農薬毒性・健康被害にもどる
t05205#湾岸戦争症候群に忌避剤・殺虫剤が関与か#96-07
1990年から91年にかけて、イラクで起こったいわゆる湾岸戦争に参戦したアメリカやイギリス、フランスなどの帰還兵の中に、さまざまな体の異常を訴えるひとがおり、これを湾岸戦争症候群として、各国でその原因が追及されてきました。帰還兵たちにみられる症状は、本人については、記憶力減退、頭痛、疲労感、筋肉痛、呼吸器や消化器系の異常、振せん、皮疹など、さらに、その子供に先天異常の発生率が高いとの報告もありました。
 このほど、アメリカのデューク大学の研究者らが、行なったニワトリによる実験で、その原因の一端が解明されました。
 湾岸戦争で、兵士らが用いた害虫忌避剤ディートまたは殺虫剤ペルメトリンと神経系毒ガス兵器の解毒薬剤プロフィラクティック・ピリドスティグミン・ブロマイドという臭素系物質(略称:PB)の複合毒性試験を実施したところ、それぞれ単独での実験では、異常がなかったニワトリに人と類似した神経症状が認められました。
 図(略)に実験結果の一例を示します。ニワトリへの各薬剤の一日の投与量はPBが5mg/kg、ディート(図中D)とペルメトリン(図中P)が各500mg/kgで、60日間実験が行なわれました。縦軸は影響の評価尺度で、A、B、Cは、ニワトリに観察された症状の、DとEは神経組織の病理学的変異の、Fは総合的なものを意味しています。、対照群、単一薬剤投与群に比べ、混合薬剤をもちいた群の方が、影響が強くでていることがわかります。特に、三薬剤を投与したもので相乗的な影響の一層高まりがみられます。これらのことから、研究者は、投与されたPBが、普通ならディートやペルメトリンの作用を弱めるはずのブチリックコリンエステエラーゼ酵素の働きを阻害してしまうため、後二者が脳や末梢神経系に到達して、健康被害を与えるようになった考察しています。
 ディートは日本でもよく使用されている虫よけのクリーム(リペレントともいう)に 含まれている化合物で、子供たちが野外で使用することも多い薬剤です。ペルメトリン は塩素を含むピレスロイド系の物質で家庭用殺虫剤や農薬に使われています。図で、ペ ルメトリン+ディート投与群においても、単独より毒性が強く現われている点が気懸か りです。

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作成:1998-04-01