環境汚染にもどる
t04003#農薬及び有機リン系可塑剤による河川水汚染:東京都衛生研究所#95-08
東京都衛生研究所は、同所年報45号(1994年発行)で、都内A水系10地点の河川表層水中の農薬及び有機リン系可塑剤の汚染調査結果を報告しました。A水系というのは、地域住民の約45%に水道原水を供給している河川としており、報告にある地形図から判断すると江戸川水系と思われます。
サンプリングは90年の6月中旬と9月下旬の2回にわたり実施され、表1、2−略−に示すような結果が得られました。報告書では、「A水系における6月の水稲農薬は約2μg/L(2000ppt)であり、非水稲農薬と農薬の分解生成物の合計濃度は約1μg/Lであった。今回調査した農薬及びその分解生成物の合計濃度はこの水系では、7月に最高値になり、数μg/L〜数十μg/Lに達する場合があると考えられ、また、有機リン酸トリエステルの合計濃度も一年中、約1μg/Lであると推測される。」としています
これらの薬剤は、河川水だけでなく、それを原水とする水道水中にも、検出されると思われ(その際、塩素処理により、一層有害な物質に変化する恐れもある)、住民はこれら薬剤を飲みつづけているわけです。
ヨーロッパでの飲料水の総農薬残留基準は500pptであり、また、日本でのミネラルウオーターの残留農薬値が検出限界以下とされていることを考えれば、個々の農薬の残留基準値が高く設定されていることに加え、水道水中の農薬の総残留値を知るのが恐ろしい気がします。
(1)農薬汚染調査結果
17種の農薬(分解物も含む)が河川水中に見出だされました。CNP、オキサジアゾン、クロメトキシニル、シメトリン、ピラゾレート、ベンタゾン、ベンチオカーブ、ブタクロール、モリネートは主に水稲の除草剤として使用され、IBPとイソプロオチオランは水稲用殺菌剤として多用されています。
メトラクロール、TPCP、CATは畑作用除草剤だけでなく、芝用にも使われます。BPMCはカーバメート系の殺虫剤、MEPとダイジノンは有機リン系殺虫剤で、水稲・畑作でも使われるほか、後2者は、家庭用殺虫剤、防疫用薬剤としての用途もあります。 検出最大値の高いのは、CATの1430ppt、IBPの1000ppt、ダイアジノンとベンタゾンの各667pptの順となっています。
平均値をみると、MEP以外の農薬は6月の方が9月の試料より高い濃度を示しており、水田や畑での農薬使用最盛期と汚染の時期が一致しています。
9月になっても平均値が100ppt以上なのはCATとMEPで、各々の最高値はCATが350ppt、MEPが500pptです。ベンタゾン、IBPも9月というのに比較的高い値で検出されています。「その内、MEPは住宅地域で、大量に使用されていた」と報告に記述されていますが、これが、非農耕地用なのかどうかは不明です。
なお、この都衛生研究所の調査以後、胆嚢ガンとの因果関係が疑われたCNPは、私たちの追放運動の結果、メーカーが販売自粛措置をとりましたし、CATは全国的に汚染がひどいということで水質汚濁性農薬の指定を受けました。
しかし、表1にみられるように、環境庁が示す指針値等は、その設定値が高く、しかも、農薬総量規制がないため、私たちの飲む水は、決して安全だといえる状態にはありません。
(2)有機リン系可塑剤の汚染調査結果
9種の有機リン酸トリエステル系可塑剤(主に塩化ビニル製品に添加される)が、河川水中に検出されています。検出最大値の高いのは、TBXPの1670pptで、つぎがTCEPの767pptです。後者は、発癌性があり、塩化ビニル製壁紙の難燃剤としても使用されるため、室内大気汚染をも引き起こしています(てんとう虫情報27号、36号参照)。平均値をみると、6月より9月の試料の方が、高い濃度を示す物質がCRP、TBP、TBXP、TCEP、TCPPの5種あり、これらは、季節変化があまりなく、年間を通じて同一程度の濃度にある考えられています。有機リン系可塑剤も農薬と同様、河川水汚染だけでなく、水道水からも検出される恐れの強いものです。すでに、兵庫県衛生研究所は、83年3月から1年間、神戸市内にある同所の水道蛇口水を分析し、CRP、TBP、TBXP、TCEPを見出だしています(表2参照)が、現在にいたるまで水道水基準は設定されていません。
表1 A水系の農薬モニタリングの調査結果−略−
表2 A水系の有機リン系可塑剤のモニタリング調査結果−略−
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作成:1998-04-01