環境汚染にもどる
t02203#農薬による環境汚染−「化学物質と環境」より#94-02
環境庁は74年から毎年、いくつかの化学物質を選び、その環境汚染状況を調査し、「化学物質と環境」と題する本(表紙が黒色であることから、俗にクロホンと呼ばれています)にまとめて報告しています。 昨年12月その1993年版が発行されましたが、ここでは、92年度に調査された物質のうち、農薬12種の分析結果がどうなっていたかを見てみたいと思います。
注意すべきは、分析試料の採取についてです。この調査は原則として環境への蓄積性の高い物質についてその汚染状況を知ることを目的としており、採取時期はわずかの例外を除き原則として9月から11月となっています。また、採取地点について、最も検体数の多いベンチオカーブの場合、45個所で、その内訳は海・港湾24、内陸河川・湖沼12、河川の河口:9となっています。
農薬の場合、最も多く使用される時期は春から夏にかけてであり、その環境汚染値も散布直後が高くなることが知られています。また、散布地から離れた海や港湾で農薬が検出されることが少ないのも当然と考えられます。
従って、今回の調査結果で検出率が低いので、安心だとはとてもいえません。例えば、発癌性農薬として問題の除草剤CNPが水系に検出されるの5月から8月で、秋以降は検出限界以下となる場合が多いのです。要するに、「クロホン」は、農薬の環境汚染の全体像ではなく、ごく一部しかその実態を示していないということを念頭において、以下のデータをみてください。
表、 農薬の環境汚染状況 −略−
最も汚染状況がひどかったのは水稲のイモチ病防除に使われる殺菌剤イソプロチオラン(商品名フジワン)で、水質の33%に検出され、底質、魚類にも見出だされています。 採取地点と検出値については、図と表−略−に示しました。水質の最高値は、大阪大和川河口で0.27ppb見出だされ、諏訪湖や名古屋港、衣浦港でも高い値が検出されました。報告書では、イソプロチオランは水質要監視項目に指定されており、その指定値は40ppb(根拠は全く不明)であることから、今後とも同剤の汚染状況見守ることで十分対処できるとしています。魚介類については、水質にイソプロチオランが検出された地域のうち、諏訪湖のコイと有明海のボラに、水質の60〜1000倍の濃度で見出だされました。
表 イソプロチオランの水質汚染調査結果 −略−
シメトリンが水質に検出されたのは、八郎潟(92/10/7採取)と諏訪湖(92/10/15採取)の二ヵ所です。報告書は、今後環境調査を行ないその推移を監視するとともに生態系に与える影響を調査研究することが必要と考えられると述べています。
ベンタゾンが水質に検出されたのは、大阪府の大和川河口(92/10/20採取)で、ベンチオカーブが大気中に検出されたのは、北九州市(92/11/10〜12採取)です。また、モリネートが検出された水質、底質はともに石川県犀川河口(92/9/1採取)のものです。
報告書は、これらの3農薬及び検出されなかった他の農薬については、特に問題を示唆する点がないとしています。
農薬の環境汚染状況を知るには、散布直後の調査が不可欠です。環境庁には、水道水源や魚介類の農薬汚染について、しかるべき調査地点をえらび、経年的な調べを行なってもらいたいものです。また、水質基準や水質監視項目の数値設定の根拠を明らかにし、より厳しい基準設定と監視強化を求めていきましょう。
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作成:1998-04-01