行政・業界の動きにもどる
t03302#食と健康を考える会報告を読んで−安全性よりも貿易優先#95-01
 私たちの反対の声にもかかわらず、昨年末の国会でWTO(世界貿易機関)設立協定が批准されましたが(その中の「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」の問題点については、てんとう虫情報31号参照)、これと相前後して、厚生省は「食と健康を考える懇談会」の報告を公表しました。この懇談会の報告を踏まえ、厚生省は食品衛生法等の改定案を通常国会に提出する予定としています。
 報告書は、日本の伝統的食文化を配慮せず、食と健康をめぐる現状を@ライフスタイルの変化に伴なう食生活の多様化、A食品流通の国際化、B食に関する安全・健康志向の高まりと無批判に肯定した上、@WTO協定の成立、A規制緩和の要請、B製造物責任法の施行という社会情勢の変化に対応するために、今後の食品保健行政の基本的方向を提言するとしています。
 その内容は、食品添加物規制の見直し、残留動物用医薬品の基準設定、放射線照射食品の是非ほか、多岐にわたっていますが、本号では、特に残留農薬基準に関連する部分を中心に、その問題点を指摘しておきたいと思います。
<1>輸入食品等の監視体制
 懇談会の報告(以下、報告とする)では、「輸入食品の監視体制の充実」として輸入食品の検査の質的、量的強化を図るとともに、国内の流通段階での広域的監視・検査体制を強化すべきである、監視結果の情報を地方自治体が利用できるようにする、検査データの信頼性を確保するため、検査の管理運営基準(GLP)を段階的に導入すべきである、輸出国に日本の食品衛生規則を理解してもらい、発展途上国の食品衛生水準の向上を図る技術協力を充実させるべき、などが書かれています。
★農薬を減らすための技術援助が大事
 残留農薬値の高い農作物を輸出する国は、農薬の使用方法に問題があり、多くの場合、その農薬により環境汚染や人の健康被害を起こしていると考えられます。まず、食品添加物・農薬・動物医薬品らをできるだけ使用しないような技術協力に重点をおくべきでしょう。
 国内での監視体制の強化には膨大な金がかかります。残留農薬の分析に要した費用などは、輸入業者や販売業者に負担させるべきです。違反があり、通常より広範な調査を強いられる場合は、なおさらでです。
 また、やみくもに残留農薬を分析するのも効率が悪いことは明らかです。輸入販売業者には、その農作物に使用された農薬名を表示又は届け出させるよう義務付けことも必要でしょう。特に、ポストハーベスト農薬は食品添加物と同様表示させるべきです。これは、国産農作物でも同じで、有機農産物表示の拡張と考えればできるはずです。
 国内残留基準のない農薬を使用した農作物においては、相手国又は輸入販売業者の責任で分析をおこない、国際基準がある場合は、それに適合することを証明させるべきです。国際基準のない場合は、残留ゼロでなければ、輸入を認めないとするのが当然ではないでしょうか。
<2>残留農薬等の基準策定の推進
 −以下「」内に残留農薬基準に関する個所を引用します−
「@農薬が残留する食品に関しては、食品衛生法上の残留農薬基準が定められない限り、適切な流通規制ができないので、早急に残留農薬基準の策定を進めるべきである。現在103農薬についてのみ基準が策定されているが、約300の農薬が国内で登録されていること等を考慮し、当面、少なくとも使用量の多いもの等200農薬程度まで基準を定めることを目標に、計画的に基準策定を進めるべきである。今後は国内で新たに使用される農薬は、農薬取締法の登録保留基準に沿った登録に併せて、残留農薬基準が設定されることが望ましい。」
 「Eなお、農薬の残留する食品については、食品添加物と同様原則流通を禁止し、厚生大臣が安全性評価に基づき設定した残留農薬基準に適合したもののみ例外的に流通を認めるべきであるという意見があった。
 しかしながら、カロリーベースで54%の食品を海外に依存するとともに、103農薬にしか食品衛生法上の残留農薬基準が設定されていない現状において、基準未設定の農薬が残留する食品の流通を一律に禁止することは、国民の食糧の供給を極めて困難なものにすることや、国際的にもポジティブリスト制を採用している国は米国等一部の国にすぎないことから、現時点においては、現行方式に則り国内未登録農薬も含め、残留農薬基準の計画的な策定に努めることによって安全性の一層の確保を図ることが適当であると考える」 
