食品汚染・残留農薬にもどる
t02104#「乳幼児及び子供の食べ物中の農薬」の提起する問題点(2)#94-01
(2)子供と大人の食生活習慣の相違
子供・乳幼児が食品からどの程度の農薬を摂取しているかを推定する場合、彼らがどのような食べ物をどの程度食べ、その食べ物にどれだけの農薬が残留しているかを知らなければなりません。しかし、子供と大人では、食生活のパターンが異なるということを忘れ、全国的な平均食物摂取量のみを調べ、農薬摂取量を推定していては、子供に対する正確な農薬の影響の評価がなされないとNRCレポートは指摘しています。年齢別の食物種類別摂取量をより詳細に調査する必要があるというわけです(季節的、地域的、人種的など様々な因子が配慮されねばならない)。参考までに、NRCレポートと同時期に出された環境ワーキンググループの報告から、アメリカの1才児の食べる食品が全米平均のそれとどの程度違うかを示す表−略−をのせておきます。
表 1才児の主に食べる食品リスト−略−
(イ)水分摂取と残留農薬
NRCレポートでは、国立ガン研究所が行なった年齢別水分摂取量調査を例にあげています(表−略−参照)。食品中の水分を含む全水分摂取量と水道水(調理に使うものも含む)摂取量の平均値を体重あたりに換算した数値も表に示してあります。体重あたりの水分及び水道水摂取量は、赤ちゃんが最も高く、前者で大人の6倍、後者で3倍近くの値になっています。
この表をみると、赤ちゃんの主食である母乳やベビーフード、牛乳、子供が好んで飲むジュース、それに水道水に含まれる農薬については、重大な関心をよせざるをえません。
日本では、水田で農薬が多用される5月から9月にかけて、水系の汚染濃度が高まることが知られており、この時期には、水道水中に検出される農薬濃度も高くなります。人工乳の希釈に、現在汚染が問題となっているCNP入りの水道水を1日1リットル用いたとすると、体重50kgの大人と体重4kgの赤ちゃんは同じ量のCNPを摂取することになり、赤ちゃんは体重当たり大人の10倍以上のCNPをとりこむことになるのです。子供の農薬に対する影響を体重比のみで、評価することはできませんが、前号でのべたように、機能的に未熟な子供により高い負荷がかかることを考えれば、このような水道水の農薬汚染を見逃すわけにはいきません。
表 年齢別平均水分摂取量(1989年 Ershowほかによる調査)−略−
(ロ)子供の多く食べる食品の残留農薬分析が必要
FDA(食品医薬品局)は、授乳中及び非授乳期の1才以下の乳幼児が多く食べる食品として、牛乳(非脂肪系固形物)、牛乳(脂肪系固形物)、牛肉(赤身)、リンゴジュース、リンゴ、オレンジジュース、洋ナシ、モモ、バナナ、乳糖、ニンジン、エンドウマメ、ソラマメ、大豆オイル、ココナッツオイル、オート麦、小麦粉、コメ粉の18の食品を挙げていますが、これらの中で残留農薬分析のためよく調査されているのは4種の食品にすぎないと、NRCレポートは指摘しています。
残留農薬の調査に際しては、子供たちの食生活の実態にみあったサンプル収集が必要なことはいうまでもありません。
日本でも、子供たちを対象とした残留農薬摂取の調査を早急にする必要があると思います。
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作成:1998-04-01