ダイオキシンにもどる
t07203#PCB処理問題で環境庁に意見書提出#98-01
 昨年、10月30日環境庁は「PCB処理の推進について(PCB混入機器等処理推進調査検討委員会中間報告)」を公表し、一般からの意見をもとめました(環境庁報道資料参照)。この報告書の意図は、端的にいえば、廃棄されたPCB使用機器を未処理のまま保管しておくことの、事故・漏洩・紛失等による環境汚染のリスクよりも、廃PCBの分解処理に伴なうリスクの方が少ない。処理方法として、従来の焼却処理方法以外にも、化学処理によるPCBの脱塩素方法があるから、早く処理した方がいい。処理施設の建設にあたってはご協力願いたいということのようです。
<立ててほしいPCB含有機器の代替化計画>
 PCB含有機器について、問題なのは、1970年に化審法によりPCBを製造販売禁止した当時から、トランス・コンデンサーなど密閉系で使用されている機器については、そのまま、使用の継続が認められたことです。そのつけが、25年以上たった今、ふきだしつつあることに思いをはせれば、廃PCB含有機器の早急な処理というよりも、現在、使用中の機器の早急な回収・代替化ということを第一に考えねばならないことと思います。
 報告書では、「これらの規制・指導の結果、使用されなくなった廃PCB、PCB含有トランス、コンデンサ及び感圧紙、並びにPCB汚染物については、現在、事業所等で保管されている。これらは、製造元の化学工業会社、高圧トランス、コンデンサを多数所有する電力会社、JR、NTT、防衛庁といった大口保管者により保管されている他、小型のトランス、コンデンサ等が多くの中小の事業所に保管されている。保管台数は、発電所、変電所、受電設備等で使用されていたトランス、コンデンサが約15万台、電力会社が保管している低濃度PCB混入絶縁油を含む柱上トランスが約120万台などとなっており、家電製品の部品等として使用されていた低圧トランス、コンデンサやPCB汚染物などを含めるとかなりの量に達する。」
「さらに、現在まで引続き使用されているPCB含有トランス、コンデンサ類の量は保管量を上回っており、これらのうち耐用期限がきたものなどが徐々に保管に移されている状況にある。」と述べられており、現在使用されているPCB含有機器を耐用年数がくるまで放置しておくことを前提にした対策しか提起されていません。
<情報公開は、現状実態から>
 報告書では、廃PCB処理の原則として「1)処理の経費については、PCBの保管者が処理責任者として負担すべきである。2)処理に当たっては情報を公開し、住民の理解を求めるためにリスクコミュニケーションを図っていくべきである。3)周辺環境の監視体制を十分整備し、監視結果を公表すべきである。」といっています。
 しかし、荒木清寛参議院議員が提出したPCBの処理対策等に関する質問に対する政府の答弁書(97年12月12日付)では、JR各社、日本電電公社、電力各社、防衛庁のような大量保管者のPCB含有機器などの保有台数等が明かにされたものの、これ以外のものが使用又は保管しているPCBを含む電気機器については、電気絶縁物処理協会が、登録及び集計を行ない、「PCB使用電器台帳」を作成し、通産省指導により、事業者が保管状況を変更した際には、同協会に届けて、台帳内容を更新が行なわれていると述べるにとどまっており、個々の保管状況の実態公表については、事業者の判断にまかせると答えているにすぎません。
 情報公開は、まず、どこにどれだけのPCBが、どのような形で存在しているかを明らかにすることから始まらねばなりませんが、政府の姿勢をみる限り、もっと圧力をかけねばならないようです。
<PCB事故がないなんてとんでもない>
 報告書の「我が国においては、前述したとおり、多くの事業所でPCB含有電気機器及び感圧紙、PCB汚染物等が保管されており、特に1992年(平成4年)に特別管理産業廃棄物とされて以降、適切な管理が義務づけられている。また、これまでのところ、国内でPCBに関する事故の報告はない。しかしながら、1993年(平成5年)に公表された平成4年度の厚生省の調査結果によると、(財)電気絶縁物処理協会の台帳に基づいた調査で、高圧トランス、コンデンサの7%が、また昭和61年度の厚生省の保管実態調査で保管が確認された感圧複写紙重量の4%が、それぞれ不明・紛失とされている。」との記述にみられるように、たとえば、アメリカ軍基地でのPCB汚染、新幹線車両や学校での大型蛍光灯からPCB漏洩事故は、何らふれられておらず、火災現場などのPCB汚染については調査されたこともないわけで、「事故がない」のではなく「事故の調査がない」というのが実態です。
 反農薬東京グループにおいては、PCBがダイオキシンと同じように、難分解性で生物濃縮性のある有機塩素系環境汚染物質であり、発ガン性や生殖系毒性が認められる内分泌系撹乱物質のひとつでもあることから、@PCB使用機器の使用及び保管実態を把握し、環境汚染がないよう保管を図る。APCBの安全な処理技術を確立するBPCB汚染の新たな発生を防止するとの観点にたち、とりあえず、以下のような意見と質問を環境庁に送付しました。
 今後、現在使用中のPCB使用機器の所在を明かにし、早急に回収させることに重点をおいた運動の展開が必要でしょう。例えば、学校をはじめとする公共の建物、人の出入りが多い民間のビルなどで使用されているPCB入り機器を優先的回収し、建築物の解体に際しては、PCB入り機器の分別をきちんとするよう要求していきたいと考えています。
 ****PCB処理についての意見と質問****
1、現在、使用または保管中のPCB使用機器やPCB含有廃油の現状把握はどうなっていますか。場所別の数量を教えてください(都道府県別用途毎の数量で結構です)。
2、97年3月11日鳥取県城北高校でPCB入りコンデンサーをもちいた蛍光灯から、液漏れがおこり、生徒が体の異常を訴えましたが、その原因はなんでしたか。PCBはどの程度漏れたのですか。このような蛍光灯のPCB含有液漏れは、1987年12月18日大阪府堺市の学校でも起こっています。PCBを使用している古い型の蛍光灯は、早急に回収すべきだと思います。現状調査と回収計画をお示しください。
3、回収PCBを液状のまま保管することは、液漏れを起こしやすく危険です。重合反応等により固化する技術はないのですか。
4、オーストラリアでは、PCB焼却反対の意見が強く、他の方法を検討しているとあります。同国の西オーストラリア大学の研究者が、メカノケミカルな手法による分解方法を開発したと報道されていますが、この技術について、委員会はどのように評価されていますか。
5、PCBの製造販売は禁止されたものの、ごみの焼却処理によりPCBが生成することがわかっており、特に塩化ビニリデン樹脂が問題だとされていますが、この樹脂製品が可燃ゴミの中に混入しないよう対策をお示しください。

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作成:1998-04-01