食品汚染・残留農薬にもどる
1001#イマザリル食品添加物指定にみる厚生省のご都合主義と無責任#92-11
 9月29日、厚生省食品化学課は、「食品添加物の指定及び削除に係る食品衛生調査会への諮問について」という文書を発表し、柑橘類の防カビ剤であるイマザリルを食品添加物としても取り扱うことにしたので、食品添加物として指定しても差し支えないかどうかを食品衛生調査会に諮問するとした。
 イマザリルは以前からアメリカ産のレモンなどから検出され、指定外食品添加物の使用であり、食品衛生法違反であるから、取り締まるようにと消費者団体などが指摘してきたものである。それを長い間無視してきた厚生省が、突如、イマザリルは食品添加物であるとしたのは、イマザリルのメーカーであるヤンセン社からの要請があったからとのことである。国内での意見は一切無視しておきながら、外国の企業から要請があれば直ちに応ずるという厚生省の姿勢に関しては、言うべき言葉も見つからない。
 10月15日、食品衛生調査会合同部会は、「イマザリルを食品添加物として指定して差し支えない、その使用基準はみかんを除く柑橘類に1kgにつき0.0050gを超えて残存しないように使用しなければならない。バナナは1kgにつき0.0020gを超えて残存しないようにしなければならない」と厚生省の要求通りに決めた。
 これは10月29日の食品衛生調査会常任委員会で正式に答申され、11月には告示するというのが厚生省の予定である。諮問から1ヶ月の告示とはあまりのでたらめさにただあきれるばかりである。一刻も早く指定して、指定外食品添加物使用の違反をなくさせるためと思われる。
 このように簡単に食品添加物を増やすのは、厚生省が国民の健康を守る使命を放棄し、ひたすら外国からの食品の輸入をよりスムーズにするために努力しているものことを如実に現している。
 厚生省はレモンなどの輸入柑橘類からイマザリルが検出されているのがわかっていても、口を拭って知らぬ顔をし続けてきた。同じ柑橘類の防かび剤のOPPやTBZに関しては、食品添加物として指定される前は、指定外食品添加物の使用ということで、アメリカからの輸入レモンの廃棄処分を命じていた。その後、アメリカからの圧力で消費者の反対を押し切って食品添加物に指定し、現在に至っている。
 イマザリルは主にTBZの代替として使用されているので、当然指定外食品添加物の使用ということで、輸入禁止にすべきものである。しかし、厚生省はイマザリルは農薬であるとして、残留農薬基準案を出してきた。それがまだ食品衛生調査会の答申が出される前に、今度は食品添加物であるとしてきた。そして、強引にも残留基準はそのまま残すと言っている。同じ農薬が食品添加物になったり、残留農薬になったりするわけだ。
 厚生省は、残留農薬と食品添加物との違いは、散布するのが収穫前か収穫後かによるとしている。枝になっているレモンにイマザリルを散布すると、これは残留農薬であり、枝からもいだレモンに散布すると食品添加物になるという。レモンにイマザリルが残留していたとして、どうやって食品添加物か残留農薬か判断するかというと、業者に聞くのだそうだ。もし収穫後に使用されたものなら、まだイマザリルが食品添加物に指定されてない段階では食品衛生法違反となる。しかし、これを業者に聞いて判断するとなると、違反は一件もでるはずがない。どっちにしろ消費者はイマザリル付きのレモンを食べなければならない。
 また、おかしいのは食品添加物と残留基準が同じ値であるということである。収穫前に使用したのと、収穫後に使用したものがまったく同じ基準だとは納得しがたい。また、イマザリルの残留基準にはジャガイモに5ppmという基準がある。これは収穫後に使用するものとしての柑橘類の食品添加物の基準と同じである。バナナの2ppmよりも高い。ジャガイモの収穫前にどのようにイマザリルを使用するのだろうか。信じられない話である。 いったい、どういう根拠で厚生省はイマザリルを食品添加物としたのか、10月9日に「市民と政府の土曜協議会」の議員へのヒアリングがあったので参加して聞いてみた。厚生省からは食品化学課の牧野課長、村上担当、食品保健課の宮本担当が出席した。
 牧野課長は「調査の結果、イマザリルは食品の保存のために使用することがわかったから食品添加物とする。」と説明。では、他のポストハーベスト農薬はなぜ食品添加物に指定しないのかという質問には「ポストハーベストすべてが食品添加物とは考えない。殺虫剤は昔から農薬となっている。これは保存が目的ではなくて、殺虫が目的だからである。保存とは殺菌を目的として収穫後に使われるものを指す。」と説明。
質問「虫を殺して穀物を保存しようとするのは保存の目的ではないか」 厚生省 「いや、保存とは腐らないようにするものです。昭和22年に食品衛生法ができた当時は、保存の目的とは腐敗を防ぐものでした。殺虫剤は腐敗を防ぐものではない。だから殺菌剤しか食品添加物にはならない」
厚生省 「収穫後の農産物は食品になる。たとえば、レモンが木になっているときは農産物で、それをもぎとれば食品になり、その食品に保存のために添加するのが食品添加物だ」
質問「じゃあ、2,4−Dも食品添加物ではないか」
厚生省「あれは殺菌剤ではなくて、ホルモン剤でレモンのヘタが落ちるのを防止するために使われるから食品添加物ではない。」
質問「ホルモン剤は食品に使ってはいけないことになっているではないか」
厚生省「・・・」
質問「殺虫剤は食品添加物にはならないというが、食品添加物の中にピペロニルブトキシドという殺虫剤があるのはなぜか」
厚生省「あれは加工段階で使用しているので食品添加物となる」
質問「加工段階?」
厚生省「あれは加工のために製粉工場で使われるものですから、製粉工場内で防虫するのは食品添加物になります」
質問「加工とは何だ。たとえば、籾を玄米にするのは加工か」
厚生省「・・・」
質問「玄米を白米にするのは加工か」
厚生省「・・・」
 いろいろ問い正してようやくわかった厚生省の見解は、食品添加物とは収穫後に使われる殺菌剤だということらしい。従って、ホルモン剤としてポストハーベスト使用される2,4,−Dは食品添加物にはならない。また、ポストハーベスト農薬の殺虫剤も食品添加物として指定されているものもあるが、それは加工段階で使用されているから問題ではないということらしい。しかし、加工の概念もはっきりしていないし、食品添加物が殺菌剤だけだというのも納得できるものではない。
 結果として、厚生省はつじつま合わせに熱中して、肝心の国民の健康のことなど何も考えていないことがまたも明らかになっただけである。
 こんないいかげんな論拠でイマザリルは食品添加物に指定され、なお、残留農薬としても高い基準で決められようとしている。イマザリルを収穫前に使用している実態があるのか、この辺は厚生省もはっきりしていない。これを曖昧にしたままで、非常に緩い基準のみが決められていく。消費者の利益は一切考慮されていない。
 消費者団体を中心に作られている「新農薬基準の取り消しを求めよう会」は、取り消しを求めて裁判を起こすことにしているが、11月27日に東京地裁に訴状を提出することになっている。訴状ではポストハーベスト農薬の禁止やイマザリルの食品添加物指定の取り消しを求めていくことになっている。

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作成:1998-04-01