食品汚染・残留農薬にもどる
t06705#東京都衛生研究所95年度農作物残留農薬調査報告から#97-08
 東京都衛生研究所は、同所年報47号(1996年発行)で、95年4月から96年3月にかけて、東京都内で入手した農作物の残留農薬調査結果を報告しています。
 上記の報告は例年と同じように調査されていますが、これとは別に、94年5月から96年3月にかけて、東京都多摩地区で流通した国産野菜と野菜漬物の残留農薬調査もなされています。
残留分析の対象となった作物は
国産慣行栽培作物:   10種  30検体
無・減農薬栽培表示作物: 6種  20検体
輸入農産物:      68種 246検体
多摩地区国産野菜:   14種   77検体
同上漬物加工品:     8種  40検体

農薬の種類は
         国産作物 輸入作物 多摩地区の
                   野菜と漬物

有機リン系農薬:  37種  36種  19種
有機塩素系農薬:  25種  18種  23種
カーバメート系農薬:14種  12種   5種
その他:       5種   5種
となっています。
表−略−に何らかの農薬が検出された作物とその検出値を示しました。
(1)国産農作物
 分析対象となっている農作物は、野菜では、キュウリ*、レタス、ニンジン、ミニトマト、トマト、ピーマン、食用菊*、小菊*、ホウレンソウ、コマツナ、果実では、ブドウ*1種だけで(*は慣行栽培のみ)、対象作物の選定にかたよりがあることはいままでとかわりありません。残留農薬検出率は、慣行栽培作物で37%、無・減農薬栽培作物で20%でした。
 食用菊や小菊では、イプロジオンが2600ppbやDMTP1400ppbと高濃度で検出されていますし、DDVPの750ppbも残留基準を越えています。また、食用菊では、6種の農薬の複合残留もみられました。こんなものは、とても食用とはいえません。
 生で食べるレタスには、結構いろいろな農薬が検出されています。メソミルで登録保留基準を越える700ppbと高い数値を示したものがあったほか、ジメトエート/イソキサチオン/メソミルの3種の農薬が残留していた例もありました。メソミルは、コマツナ、ピーマンにも検出されています。また、プロシミドンも4種の野菜に残留していました。
(2)輸入農作物
 対象となった農作物のうち19種49検体に21種の農薬が見出だされました(検出率20%)。
 29種の野菜のうち7種に12%の検出率で、8種の農薬が検出されています。
カーバメート系のMIPCは、今回から分析対象になったとのことですが、日本では、コメにしか使用されないこの農薬が、タイ産のオクラに120ppb残留していました。
 前年検出されなかったジャガイモ類(冷凍及び加工品)では、約86%に、CIPCが見出だされ、一番高濃度だったのはカナダ産のマシュポテトで、220ppbでした。この薬剤が、国内では適用できない発芽防止剤として、海外では、広く使用されていることが窺われます。
 柑橘類を除く14種の果実には、18%の検出率で5種の農薬が検出されました。
 ニュージーランド産のキウイの全果にはビンクロゾリン1000ppbが残留しており、果肉にも一部移行がみられました。ピリミホスメチル、クロルピリホス、パラチオンら有機リン系殺虫剤が残留している果実がいくつかあるのも気に懸かります。
 昨年、一昨年と高い検出率で見出だされたバナナの殺菌剤のビテルタノールは今回は検出されていません。
 柑橘類では、5種23検体に6種の農薬が見出だされており、その検出率は77%となっています。ポストハーベスト用のイマザリルはアメリカ産のグレープフルーツに1900、レモンに1400、オレンジに550各ppb検出されています。有機リン剤のクロルピリホスとダイオキシン類を不純物に含む恐れのある2,4−Dが残留している傾向も前年とかわりありません。
 14種の豆類や種実類からは、中国産のピーナツにBHCが、イラン産のピスタチオにNACとベンゾエピンが検出されました。9種の穀類のうち、ポストハーベスト使用と思われる有機リン剤がバクガ(麦芽)検出されています。特に、フランス産のバクガのDDVP410ppbは高濃度の残留といえます。穀類での検出率は 88年度から、80%、67%、50%、19%、9%と減少傾向にありましたが、95年は前年と同じ13%となっています。
(3)国産野菜と漬物
 国産野菜では、14種中11種に12種の農薬が43%の検出率で見出だされました。前述の国産慣行栽培作物の場合より、分析対象となった農薬の種類は、少ないのですが、消費量の多い野菜が対象となっていますから、この調査の方が、日常生活での農薬摂取状況をより正確に反映していると思います。
 有機塩素系の毒物農薬ベンゾエピン(エンドルスルファンともいう。エンドスルファン硫酸塩はその代謝物)が、カブ、キャベツ、キュウリ、ピーマン、ホウレンソウにTr(痕跡)から170ppb検出されており、カブやキュウリの漬物にまで残留しています。
 プロシミドンは、キャベツ、キュウリ、ピーマン、レタスに見出だされ、特にキュウリでの検出率が高く、最高320ppbです。キュウリの場合は、漬物にも検出されています。
 TPNが残留していたのは、キュウリ、セロリ、トマト、ハクサイ、レタスで、一番 高濃度だったのは、キュウリの270ppbで、漬物にも結構検出されています。
 有機リン剤では、ジメトエート、ダイアジノン、DDVP、プロチオホス、マラチオン、EPN、PAPが検出され、ホウレンソウのジメトエートが980ppbと最も高濃度で、次いで、セロリのマラチオンとハクサイのジメトエートが100ppbで、カブやハクサイの漬物の中に残っていたものもあります。
 総じて、キュウリでの農薬残留が目立ちます。生だけでなく、加工品である漬物にも検出され、しかも、2〜3種の農薬が同時に見出だされるケースも多く見受けられます。
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作成:1998-04-01