ダイオキシンにもどる
t07301#金属加工用切削油剤がダイオキシン発生源か?−環境庁、厚生省、通産省、労働省に要望#98-02
 てんとう虫情報69号に「家庭用簡易焼却炉の残灰からダイオキシン」として、日本消費者連盟関西グループが行なった家庭用小型ゴミ焼却炉の残灰中のダイオキシン調査結果を紹介しましたが、この号の14頁表に示した試料6−自営金属工作業者が焼却したゴミの残灰中に4933pgTEQ/gという高濃度のダイオキシンが検出されました。同グループは、その後、汚染の原因を追及してきましたが、金属加工業で一般的に使用される切削油剤中の塩素化合物が、ダイオキシンの発生源であるとの疑いが浮上してきました。
<切削油剤のJIS規格に塩素系化合物が添加>
 金属を加工する場合、工具と材料の摩擦抵抗により、作業能率が低下するため、工作機械に切削油剤が使用されるのが一般的です。この切削油剤に関しては、日本工業規格JISのK2241に、同剤中に塩素系極圧添加剤が塩素分として1〜15%を含有した製品規格があることが記されています。解説文によると、かっては、PCBやペンタクロロフェノール、パークロロエチレンなどが極圧剤として添加されていたということですが、現在では、塩素化パラフィンが主流となっているようです。
 日本消費者連盟関西グループは、このほど、独自に入手した切削油剤4検体の塩素含有量を調査しました。その結果、同剤中に非水溶性の塩素が最高4%含まれていることがわかり、前述の家庭用簡易焼却炉で、切削油剤が付着した廃ウエスなどを焼却する場合に生成するダイオキシンの塩素源となっている可能性が否定できなくなってきました。
<ヨーロッパでの塩素化パラフィンの使用規制>
 JIS規格解説文には切削油剤の廃油処理について、そのまま燃焼すれば、塩化水素などの有害物質の発生となるとの注意もあります。当然、有害物質の中にはダイオキシンも含まれるでしょう。
 塩素化パラフィンは、発ガン性が疑われ、肝臓・腎臓・生殖系に影響を与えるなどの毒性、難分解性、生物濃縮性のある有機塩素系化合物で、炭素数10〜13の化合物が切削油剤の極圧添加剤として使用されているそうです。
 ヨーロッパでは、グリーンピースなどの環境保護団体が、塩素化パラフィンが付着した金属加工くずを再生利用する場合、加熱により、ダイオキシン類が発生するとして、その使用をやめるよう運動を起こしました。95年6月、メーカーのひとつであるドイツのヘキスト社は、98年までに全塩素化パラフィンの生産を中止することを発表しました。その後、ヨーロッパのメーカーは、短鎖型を97年1月1日までに80%削減し、2000年までに金属加工用を全廃するという自主規制で合意しています。
<塩素含有切削油剤の使用禁止を求める>
 このように金属加工業で、日常的に使用される切削油剤中の塩素化合物が、ダイオキシンの発生源になっているとすれば、由々しき問題です。
 業者の中には、家内工業的なものも多く、切削加工の際には、摩擦熱で、数100℃の発熱がみられるため、加工施設内で発生したダイオキシンが、そこで、働く人々や家族の健康に悪影響を及ぼすことが懸念されます。また、切削油の付着した金属屑の再利用工場でも、加熱処理により、新たなダイオキシンが生成する危険があります。
 そこで、日消連盟関西グループと反農薬東京グループは、環境庁、厚生省、労働省、通産省に対し、以下の要望書を提出し、塩素含有切削油剤の使用禁止を求めました。
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−前文略−
@切削油剤に使用されている塩素系極圧添加剤の種類と製品中の含有量、及び塩素含有切削油剤の年間の生産量について、教えてください。
A実験的に切削油剤そのものを焼却した場合及び金属加工に使用した場合のダイオキシンの生成量はどの程度かお調べください。
B金属加工施設(家内工業的な金属加工業者も含む、以下同じ)で、製品を製造中及び工程廃棄物の焼却処理中に、どの程度のダイオキシンが生成していますか。
C金属加工施設からの排気ガス及び廃水中のダイオキシン調査を実施してください。
D金属加工製品及び金属屑やウエスなどの工程廃棄物のダイオキシン汚染を調査してください。
Eさらには金属加工屑の再生利用工場でのダイオキシン汚染も調査してください。
F金属加工施設内のダイオキシン汚染と労働者(家内工業の場合は家族を含む)のダイオキシン被曝・健康調査を実施してください。
G金属加工施設周辺の空気・土壌などのダイオキシン汚染と住民のダイオキシン被曝・健康調査を実施してください。
H塩素系の極圧添加剤を含む切削油剤の製造・販売・使用禁止とJIS規格の改定及び同剤の海外への輸出禁止を求めます。

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作成:1998-04-01