農薬の毒性・健康被害にもどる
t03104#回収内容は教えられない−農水省公表拒む、回収農薬CNPは廃棄物ではない」−厚生省態度豹変#94-11
 水田除草剤CNPは、長年の市民運動の結果、今年3月に胆嚢ガンとの関連を否定しきれないとして、厚生省によってADIを取り消されました。これに伴い、CNP原体メーカーの三井東圧は製造中止を発表し、出荷されたCNP剤の回収が全国的に行われました。しかし、農水省はCNP禁止の法的措置をとらず、原則使用禁止などと瞹昧な指示をしただけなので、実際に今年もCNPは使用され、各地で水道水から検出されました。
 CNP使用禁止運動の中心的役割を果たした「水田除草剤CNPの禁止を求める会」(CNP禁止の会)は、8月に、回収されたCNP剤がどのように処理されるのかなどを農水省、厚生省、環境庁に質問状を出し、返答を求めました。
 各省はなかなか回答してきませんでしたが、10月20日に農水省、11月8日に厚生省からようやく回答を得ましたので報告します。
 回収状況に対する質問には農水省が回答しました。実は、農水省は4月末現在の県別、製剤別の詳しい回収状況を国会議員に報告しましたが、それをCNP禁止の会が公表すると(てんとう虫情報26号)、態度を硬化させ、5月末は北海道・東北、関東・東山などのように大まかな地域別の回収状況を報告しただけで、その後は一切報告しなくなりました。(ちなみに農水省は「回収」とは言わず「返品」と表現しています。)
 10月20日の農水省植物貿易課農薬対策室長柿本氏との話し合いで、CNP禁止の会では、回収状況はきちんと公表されるべきだとして、詳しい報告を求めましたが、柿本室長は「8月末現在の全体の回収状況しか言えない」「県別、製剤別に報告したのは間違いだった」と繰り返すのみでした。その理由は県別に詳しく出すと、まだ十分回収されていない県からいろいろ苦情がきて困るということと、出荷量に対する返品量は在庫の問題もあり正確ではないからということでした。
 それで、出してきたのが以下の数字です。
 8月末CNP剤の回収状況
  回収量 5715トン(粒剤、乳剤の合計)
  回収率 79%(平成6年度の出荷量に対して)
 農水省としては、これ以上の回収は望めないのではないかとのことでした。つまり、残りの21%は既に使用されてしまったと見ているようです。はっきり使用禁止措置を取らなかったつけが回ってきたということでしょう。
 回収されたCNP剤は全国12ヶ所の三井東圧の保管倉庫に保管され、三井東圧が管理しているとのことです。
 CNP剤の処理方法ですが、農水省としては二次公害の原因となるような方法は困るので、どう処分するの三井東圧に聞いているとのことでした。三井東圧ではCNP剤に含まれている粘土を再利用したいとの意向で、その方法を検討しているというのが農水省から得た情報です。CNPを再利用するなどとんでもないことです。CNP禁止の会では、直接、三井東圧に質問状を出して回答を求めています。
 11月8日には厚生省産業廃棄物対策室から話を聞きました。厚生省は3月24日のCNP禁止の会との行政交渉の場で、産業廃棄物対策室の田中室長が「返品回収された製剤は回収された時点で廃棄物になるので、廃棄物処理法に基づいて保管することになる」とはっきり述べていました。
 しかし、今回、厚生省の同課は「不要になったものが廃棄物であり、CNPはまだメーカーが不要になったと言ってないので、廃棄物ではない」と、わけのわからないことを述べ、前回の発言を事実上取り消しました。
 廃棄物でないということで、厚生省は責任を放棄しようとしているわけです。有害物質として回収された物を、三井東圧が再利用することを奨励するかのごとき対応には大いに疑問を感じます。
 厚生省は、3月の行政交渉では回収されたCNPは厚生省が責任を持つと言っていたのに、現在では、回収CNP剤がどこに保管されているのか、どういう保管状況なのかは把握していないそうです。
 また、今年、CNPが各地の水道水から検出されていることが報道されましたが、その検出状況を教えて下さいとの質問には、どういうわけか担当の水道整備課が現れず、廃棄物対策室に回答を依頼したとのことでした。その回答も廃棄物対策室の担当官が読みあげるというお粗末。私たちの抗議でしぶしぶ渡してくれたのが以下の内容です。
 「CNPが使用されると予想された平成6年3月8日から7月5日までの間で、CNPの検出状況について調査し、CNPについて水道水の水質検査を実施した水道事業体として報告された360の水道事業体のうち、3事業体において暫定水質管理指針値レベル(0.000mg/リットル)を検出したとの結果を得ております」
 公表するという約束も、喉もと過ぎれば暑さ忘れるということでしょうか、怒りよりもまずあきれてしまいました。
 このように、3月の時点から行政は後退し、できるだけメーカーの利益を守ろうとしています。この分だと、はっきり「CNPの輸出は有り得ない」と述べていたことも怪しくなってきます。きちんと最後まで追求していかなければならないようです。

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作成:1998-04-01