行政・業界の動きにもどる
t00104#農薬に関する総務庁行政監察#91-05
−−「動物用医薬品等に関する行政監察結果」と「勧告」−−
 今年の1月に総務庁行政監察局が「動物用医薬品等に関する行政監察結果報告書」と「勧告」をだしました。農薬や飼料に含まれる抗生物質などの安全性に関するものです。
 行政監察というのは昭和58年にできた「総務庁設置法」という法律に基づいて行われます。簡単にまとめれば、総務庁の長官は、各行政機関の長に対し、所掌に関する必要な資料の提出及び説明を求めること、実地調査を行うこと、随時、所掌事務に関し意見を述べることができる。調査を受けるものはその調査を拒んではならない。監察の結果、当該行政機関の長に対し、その勧告に基づいて執った措置について報告を求めることができる。などとあります。
 つまり、行政が法律に基づいてちゃんと行われているかどうかをチェックする役割を果たすものと思われます。この法律に基づいて行政監察局が設けられ、各地にその出先機関があるわけです。行政監察には全国ベースで行う計画監察と、地方レベルの問題を取り上げた地方監察があるそうです。
 今まで農薬に関しては、空中散布についていくつかの地方ベースの行政監察で行われたことがありますが、今回の「動物・・」の勧告は全国ベースの調査結果に基づいて行われています。対象は農水省、厚生省ですが、両省とも資料提出を拒否できないため、私たちが聞いても出てこない資料もいくつかあり、なかなか興味深いものがあります。
 目次は以下のようになっています。
1、監察の目的等
2、制度等の概要
3、監察結果
 @国内産農畜産物の安全性確保
 A輸入農水産物の安全性確保
 B消費段階における農水産物の安全性  確保  
4、その他
 @ゴルフ場における農薬の適正使用の  確保
  A事務処理の迅速化・適正化等
 このうち、3の@を中心に内容を紹介したいと思います。
 まず農薬の使用状況について総務庁が独自に行った調査(8都道府県69農家)をみると、安全使用基準等定められた使用禁止期間を守らずに農薬散布を行っていた農家が3戸、定められた希釈濃度より濃い濃度で散布していた農家1戸、そもそも安全使用基準を知らなかった農家1戸と計7%の農家が基準を知らないか守っていませんでした。
 この調査は農家が自主的に述べたことを聞いたものです。すべて使用基準どおりに使用していると答えた農家が43%、使用基準を守るように努めているので使用基準どおりのはずであると答えた農家が49%となっています。
 また、食糧事務所が農産物安全対策業務として農薬の使用状況を調査していますが、62年度の調査結果では、総農薬使用回数2014回中、463回(23%)が使用時期を誤っているか、使用回数を誤って使用していました。63年度の調査では総農薬使用回数2804回のうち318回に適用作物以外の作物に使用していたということです。
 しかしこの調査は結果が通知されないことなど多く、十分に活用されていないこともわかりました。そのため、行政監察局は農水省に次のように勧告しています。
「農薬安全使用基準及び登録の際に定められた使用方法等を農家等に遵守させるよう都道府県を指導すること。
 また、地方農政局に対して、現在食糧事務所が実施している農薬の使用状況、農薬安全使用基準等の遵守状況に関する巡回点検結果については、都道府県への通知の徹底、不適正な農薬使用の内容の明示、指導すべき内容の一層の明確化などを行い、同点検結果が都道府県において有効に活用されるよう指導すること。 農作物の安全性確保対策の充実を図るため、生産段階における農業協同組合等の自主的な農薬残留検査の実施を推奨すること」
 農薬推進派は日本の農薬は安全使用基準があるから安全だと述べてきましたがやはり守られていないことが数字で明らかになったわけです。最低、行政監察局の勧告くらいは守ってほしいものです。 また、厚生省が定めている食品残留農薬基準に関しては、昭和53年以降新たに106件の農薬が登録されているにもかかわらず、同基準は昭和53年以来改正されていない。この結果、残留基準が設定されている農薬の国内出荷量が全農薬の国内出荷量に占める割合は昭和53年度には13.1%だったものが、昭和63年度は10.9%に低下してきていると指摘しています。農薬の1割にしか基準が決まっていないということになります。(登録保留基準は強制力がない)
 基準の決まっていない農薬の残留が多いことは都道府県の衛生研究所などの調査で明らかです。行政監察局は厚生省に対して次のように勧告しています。
「既に残留実態調査が終了した農薬については早急に食品残留農薬基準を設定すること。また、平成2年度から年次計画によって実施することとしている実態調査を含め、今後の実態調査の実施に当たっては、従来の選定基準に加えて、収穫量の増加した農産物、農薬、都道府県・保健所設置市の食品衛生検査の結果農薬の残留が認められた農産物・農薬を対象に追加するなど実態調査の充実を図るとともに、単年度に実施する調査対象農薬数の増加に努める等により食品農薬残留基準設定の早期化を図ること。」
 従来私たちが主張してきたことが多く取り入れられていますが、基準を決めればいいというものでもありません。私たちはどうやったら農薬使用を減らしていけるかを考えていくべきだと思います。(辻 万千子)
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作成:1998-04-01