行政・業界の動きにもどる
t03303#守られていない農薬安全使用基準−農業における環境保全対策に関する行政観察結果報告書から#95-01
 昨年12月に総務庁行政監察局は「農業における環境保全対策に関する行政監察結果報告書」を発表しました。行政監察は「総務庁設置法」に基づいて行われるもので、総務庁の長官は各行政機関の長に対し、所掌に関する必要な資料の提出及び説明を求めること、実地調査を行うこと、随時所掌事務に関し意見を述べることができる、調査を受けるものはその調査を拒んではならない、監察の結果当該行政機関の長に対しその勧告に基づいてとった措置について報告を求めることができるなどが決められています。
 つまり、法律通りに行政が行われているかどうかを立ち入り調査などで調べて、勧告し、その勧告をどう実施したかを行政が報告しなければならないもので、そのための機関が行政監察局です。
 今回の監察は、農水省が平成4年(1992)に公表した「新しい食料・農業・農村政策の方向」(新政策)がどのように実施されているか、また、農薬・化学肥料の適正確保対策がどうなっているかなどを調査しています。この中の農薬に関する部分を中心にご紹介します。
 監察は平成5年7月から9月にかけて、環境庁、厚生省、農林水産省、都道府県、市町村、関係団体等を対象に全管区行政監察局、1行政監察支局、11行政監察事務所が行いました。
 法律に基づいて行政がなされているかどうかが対象ですから、法律に書かれていないことは監察できないこともあり、残念ながら私たちからみて不十分な点も多く含まれています。しかし、法律や基準すら守っていないところはばっちりと指摘されており、参考になります。
 まず以下の表を引用します。
主要国における農薬の消費量(10アール当たり)単位:kg %
国名  アメリカ デンマーク イギリス 西ドイツ フランス オランダ 日本
農薬   0.2      0.2         0.3      0.4       0.5       2.0       1.7
消費量   (100)    (100)        (150)    (200)     (250)   (1000)      (850)
 日本の単位面積当たりの農薬消費量は世界で2番目となります。オランダは2000年までに農薬使用量を半分以下にすると言われていますから、このままでは日本は世界一の農薬多使用国になります。
 それを反映しているのかどうか、総理府の調査によると、国民が関心を持っている環境問題では、「化学物質や農薬による環境汚染」が34.5%で、4番目に位置しています。
 監察はまず、環境保全型農業の推進を重要な課題としている新政策に関して行われています。新政策では環境保全型農業を推進するために都道府県に「環境保全型農業推進協議会」を設置し、基本方針等を策定することとされていますが、策定されていない県が調査した19県中8県(42.1%)がでした。また、基本方針に基づいた活動計画は57.9%が末策定で、約半数が何にもしていないことがわかりました。協議会自体が設置されてない県が5県もあり、たとえ設置されていても消費者の代表が入っていないところが6県となっています。
 また、技術検討委員会等を設置し、農薬や化学肥料の節減に関する目標の設置、節減を可能にする技術の検討が行われるはずですが、農薬の節減の目標を設定していない県が8県、化学肥料の節減の目標を設定していない県が7県となっていました。
 これらを踏まえて、都道府県を指導するなど3点が勧告されています。
 次に、「農薬の適正使用の確保等」という項目に移ります。
 農水省は農作物への農薬残留が厚生省の決める残留基準をオーバーしないように、農薬安全使用基準を決めます。現在67農薬について使用対象農作物、使用方法、使用期間、使用回数などの基準が設定されています。それ以外のものは農薬が登録された時点で示された基準があります。監察では両基準を合わせて「農薬安全使用基準等」といっています。この基準に従って都道府県がその地域にあった農薬を選定して防除指針等を作り、それをもとにして農協や普及センターが農家が直接利用できるような防除方法を示した防除暦・栽培暦を作成しています。
 ここでは11県の農薬使用状況を調査しています。その結果として
 「@都道府県が作成している防除基準では、調査した12防除基準中5防除基準において延べ31作物の80件で、A普及センター、市町村及び農協が共同または単独で作成している防除暦、栽培暦等においては、調査した62の防除暦、栽培暦中、延べ39作物の96件で農薬安全使用基準等に不適合となっている。」と指摘されています。
 つまり、都道府県の段階で既に42%が農薬安全使用基準等を守っていないことが明らかになったわけです。これでは何のために国が基準を決めたかわかりません。
−以下略−
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作成:1998-04-01