食品汚染・残留農薬にもどる
t00304#バナナの農薬残留基準にみる厚生省の無責任体質:アルディカーブ汚染#91-09
7月14日付けの毎日新聞にバナナの残留農薬問題がでているのに気付いた方は多いと思う。アメリカでバナナから異常に高い濃度のアルディカーブ(商品名テミク)が検出されたため、保健当局者が輸入業者にすべての輸入バナナの残留農薬検査をするよう義務付けたというものである。
アルディカーブは日本では登録されていないが、土壌中の線虫を殺すために使われる殺線虫剤である。急性毒性が非常に強く、85年にスイカに残留してカリフォルニア州を中心に大規模な中毒事件を起こしている。このとき、汚染されたスイカを食べて数千人が下痢、嘔吐などの中毒症状を訴え、6人が死亡したと言われている。
今回のバナナへの残留はサンプルの50検体中29検体が基準の0.3ppmをオーバーし、中には3ppmという高濃度の残留もあったという。
EPAは6月上旬に全米の州保健当局、連邦政府の関連機関、食品産業に電話で協議を呼びかけ、バナナ監視プログラムが決まったという。このような措置が取られたのは、89年にリンゴジュースに残留していたダミノジッド(商品名アラー)が大問題になり、消費者がリンゴやリンゴジュースを買わなくなったり、残留農薬基準の改正を求める運動が大きくなったりしたため、その再現を怖れて早めに手をうったものと言われている。
日本ではこのような問題がおきなかったためか、厚生省は毎日新聞の取材にたいして「残留農薬が出たらすぐ動く、では我々の仕事がパンクする。具体的な被害がないと調べられない」とコメントしている。アルディカーブで数千人が急性中毒にならないと残留農薬の調査もしないということらしい。
しかし、それにしては厚生省は、89年のチリ産ブドウに青酸化合物が混入されたとする事件では、直ちに輸入を禁止し、国内での販売を中止させ、消費者に対してチリ産ブドウを食べないように呼びかけるという措置をとっている。チリ産ブドウに毒物を混入したという電話があったためアメリカで検査したところ、2粒のブドウから微量の青酸化合物が検出されたためという。厚生省はチリ産ブドウを積んだ船を調査もしないで直ちに輸入業者に対してチリに積み戻すよう指示し、さらに、市中に流通しているブドウは焼却するよう指導したという。(89年3月15日付け朝日新聞)
これだけの措置が取れる体制があるのなら、何故、具体的な被害がでるまでは動けないなどというのであろうか。理解に苦しむ。アルディカーブは青酸と比べて安全だとでもいうのだろうか。
ところで、毎日新聞の記事が出た後、厚生省はあわてて日本青果物輸入安全協議会に中南米産バナナの残留農薬検査を強化するよう通知したという。マスコミが書かなければ知らん顔するという根性が汚い。
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作成:1998-04-01