ダイオキシンにもどる
t04402#焼却によるダイオキシン汚染#95-12
ダイオキシン類は自然界には存在しない物質であり、塩素源がないと生成することは、ありません。特にゴミの中に有機塩素系化合物が混入していると焼却の際に、ダイオキシン類が生成することは、よく知られていおり、今日では、都市ゴミ焼却場や産業廃棄物焼却場は、その大きな汚染源のひとつになっています。
わたしたちは、94年7月の「もうごめんだ街の農薬汚染集会」で、塩素を含有するシロアリ駆除剤(BHC、ディルドリン、PCP、クロルデン、クロルピリホス、ほか)で処理された廃木材、PVC製の壁紙・電線・配管、その他の建築廃材の焼却によるダイオキシン類生成の危険性を指摘し、建設省に対して、調査の実施と環境汚染及び人への健康被害の防止策を示すよう要望してきました。しかし、行政の対応が遅々として進まないうちに、以下の結果をみることとなりました。
@所沢における建築廃材焼却によるダイオキシン汚染
所沢市下富地区に林立する焼却炉は、いずれも、法規制を受けない一日5t以下の焼却物を処理する小型炉で、廃木材だけでなく、プラスチック類も焼却されており、付近一帯に耐えられない異臭を漂わせています。炉から発生したダイオキシン類が、周辺を汚染しているのではないかとの懸念のもとに、周辺土壌の環境分析が行なわれました。その結果がこのほど明らかになりました(表1−略−)。
数値は、ダイオキシン類の等価換算濃度(TEQ:ダイオキシン類の中で最も毒性の強い2,3,7,8−四塩化ダイオキシンに換算した値、表では、ダイオキシン類とジベンゾフラン類の合計値をpg/g=ppt単位で示す)です。
一番高濃度だった試料はは石坂産業の隣の廃炉の跡から採取した焼却灰(現在石坂産業が使用しており、灰はもうない)で、TEQは4287pg/gの濃度でした。これは、比較試料であるドイツの焼却灰の約1800倍、また、日本の伊勢市の焼却灰のおよそ8倍の値で、小型炉での焼却処理がいかに危険なものかを示しています。また、野焼き跡の灰と土の混合試料のTEQは552pg/gと高値を示しました。
周辺土壌のTEQは、96〜218pg/gで、比較試料として表にある福岡県内の一般土壌よりも高い値を示しており、焼却炉を発生源とするダイオキシン汚染を裏付けているように思えます。
このような小型焼却炉による建築廃材の焼却が、行政の指導のもとに実施されているわけで、その結果おこっているダイオキシンの汚染状況をみれば、日本は焼却無法地帯といっても過言ではありません。
建築廃材の野焼きだけでなく、小型焼却炉についても使用禁止を求めていく運動がぜひとも必要です。
A身のまわりの焼却炉からもダイオキシン−消しゴムかすが発生源?
ダイオキシン類の発生源は、建築廃材を燃やす焼却炉だけでは、ありません。私たちの身のまわりにある、より小さな焼却炉でも、残灰からダイオキシン類が検出されています。
愛媛大学農学部の研究者が実施した小型焼却炉(50kg乾物/日以下)の残灰調査の結果を表2−略−に示します。数値は表1と同様、ダイオキシン類とジベンゾフラン類を合わせたTEQで示してあります。
炉の設置場所によりTEQは、ND(検出限界以下)から最高343.6pg/g(この数値は、比較にあげた都市ゴミ焼却場のTEQより約16倍高い)です。
個人住宅の小型炉では、主として紙類が焼却されるためか、NDとなっていますが、もし、焼却物の中に塩化ビニリデン樹脂のラップなどが混入していれば、ダイオキシン類が検出されたかも知れません。
また、表でわかるように、学校における小型焼却炉の灰の中にもダイオキシン類が検出されているところがあります。これは、そこで、燃やす紙やプラスチック類を含むゴミのなかに有機塩素系の物質が含まれていことにほかなりません。
学校で使用される文房具や教材類にその原因があるのではないかと、調べたところ、消しゴムくずが塩素供給源として浮かびあがってきました。最近では、消しゴムの素材もいわゆるゴムを原料とする製品から、プラスチック消しゴムに大きくシフトしているようで、私たちが、文房具売り場でみかける製品のほとんどがプラ字消しとなっています。日本ゴム協会編の「ゴム工業便覧」(第四版、平成6年1月20日発刊)によると、プラスチック消しゴムの組成は塩化ビニル樹脂:100、可塑剤:135、炭酸カルシウム:50、顔料:0.4となっており、ゴムとは名ばかりで、ポリ塩化ビニル樹脂が約35%配合されている純然たるプラスチック製品です。
有機塩素系物質のひとつであるポリ塩化ビニル樹脂自体が火災や焼却実験で、ダイオキシン類の発生源になることが確認されています。プラスチック類の分別収集が都市ゴミ焼却場でのダイオキシン類発生の抑制に有効だと考えられますが、ポリ塩化ビニル樹脂を含むプラスチック消しゴムの消しかすは、どう考えても、分別不可能で、他のゴミ屑とともに、捨てられ、焼却炉で燃やされる運命にあるのではないでしょうか。
学校の焼却炉でも、紙類とともに消しゴムかすが焼却されているに違いありません。有機塩素系物質をこのような回収不可能で、しかも焼却処理せざるを得ない用途には、絶対に供するべきでないと思います。
とりあえず、学校関係の行政に対して、
(イ)小型焼却炉でのダイオキシン類の発生のメカニズムが解明され、発生防止策がとられるまで、学校施設でのゴミの焼却処理は中止する。
(ロ)有機塩素系物質を使用した消しゴムや書籍表紙のコーティング剤など廃棄された後の分別不可能な文房具や教材については、ただちに使用を中止する。
ことなどを求めて、いかねばならないと思います。
B室内ダイオキシン汚染は大丈夫か
95年3月に、東京都国分寺市で起こった家人の中毒事故は、日本医科大学の調査で、エアコンから漏れたフロンガスが、石油ファンヒーターの熱で、塩化水素、弗化水素、ほかの有毒ガスに変化したためと推定されました(朝日新聞95年11月23日報道−略−)。
このケースは、漏れ出たフロンガスの濃度が高く、高濃度の有毒ガスが発生して、急性中毒症状がひきおこされたものと思われますが、ダイオキシン類が生成していたことも十分考えられます。
ダイオキシン汚染については、大気、水質、底質など一般環境やそれに伴なう魚介類、農畜産品の汚染についての報告は、少ないながらもありますが、室内環境についての調査報告は、火災など特殊な場合を除いて、見当たりません。
私たちは、農薬及びその関連物質による室内汚染に注目してきました。その結果、シロアリ駆除剤(クロルピリホス)、家庭用殺虫剤(DDVP、ペルメトリン、S−421)、衣料防虫剤・消臭剤(パラジクロロベンゼン)、壁紙用難燃剤(TCEP)、溶剤(トリクロロエチレン)などが室内大気を汚染していることが明かになっています。
これらの有機塩素系化合物は、燃やすとダイオキシンになる物質です。家庭内での暖房器具や調理器具の熱により、微量のダイオキシンが生成している可能性を否定できません。
また、このような汚染物質が充満した室内で、タバコをすったら、大変です。ダイオキシン生成装置を通して空気をすっているようなものです。喫煙者はもちろん、部屋にいる人は間違いなくダイオキシンを取り込むことになるでしょう。
今後、行政や研究者には、ぜひとも、ダイオキシン類の室内汚染の実態を調査してもらいたいものです。
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作成:1998-04-01