★基準がなければ野放しを続ける
 ここでは、現在103農薬に決められている農薬残留基準を当面200まで増やすことが言われています。しかし、基準のない農薬、作物は相変わらず野放しでいこうというわけです。懇談会でも、基準のない農薬はゼロにすべきだという意見があったことも書かれていますが、厚生省はもし基準のないものは残留してはならないとすると、輸入ができず、量の確保ができないとして、この意見をとり入れていません。
 残留農薬に関してはここが一番問題になる箇所です。現行の制度の基準が決まっていないものはいくらでも残留してもいいということが続くわけです。
 食品添加物については日本では最初から国が指定したもの以外は使用してはならないとなっています。こういう規制の仕方を「ポジティブリスト制」と言っているわけですが、食品添加物よりも毒性が強く、なおかつ、食品に添加することが前提になっていない農薬こそ、まっさきにポジティブリスト制にすべきでしょう。現にアメリカではその制度をとり入れています。
 厚生省は、200の農薬の基準を決めれば輸入農産物の90%はクリアーできると言っています。そこまでいけるのなら何故、基準にない農薬が残留している農産物の輸入の禁止ができないのか、理解に苦しみます。
★厚生省の計算はおかしい−略− ★国際基準との整合
 つぎに、「A残留農薬基準の策定に当たっては、農薬の使用状況を踏まえ、国際的基準との整合性を考慮しつつ、我が国の食物摂取の実態等科学的根拠による安全性評価に基づき策定すべきである。また、基準の内容については、最新の科学的知見に基づき適宜見直しを行なうべきである。」とあります。
 「国際基準との整合性」というのは、今までやってきたように国際基準があればそれをとり入れるということでしょう。これについては、何度も批判してきましたのでここでは触れません。
 国際基準より厳しい基準を設定するにはアメリカなどの輸出国に科学的根拠を納得してもらわなければなりません。これがWTOで決められているわけです。
 科学的根拠として、農薬の毒性試験データだけでなく、農作物の摂取実態の結果がいれられていますが、農薬の残留実態も基準の設定に反映させるべきです。たとえ国際基準以下でも、国産品の残留実態と比較して高いものは、規制できるような基準にすべきです。
 また、毒性の再評価にあたっては、消費者の意見や消費者からの情報もとりいれる必要があります。CNPの時に明らかになったように市民グループが運動しなければ、厚生省はCNP禁止に動かなかった経過があります。消費者や市民グループの意見をとり入れる制度を明確にすべきです。
 動物実験で発癌性が確認されている農薬は残留ゼロとすべきです。免疫毒性、神経毒性、ホルモン系への毒性など、従来の毒性試験では明確でなかった評価もなされるべきです。
 さらに、個々の農薬の毒性だけでなく、複合作用も検討し、残留農薬の総量規制もなされるべきで、これは、国際基準にも反映されるようにすべきだと思います。
−以下の項略−
★毒性データを厚生省にも
★バナナの皮はとって分析する
★農薬摂取の実態調査はこれから
<3>食品の国際基準への積極的関与−略−
★企業優先をやめよ
 いままでの行政の姿勢は、企業優先で、企業秘密を守ることに主眼がおかれ、安全性よりも、経済性が優先されてきました。WTO協定も安全性よりも貿易が優先されています。国際規格基準を第一に考える行政に対して不信感はぬぐえません。この報告も企業が誘導する食文化を全面肯定しているところから出発しています。
 企業優先ゆえ、規制措置が遅れることもあります。情報収集と監視の強化により、予防的見地から迅速な規制がなされるべきです。
 農水省は農薬の登録時の毒性データは「企業秘密」として公開していません。厚生省が情報公開に取り組むのは大賛成ですが、毒性・残留性データ等は、認可や登録の前に公開し、事前閲覧できるようにし、前以て意見をつのる制度も必要です。

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作成:1998-04-01