辻:私たちのところにも焚き火に塩をかけたら、ダイオキシンができますかとの質問が来ていましたので、技術者たちに聞いてみましたら、焚き火が900℃ぐらいの温度になれば、出来るのじゃあないですかといっていましたが。
河村:そんなことも実験をやってみればわかりますよ。愛媛大学の脇本さんが、ダンボールを燃やしているところに塩ビ製品を投入して、ダイオキシンが発生することを証明しているのと同じようにすれば、いいわけです。
でも、900℃以上となれば、塩化水素がでてもダイオキシンが殆どできないのじゃあないかな。
もし、この反応が、400〜500℃の低い温度でおこっていれば、食塩からのダイオキシンの生成が問題になってくるでしょうが、恐らく、このような低温では、塩ビから発生する塩化水素の方が圧倒的に多いので、食塩のダイオキシン生成への関与は低いでしょう。
要するに、この研究の結論は、蛋白質を多く含むゴミを流動床炉を用い、水をたっぷりかけて、900℃以上の高温で燃やすと、ゴミ中の食塩の80%以上が塩化水素に転化するということですね。食塩と蛋白質と水と砂の成分が関与した未知の燃焼反応の結果、塩化水素が生成するということで、それ以上のことは、何もいえません。
ただし、今回の実験は、硫黄や無機塩化物の含まれる重油やアスファルトを燃焼さす時に、ダイオキシンが発生する懸念があるという新たな問題を提起していますよ。
辻:あの道路舗装するアスファルトですか。
河村:そうです。重油、なかでもC重油を燃料に使う施設の排気ガスやアスファルトの加熱の際に、ダイオキシンが生成していないかどうか確認する必要があるということですね。塩ビ業界は、食塩がダイオキシン発生の原因になっていると主張して自分達の責任を転嫁する前に、重油を燃やしている施設から排出されているダイオキシンを調査して、その危険性を指摘した方が余程社会的に意義ありますよ。もし、ダイオキシンが検出されたら、この食塩の実験は評価されることでしょう。
辻:どうも、ありがとうございました。まとめると、今回の実験は、燃やすゴミの質も燃焼条件も塩化水素が出来やすい方にもっていったもので、流動床砂と食塩が反応するような特殊な条件で行なわれ、実際のゴミ焼却炉とは、かけはなれたものであること。また、900℃以上というダイオキシンが生成しにくい高温での実験である上、ダイオキシンの生成との関係は調べていないので、食塩が焼却施設で発生するダイオキシンに関与していると主張する根拠にはならないことが、よくわかりました。塩ビ業界には、食塩のかわりにモデルゴミに塩ビをいれた同じ実験をして、ダイオキシンがどれほどでているかを調べるための実験計画を練ってもらいましょう。