環境汚染にもどる
t05204#農薬臭化メチルの生産量をごまかしていた?基準年の数値がバラバラ:農薬対策室回答#96-07
 95年12月、ウィーンで、オゾン層を守るためのモントリオール議定書締約国会議が開かれ、問題になっていた臭化メチルの2010年全廃が決まりました。オゾン層破壊ガスの中で全廃が決まっていなかったのは臭化メチルだけでした。
 臭化メチルがオゾン層を破壊することがわかり、初めて規制が決まったのが92年11月の第4回締約国会議でした(臭化メチルとオゾン層破壊に関する記事はてんとう虫情報第15号に載っています)。このとき、臭化メチルは1995年以降1991年レベルに凍結することが決まりましたが、検疫用は代替がないということで除かれていました。
 95年から始まった臭化メチルの規制状況はどうなっているのでしょうか。これを調べようとすると、どうしても基準の91年の数値が問題になってきます。ところが、いくら調べても日本の91年の臭化メチル生産量がはっきりしないのです。
★農薬要覧には
 もともと、臭化メチルは農薬として使用されていましたから、生産量や出荷量は農水省植物防疫課が監修して植物防疫協会が発行している「農薬要覧」をみればわかるはずです。というわけで、90年、91年あたりの生産量を拾いだしてみると、
臭化メチルくん蒸剤生産数量(農薬要覧より)
         91年度版    92年版     93年版    94年版
 88(S63)   7,653
 89(H1)    7,920       7,920
 90(H2)    7,181       7,181      8,629
 91(H3)                8,046      9,164     9,164
 92(H4)                           9,222     9,222
 93(H5)                                     9,853
となります。
★突如91年の数値が変わった!
 農薬要覧ではその年度を含めて生産・出荷量の3年分が載ります。例えば91年度版では88年、89年、90年の量が載るわけです。ところが、93年版になっておかしな数字になっていることが表でわかると思います。つまり、90年度をみると、91年版、92年版では7,181トンで同じ数字ですが、93年版になると突如として8,629トンに変わっています。同じ年度の同じ数字が発行年によって変わるとは驚きです。
 これが問題の91年度の数字になると92年版では8,046トンが93年版では9,164トンになっています。1,118トンも増えているわけです。おかしいじゃありませんか。91年の数値を大きくして規制をやりすごそうとしているのでしょうか。しかも、農薬要覧にはそのことに対する説明は一切ありません。
 農薬要覧は同じ農薬が5ヵ所出てきます。@農薬種類別生産出荷数量・金額票、A農薬種類別会社別農薬生産・出荷数量票、B農薬種類別県別出荷数量票、C農薬種類別輸出数量票、D農薬種類別輸入数量票です。このうちAとBは当年度の数値しかありませんが@、A、Bの数値は当然一致しています。92年版でも@、A、Bの数値は一致しています。一ヵ所の数字を変更するとすべて変更しなければならないはずですが、それも一言も断りはありません。
 これ以外にも、臭化メチルの原体輸入量が93年版だけがいやに多くなっており、94年版ではもとに戻っているなど、納得できない点ばかりです。
ちなみに農薬要覧の発行日は以下の通りです。
 92年度版:92.12.18(90.10-91.9)
 93年度版:93.12.17(91.10-92.9)
 94年度版:95. 1.25(93.10-94.9)
 92年12月に第4回モントリオール締約国会議で臭化メチルの規制が決まっているのを考えるとイミシンです。
★農水省植物防疫課に聞くと・・
 農薬要覧には「本書に記載されている統計資料は、農薬取締法に基づく農薬製造会社の報告を中心にとりまとめた」と書かれています。法律に基づいて提出された数値をまとめたもので、いいかげんに変更したりしていいものではありません。
 一体、どういうことなのか、6月始めに農水省植物防疫課農薬対策室へ聞きにゆきました。質問したのは以下の事項で、回答してくれたのは農薬対策室長と課員です。
質問:農薬要覧に「本書に記載されている統計資料は、農薬取締法に基づく農薬製造会社の報告を中心にとりまとめた」とあるが、法第何条か。
回答:農薬取締法第13条である。
★虚偽の報告なら犯罪
 参考:法第13条「環境庁長官又は農林水産大臣は、製造業者、輸入業者、販売業者又は防除業者その他の農薬使用者に対し、都道府県知事は、販売業者又は水質汚濁性農薬の使用者に対し、その業務若しくは農薬の使用に関し報告を命じ、又は検査職員その他の関係職員に、これらの者から検査のため必要な数量の農薬若しくはその原料を集取させ、若しくは必要な場所に立ち入り、その業務若しくは農薬の仕様の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。」
 これに違反した場合、第18条で「次の各号の1に該当するものは、これを6箇月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処する。
 1 第6条第2項、第8条第1項若しくは第2項(第11条第2項において準用する場合を含む)、第10条又は第11条第1項の規定に違反した者
 2 第13条第1項の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による集取若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者」となり、6ヶ月以下の懲役か3万円以下の罰金となります。立派な犯罪です。
★帝人化成が間違って報告した?
質問:農薬要覧にある臭化メチルの数値の違いはどういうことか。
回答:92年版の数字はメーカーが間違って報告していた。そのメーカーは帝人化成である。臭化メチルの用途別使用量を調査しているとき、帝人化成が来て、実は今まで間違った数字を報告していた。これが正しい数字だと言ってきた。帳簿を調べたところその通りだったので、93年版で訂正した。
質問:農薬要覧93年版(93年12月17日発行)で、90、91、92年度の数字を変えている。この時に農水省は気がついたはずである。何か措置したのか。
回答:帝人化成に厳重注意をした。
質問:口頭でか。つまり、今の私のように一方的に農水省が責めて、帝人化成がひたすら謝ったということか。それだけで終わったのか。
回答:そうだ。
質問:93年版を発行する時に何故、農薬要覧の訂正をしなかったのか。
回答:言われれば何故やらなかったのか不思議だ。申し訳ない。しかし実害はなかったと思う。
質問:県別出荷数量も間違っていたのか。
回答:そういうことになる。
質問:業者の帳簿を調べたのか? 帳簿は「真実かつ完全に記載し、少なくとも3年間その帳簿を保存しなければならない」となっているが。
回答:当時の担当者が調べた。どうもどこかの営業所か何かの数字を抜かしていたらしい。93年版の数値は絶対に正しい。通産省も自分で調べてそう言っている。
質問:では、何故帝人化成を農薬取締法違反で、告発しなかったのか。
回答:業者が虚偽の報告をしたという証拠が得られない。単純ミスかもしれない。裁判所も忙しいので、大きな事件でもないといちいち告発しない。 −以下略−
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作成:1998-04-01