食品汚染・残留農薬にもどる
t02005#「乳幼児及び子供の食べ物中の農薬」の提起する問題点(1)#93-12
 当グループでは、「てんとう虫情報」16号16頁でふれたNRC(全米研究会議)発刊の報告書「乳幼児及び子供の食べ物中の農薬」を入手しました。8章386頁にわたる同書が提起している問題点を、連載のかたちで、いくつか紹介していきたいと思います。−中略− (1)子供は小型の大人ではない−農薬の毒性評価について
 農薬の人体に対する影響を考える場合、子供と大人は本質的にちがうという認識をもたねばならないとNRCレポートは指摘しています。
 子供は、成長(個々の細胞、組織、器官や体のシステムの総合的な増加−重量増や大きさの増大でしめされる)と発育(種々の細胞、組織、器官、器官のシステムや全体としての組織体の機能的成熟)の途上にあり、水分、脂肪、蛋白質、鉱物質の比率で示される体の組成、器官の解剖学的構造、そして筋肉や骨、硬質器官、脳の相対的比率、さらには、生化学的及び生理学的機能も大人と異なるからです。したがって、農薬のような異種の 生理物質の影響の受け方も当然、子供と大人では異なってきます。特に、神経系、免疫系、生殖系や発癌などへの影響が問題となります。発育の初期に受けた農薬などによる器質的変化のせいで、ずっと後まで、影響が残ることも考えられますし、生理物質の吸収、代謝、解毒、排泄などの速さや質が年齢によって違うことも考慮せねばなりません。
 物質によって、子供は大人より影響を受けやすかったり、逆に受けにくかったりすることもあり、いちがいに毒性を評価することはできません。
 通常、物質の毒性を評価する場合、動物に対する毒性実験の結果からヒトに対する毒性を推定するのですが、アメリカの場合、多くの動物実験は、成熟した動物を使用し、発育途上にある幼齢のものは使いません。日本の場合も同様です。農水省は表−略−に示したような動物を毒性試験に用いるよう指針を発表しており、成獣を用いる実験が大部分です。成熟した動物に対する実験結果から、幼齢の動物への影響を類推するのが、むずかしい上、マウスやラットにおける週単位の成長発育がヒトでは数年単位でおこるのですから、実験動物からヒトの子供の場合を正確に推定するのに、一層の困難を生じます。
 NRCレポートは、成長発育期での毒性をただしく評価する必要性を訴えるとともに、通常の毒性評価で、実験により求めた動物に対してなんら影響がみられないレベルから、子供に対する影響を推定する際に、前記レベルに乗ずる係数を、動物とヒトとの種差を考慮して10分の一、さらにヒトの個体差を考慮して10分の一とするだけでなく、場合によっては、成長発育に関連する不確定因子として、さらに10分の一を乗ずる必要があ ると述べています。

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作成:1998-04-01