4 イプロジオン: ND-530 25
2 4 イミダクロプリド:ND-10 50
4 4 キャプタン: 30-340 100
4 4 シプロジニル: Tr-90 100
1 4 シペルメトリン: ND-40 25
4 4 ビフェントリン:Tr-310 100
1 4 ピリメタニル: ND-30 25
1 4 フェンプロパトリン:ND-10 25
4 4 フルジオキソニル:Tr-20 100
4 4 ボスカリド: 20-470 100
2 4 マラチオン: ND-30 50
ブルーベリー チリ 1 2 アゾキシストロビン:ND-70 50
1 2 イミダクロプリド:ND-10 50
2 2 シプロジニル: 10-90 100
1 2 ピラクロストロビン:ND-20 50
1 2 フェンブコナゾール:ND-Tr 50
2 2 フルジオキソニル:10-20 100
1 2 ボスカリド: ND- 250 50
ブルーベリー アメリカ 3 4 アゾキシストロビン:ND-140 75
4 4 キャプタン: Tr-1200 100
1 4 イプロジオン ND-910 25
1 4 クロチアニジン: ND-10 25
4 4 シプロジニル: 30-110 100
1 4 シペルメトリン: ND-30 25
3 4 チアメトキサム: ND-Tr 75
2 4 ビフェントリン:ND-180 50
1 4 ピラクロストロビン:ND-Tr 25
1 4 ピリメタニル:: ND-10 25
1 4 フェンブコナゾール:ND-Tr 25
4 4 フルジオキソニル:40-60 100
3 4 ボスカリド: ND-230 75
1 4 ホルペット: ND-Tr 25
1 4 マラオキソン: ND-Tr 25
3 4 マラチオン: ND-50 75
2 4 メソミル: ND-10 50
ラズベリー ハンガリー 1 1 シプロジニル: 10
1 1 フルジオキソニル: Tr
作成:2021-03-30