農薬の毒性・健康被害にもどる

n03604#鳥インフルエンザ対策の殺そ剤〜宮崎県ではブロマジオロン剤ラニラット配布#21-03
【関連記事】n03204号記事n03504
【関連サイト】鳥インフルエンザ関連の行政情報:農水省(Q&Aほか)、環境省(現在の対応レベルほか)、
                               厚労省(Q&Aほか)、   農研機構、   食品安全委員会
                      メーカー情報:大塚薬品殺そ剤について、  テクノ社ラニラットF、  協栄産業ラニラットF

 コロナ禍で、人には、塩素系化学物質やイオン化装置、フィルターによる細菌や真菌、ウイルス効果をうたう空気清浄機の宣伝が目立ちますが、野鳥や家畜としてのニワトリやアヒルなどでは、高病原性鳥ウイルスの感染で死亡するケースが見られます。鳥同士の接触やウイルス汚染されたふんが原因で、ヒトが汚染土を持ち込むことはもちろん、野生動物の侵入で、鳥インフルエンザが、ひろがっていきます(記事n03204.)。低病原性鳥インフルの場合は、感染した鳥は、症状が出ない場合もあれば、咳や粗い呼吸などの軽い呼吸器症状が出たり産卵率が下がったりする場合もあるようです。また、ヒトについては、家きんやその排泄物、死体、臓器などに濃厚な接触があった場合の感染が知られており、ヒトからヒトに感染するのはきわめて稀れとされています。

★野鳥の検査で陽性が18道県58件、家禽の被害発生は18道県52件
 環境省は、野鳥における高病原性鳥インフルエンザに係る対応技術マニュアル(全体版pdfファイルはこちら)を策定し、野鳥生息状況等調査、死亡野鳥等調査、糞便採取調査等の実施により、ウイルス検査をするとともに、ネズミ類等の媒介による二次感染防止も図られています。同省の発生状況の一覧表によると、2020年10月24日から21年3月19日までの死亡野鳥、糞便や水など環境試料の確定検査で陽性の確認件数は、18道県58件となっており、その内訳は、下表のようでした。地域別は、鹿児島県が26件と半数近くを占め、ついで、宮崎県5件、栃木と新潟が4件、北海道と鳥取県の3件とつづきます。
 なお、当グループでは、行政からの通知や報告の頁に、農水省と環境省からの鳥インフル関連情報をまとめています。
 検査対象 検査件数  検査結果              
 死亡野鳥  38    陽性:28、陰性:9、未定:1
 衰弱野鳥   3     陽性: 3、陰性:0、未定:0
 野鳥糞便   8    陽性: 8、陰性:0、未定:0
 環境試料   19    陽性:19、陰性:0、未定:0
  合 計   58     陽性:48、陰性:9、未定:1
 死亡が確認された場合、まず、行政は鳥インフルら感染症の検査を行い、陰性であれば、農薬等の毒物や食中毒などを疑います。また、明らかに他の原因による場合を除き、原則として回収地点の周囲の土(目安は半径 1m)を消石灰で消毒され、さらに調査と対策が進められることになります。家禽の飼育場所に、ヒトが立ち入って、土などについたウイルスを移行させたり、野ネズミの侵入でウイルスが広がらないよう注意が必要なことは、いうまでもありません。
 鶏などの家禽での発生件数は、2020年度18道県で52件あり、多かったのは、宮崎、千葉、香川の順でした。
 畜舎での密飼いの鶏などは、鶏舎にウイルスを持ち込まれ、被害が拡大しないよう、野鳥や野鼠のウイルス検査や侵入防止策が主要な対策となっていますが、小規模の集団が死亡した段階で、数千から数万の単位の殺処分することが、近隣の養鶏場に波及さないための主要な対策となっているのが現実です。

★宮崎県での対策〜殺そ剤も配布
【参考サイト】宮崎県:高病原性鳥インフルエンザ発生状況について(3/20現在)
           高病原性鳥インフルエンザの発生を防止しましょう!(消石灰消毒啓発チラシねずみ駆除啓発チラシ)

 殺そ剤の縦割り行政下での法規制は、植物栽培や収穫作物の被害防止目的では農薬取締法による農薬登録が必要ですが、同じ成分でも、家畜など動物被害防止目的では、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の承認が求められ、動物用は農水省の所管になっています。
 ちなみに、農薬登録のある殺そ剤は野ネズミに、薬機法での殺そ剤はイエネズミ駆除にと、ここでも、法は縦割りとなっており、北海道などでは、林業用にリン化亜鉛系殺そ剤が空中散布されますし、ネズミ駆除に使用した殺虫剤混入餌を野鳥がたべて被害を受けた例もあります。さらには、殺そ剤で死んだ動物を野鳥や他の動物が捕食し二次被害がでることもあり、安易な殺そ剤の環境へのバラマキは危険だと認識せねばなりません。

 養鶏ナンバーワンの宮崎県では、昨年11月30日から今年の2月24日にかけて、12件の鳥インフル被害が発生しています(都城市3.宮崎市2、小林市2 日向市2、新富町2など)。
 県は、『我が国ではこれまで家きん肉、家きん卵を食べることにより、人に感染した例は報告されていません』としたものの、発生農場から半径10km以内を搬出制限区域としたり、当該区域に消毒ポイントを設けたりしました。また、ヒトや車両、野鳥の糞便でウイルス持ち込まれることへの対策として、鶏舎周囲と農場境界へ消石灰等を2m幅で散布する。さらに、多くの発生鶏舎で3センチほどの隙間が確認され、そこからネズミなど小動物が侵入した形跡が確認されるため、畜舎内外の整理整頓/侵入入り口をふさぐ/殺そ剤を設置するようにしました。

