行政・業界の動きにもどる
t03407#東京都における有害化学物質対策について#95-02
 てんとう虫情報26号で、「東京都有害化学物質対策検討会」が出した報告書(以下「検討会報告」という)を紹介し、その問題点を指摘しましたが、これに関連して、池田敦子都会議員が行政当局に対して行なった文書質問に対する答弁書がよせられました。
 以下にその内容の一部を示しますが、総じて、官僚的、抽象的な回答に終始しており、ホルムアルデヒドやTCEP(塩化ビニル製壁紙に添加される難燃性可塑剤で、発癌性が指摘されている。てんとう虫情報27、30号参照)などの具体的な物質の室内大気汚染に関しては、環境調査の実施すらためらっています。
 住民が指摘する有害化学物質の規制については、すべて国の法律や規格及びその判断にまかせるといった無責任な姿勢に終始していることは、嘆かわしいことです。地方自治体は、住民の意見を聞き、積極的に農薬関連物質をはじめとする有害化学物質の使用状況や汚染実態を明かにし、国に対策を迫るようにしてもらいたいものです。
質問:害虫駆除のための消毒事業の実施状況、目的、根拠法、散布薬剤名など、その実態を伺う。
回答:平成6年6月に衛生局が行なった「区市町村における消毒事業調査」の集計結果によると、区市町村での害虫駆除のための消毒事業は、64区市町村中55区市町村(86%)で、実施されている。−中略−消毒事業の根拠については、伝染病予防法第16条の2としているものが32区市町村(58%)である。その他は、地方自治法第2条などを根拠に、区市町村の行なう住民サービスの一環として実施している。
 駆除対象については、区市町村によって異なるが、ねずみが29区市町村、ゴキブリが18区市町村、ハエが42区市町村、蚊が45区市町村となっている。
 使用薬剤については、昆虫に対してはフェニトロチオン(商品名スミチオン)、トリクロルホン等である。ねずみに対しては、クマリン系(商品名バルサンブロック)、ノルボルマイド等である。
質問:住民や駆除作業員に被害を与えぬ、状況や目的にかなった効果的な消毒の在り方を検討しなおすべきだが、所見を伺う。
回答:駆除方法や使用薬剤等については、伝染病予防法施行規則第27条の2から第27条の4までに具体的な規定があり、区市町村においては、これを参考にねずみ・害虫の駆除を実施している。今後とも、区市町村が住民や駆除作業員の健康により影響が少ない方法の導入などに努めるよう、駆除担当職員講習会を通じて徹底してまいりたい。
質問:住民へのスミチオンの無制限な無料配布を止め、希望者のみに変更するなど、区市町村への情報提供を考えてはどうか伺う。
回答:スミチオンなどの薬剤の配布については、現在でも希望者以外への配布はされていないと考えられるが、今後とも適正な薬剤配布及び薬剤の使用上の注意の徹底を図るよう、駆除担当職員講習会を通じて情報提供を行なってまいりたい。
質問:業界に対して室内大気汚染を少しでも低減する立場から、蒸散面積の広い壁紙へのTCEP使用自粛を打ち出すべきと考えるが、所見を伺う。
回答:TCEPを使用した壁紙は、業界の自主的な判断により、生産・出荷の停止及び回収等の措置がなされ、現在市場には流通していないと聞いている。
質問:壁紙のJIS規格A6921にはホルムアルデヒドの放出量の規制値を設置しているが、TCEPに関する表示や規制を加えることを検討すべきと考えるが、所見を伺う。
回答:JIS規格については、国が所管しているところから、国に対して、TCEPに関する表示や規制についての要望があることを伝えてまいりたい。
質問:TCEPを含む壁紙使用の都営住宅を築後年数によりサンプルして、ホルムアルデヒドも含め室内大気汚染調査を行ない、化学物質放出の実態を把握する必要があると考えるが、所見を伺う。また、高濃度の残留が認められたものについて、希望があれば、張り替えに応じてはどうか、伺う。
回答:都営住宅のTCEPを含む壁紙については、国のTCEPの安全性に関する調査の結果等を踏まえ、必要に応じて、関係機関と協議の上対応を検討したい。
 なお、壁紙からのホルムアルデヒド放出量については、JISで規制されており、都営住宅の壁紙については、このJIS規格品を使用しているところである。
質問:有害化学物質対策の環境媒体には大気が、入っているが、その概念に室内大気汚染を加えるべきと考えるが、所見を伺う。
回答:「検討会報告」では、有害化学物質による環境汚染の防止を図る観点から、都における有害化学物質対策の環境媒体の範囲はなるべく広くとらえることが必要であり、大気、河川水・海域、地下水、土壌、底質、水生生物などを対象とすることが提言されている。
 有害化学物質対策を進めるに当たっては、室内の大気汚染による人の健康への影響等を含め、情報の収集整理などを行なうなど、必要な検討をしてまいりたい。
質問:シロアリ駆除剤のクロルピリホスなどの塩素を含む殺虫剤、TCEPなどの塩ビ可塑剤について、身近な生活環境への影響を加味して要管理物質のリストに加えることを検討すべきだが、所見を伺う。
回答:「検討会報告」では、有害性や難分解性の評価が既に行なわれている物質や法規制の対象となっている物質を選定し、さらに、都内の事業所における使用量や排出量の実態調査を踏まえ、要管理物質リスト案を作成している。
 シロアリ駆除剤のクロルピリホス等については、今後、更に毒性・難分解性の知見や使用実態などの情報の収集を図り、要管理物質のリストに加えるか否かを検討してまいりたい。
質問:汚染の未然防止と自主管理について
 排出抑制のために、都が事業者に自主管理マニュアルやガイドラインを示すよう提案がされているが、それを受けて農業を含む事業者が使用量や廃棄量を減らすための目標を設定すべきと考えるが、所見を伺う。
回答:今後、ガイドラインを含む指導指針の策定等に当たっては、「検討会報告」を踏まえ、事業者が自主的に排出抑制を行なう際の目安として用いることができる技術基準なども検討してまいりたい。
 なお、農薬の使用については、農薬取締法に定める登録制度に基づき、使用量、散布回数等の農薬安全使用基準が設けられており、登録されていない農薬は使用できないことになっている。都では、これらの基準等を記載した「病害虫防除基準」を独自に作成し、農業改良普及所等を通して、農家の指導に当たっているところである。
質問:市民も排出者という認識のもとに、区市町村の協力を得てペンキ、溶剤、殺虫剤などの有害化学物質を回収するシステムを考えてはどうか、伺う。
回答:「検討会報告」では、都民の役割として、都民自らが消費者であり、かつ、有害化学物質の排出者となる可能性について自覚し、有害化学物質に関する基本的な知識の修得、使用や廃棄に当たっての環境汚染防止への配慮など、環境に対する意識を高め、それにもとづく行動に努める必要があるとしている。
 有害化学物質対策としては、製品の適切な使用等によって、有害化学物質を含む廃棄物を排出させないことが重要であるので、都民に対して、必要なだけの量の購入など、有害化学物質を含む廃棄物を排出しないよう、区市町村とも協力して普及啓発などを図ってまいりたい。

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作成:1998-04-01