食品汚染・残留農薬にもどる
t02204#「乳幼児及び子供の食べ物中の農薬」の提起する問題点(3)#94-02
(3)食品以外からの農薬摂取
農薬の摂取量を評価する場合、食品以外のルートも考慮する必要があります。特に、空気、ほこり、室内表面、芝生、ペットなどからの農薬摂取が問題となりことをNRCレポートは指摘しています。
戸外の空気については、農薬散布地域や農薬工場周辺が、当然他の場所に比べて汚染が懸念されます。NRCレポートは、カリホルニア州が土壌くん蒸剤D−Dの使用を禁止した例をあげていますが、これは、学校地域で同剤が検出されたためでした。
北カリホルニアの小さな地区では、有機リン剤エトプロップを散布するジャガイモ畑の近くでは、住民に頭痛、鼻みず、喘息発作のような症状が増加したとの報告もでています。
室内空気の汚染にも注意を払う必要があります。ノミ取り粉、殺虫剤スプレーなどの使用により子供らは農薬と同じ成分(特に有機リン剤やカーバメート剤)に被曝する危険があります。EPAの研究では、クロルデン、ヘプタクロル、アルドリン、クロルピリホス、ダイアジノン、γ−BHCを調べていますが、日本では、スミチオンやピレスロイド系薬剤の汚染にも注意を払うべきでしょう。
NRCレポートは、絨毯にクロロピリホスを処理した場合、床に近い方が大気中濃度が高く、はい回って遊ぶこどもらの方が、高い位置で呼吸する大人よりも、取り込む量が多くなるとの報告を紹介しています。
また、学校のような公共施設で薬剤散布の例として、ある情緒障害児の学校でゴキブリ退治にまいたDDVPとプロポキシルが換気不十分のため室内に残り、従業員が健康被害を訴えたため、大気中濃度が安全なレベルにさがるまで、子供らは、その後2週間部屋に入れなかったとのエピソードを紹介しています。シロアリ駆除剤クロルデン、木材保存剤PCPについて人体汚染がすすんでいることも指摘されています。室内で使用した薬剤は空気だけでなく、絨毯、床、その他の表面に付着しています。床でころげまわって遊ぶ、子供は大人に比べ、一層汚染の危険にさらされます。
有機リン剤やカーバメート剤を含むノミ取り粉の付いたペットから、子供へ農薬が移行することも忘れてはなりません。公園などの木製の運動遊具にはPCP、クレオソート、クロム、砒素などで木材保存処理がしてあり、これらとの接触は、皮膚炎をおこしたり、極端な場合は皮膚ガンの原因となる恐れもあります。
さまざまな薬剤が手や体表面から経皮的に取込まれるだけでなく、汚染した皮膚をなめることにより経口的にも取込まれます。リンデンやマラソン、ディートを含む虫よけ剤、シラミ駆除剤は直接肌につけるので問題です。羊毛脂を原料とするラノリンは化粧品や軟膏類に使われますが、この中に有機リン剤や有機塩素剤が含まれているものもあり(羊を有機リン剤などを含む洗液で処理するため)、ラノリン製品を使っている授乳中の母親から赤ちゃんの肌に移行する危険があります。
以上のように、身の回りのいたるところで、農薬と同じ化学物質が使用され、子供たちが被曝の危険にさらされていることは、NRCレポートの指摘によらずとも、日本でも日常的にみられる現象であり、まさに、わたしたちが運動としてとりあげている課題なのです。
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作成:1998-04-01