【殺そ剤ラニラット】
 宮崎県は、3月から、県内養鶏場(100羽以上飼育する個所が925あるそうです)に配布した殺そ剤はラニラット5kg入りの大袋です。
   この殺そ剤は、ブロマジオロンを0.005%含有する粉剤(同系の製剤については下段参照)で、農薬登録はされておらず、畜・鶏舎内及び周辺のネズミの駆除に用いる動物用医薬部外品として、第二世代のクマリン系で、従来のワルファリン抵抗性ネズミにも効果を示すと宣伝されています。同県では、はじめての使用で、果たして、殺そ剤によるネズミ駆除が鳥インフルの抑制にどの程度効果があるのか不明のままの見切り発車は懸念材料となります。

 なお、動物用医薬品等データベースによると、ラニラットは、フマキラー社の製造で、1993年に医薬部外品として承認されており、以下の記載があります。
 <効能効果>	畜・鶏舎内及び周辺のネズミの駆除
 <用法用量>	畜・鶏舎内及びその周辺のネズミの出入りする物陰などに、トレイ等にのせ
        約10〜30gを置く。喫食により無くなったら補給し、喫食しなくなるまで続ける。
 <使用上の注意>
  1.守らなければならないこと
  【一般的注意】
   ・本剤は効能効果において定められた目的にのみ使用すること。
   ・本剤は定められた用法および用量を厳守すること。
   ・本剤設置後は放置せず、数日経過後も喫食が認められない場合は別の場所に移動すること。

  【使用者に対する注意】
   ・アレルギー症状やかぶれ等を起こしやすい体質の人は、薬剤に触れないようにすること。
   ・使用時には必ず手袋を着用し、使用後は石けんで手を洗うこと。
   ・なるべく身体の露出部を少なくして、薬剤を浴びないようにするとともに、できるだけ
     吸い込まないように注意すること。

  【取り扱いおよび廃棄のための注意】
   ・家畜・家禽が直接または間接的に摂取できる所に使用しないこと。
   ・家畜・家禽の飼料、飼料箱、飲水、飲水器等に薬剤を直接散布または混入しないようにすること。
   ・飲食物、食器、観賞魚・小鳥等のペット類、飼料等にかからないようにすること。
   ・開封後はなるべく早く使いきること。
   ・食品、食器、飼料等と区別し、小児の手の届かない所に保管すること。
   ・使用後、残った薬剤は必ず保管場所に戻し、容器は封をしておくこと。
   ・薬または容器等を廃棄する場合は、地方公共団体条例等に従い処分すること。

  2.使用に際して気を付けること
  【使用者に対する注意】
   ・皮膚に付いた時は、石けんと水でよく洗うこと。万一、眼に入った場合はすぐに水またはぬるま湯で洗うこと。
   ・万一、使用者が誤食した場合は、直ちに吐き出させ医師の診療を受けること。
   ・万一、身体に異常が起きた場合は、直ちに本品がクマリン系殺鼠剤であることを医師に告げて診療を受けること。

  【対象動物に関する注意】
   ・万一、家畜またはペットが誤食した場合は、獣医師の診療を受けること。

  【取り扱い上の注意】
  ・解毒剤としては、ビタミンK1およびビタミンK2が有効であることが知られている。


   **** ブロマジオロン系殺そ剤 (出典;
動物用医薬品db)**** ★品名 エンドキラー  プロマジオロン 0.005g/100g   承認年月日 1998/12/18   承認区分 部外品   承継年月日   届出年月日 2010/03/26   再審査結果通知日   製造販売業者 フジタ製薬株式会社   用法用量  畜・鶏舎内及びその周辺のネズミの出入りを物陰などに、トレイ等にのせ          約10〜30gを置く。喫食により無くなったら補給し、喫食しなくなるまで続ける ★品名 エンドキラーP ブロマジオロン 0.005g/100g   承認年月日 2002/03/04   承認区分 部外品   承継年月日   届出年月日 2011/03/26   再審査結果通知日   製造販売業者 フジタ製薬株式会社   用法用量 畜・鶏舎及びその周辺のネズミの出入りする物陰などに、トレイ等にのせ         約10〜30gを置く。喫食により無くなったら補給し、喫食しなくなるまで続ける。 ★品名 ブロマラット  ブロマジオロン 0.005g/100g   承認年月日 1:1997/12/19 2:1998/08/07   承認区分 部外品   承継年月日   届出年月日   再審査結果通知日   製造販売業者 フジタ製薬株式会社   用法用量 畜・鶏舎及びその周辺のねずみの出入りを物陰などに、トレイ等にのせ         約10〜30g を置く。喫食により無くなったら補給し、喫食しなくなるまで続ける。 ★品名 ブロマラットP  ブロマジオロン 0.005g   認年月日 2002/03/11   承認区分 部外品   承継年月日   届出年月日 2010/03/26   再審査結果通知日      製造販売業者 フジタ製薬株式会社   用法用量 畜・鶏舎及びその周辺のネズミの出入りする物陰などに、トレイ等にのせ         約10〜30gを置く。喫食により無くなったら補給し、喫食しなくなるまで続ける。

作成:2021-03-31