街の農薬汚染にもどる
t07501#<感染症予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律>「平常時」でのハエ・カ駆除の薬剤散布中止を!#98-04
〜危機管理的強権が前面に出た法律と批判高まる〜
今国会に「感染症予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が上程され審議が始まっています。この法律は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し、必要な措置を定めることにより、感染症患者の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする」とあり、この法律が成立すると、現行の「伝染病予防法」、「性病予防法」、「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」が廃止になり、他の関連する法律も改定されることになります。
感染症に関する法律をひとつにまとめ、エボラ出血熱やエイズ、O157などの新興感染症への対応を含め、統一的に感染症を予防しようという目的らしいのですが、法案を見ると、非常に強権的な内容が盛り込まれ、危機管理的な要素が多く、大きな問題があります。感染症を法律で予防できるのかという根本的な問題を提起しているグループもあり、このような法律が国民に十分知らされないまま成立することに危惧を感じます。
現在、国会での審議が始まっており、遅きに失した感はぬぐえませんが、ようやく反対運動が起ころうとしています。私たちは、市町村が行っている薬剤によるハエ・カの駆除の杜撰さを指摘し、中止を求めて運動しています。この薬剤散布・配布は主に伝染病予防法を根拠として行われてきました。法律の廃止によってこれがどのように変わるのか、新しい法律が何を義務づけているのか、その問題点などについてまとめました。これはハエ・カなど衛生害虫の駆除の部分のみで、法律全体の問題点ではありません。
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この法律で決められた感染症
○一類感染症……エボラ出血熱、クリミナ・コンゴ出血熱、ペスト、マールブルグ病、
ラッサ熱
○二類感染症……急性灰白髄炎、コレラ、細菌性赤痢、ジフテリア、腸チフス、パラチフス
○三類感染症……腸管出血性大腸菌感染症
○四類感染症……インフルエンザ、ウイルス性肝炎、黄熱、狂犬病、クリプトスピリジ
ウム症、後天性免疫不全症候群、性器クラミジア感染症、梅毒、麻しん、マラリア、
メチシリン耐性ブドウ球菌感染症、その他の感染症で厚生省例で定めるもの
○指定感染症……一、二、三類以外の感染症で政令で定めるもの
○新感染症……一人から人へ伝染し、既知の感染症と病状、治療の結果が異なり、病状
が重篤で、国民の生命や健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの
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★悪法「伝染病予防法」では
伝染病予防法は明治30年(1898年)に公布された法律で、伝染病患者は社会の敵として位置づけられ、さまざまな人権蹂躙が見られます。全文カタカナでこれが今日まで生きていたこと自体が驚きです。この16条に「市町村ハ都道府県知事ノ指示ニ従ヒ市町村内ノ清潔方法及消毒方法ヲ施行シ医師其ノ他予防上必要ナル人員ヲ雇入レ及器具、薬品其ノ他ノ物件ヲ設備スベシ」
第16条の2に「市町村ハ政令ノ定ムルトコロニ依リ鼠族、昆虫等ノ駆除ヲ行ヒ及器具、薬品、其ノ他ノ物件ヲ設備スベシ」とあり、さらにその2で「都道府県ハ市町村ニ対シ市町村ガ前項ノ規定ニ依リ行フ鼠族、昆虫等ノ駆除ニ関シ計画ノ樹立、実地ノ指導其ノ他必要ナル措置ヲ講ズベシ」と続き、現在のハエ・カの駆除体制が定められています。
つまり、伝染病が発生していない「平常時」にも、予防としてネズミや、昆虫の駆除を「行フベシ」なのです。100年前の衛生状態ならいざ知らず、現在のような化学物質多用社会では、アレルギーや化学物質過敏症に代表されるような病気が「まん延」しており、殺虫剤散布の方が危険です。
★どこが変わったか
新法では、第28条(ねずみ族、昆虫等の駆除)で「都道府県知事は、一類感染症、二類感染症又は三類感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止する必要があると認めるときは、厚生省令で定めるところにより、当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがあるねずみ族、昆虫等が存在する地域を指定し、当該地域の管理をする者又はその代理をする者に対し、当該ねずみ族、昆虫等を駆除すべきことを命ずることができる」とあり、2項で、都道府県知事が指定した地域を管轄する市町村に駆除をさせることができると続いています。
★平常時の駆除は基本方針で定めると
これだけだと、都道府県知事が一、二、三類の感染症の病原体に汚染された地域を指定し、その地域に限って駆除を命令したり、実際に駆除するのであって「平常時」の駆除はなくなると解釈できます。しかし、どうもそうではないようなのです。厚生省の結核感染症課によると、平常時の駆除に関しては厚生大臣が定める「基本指針」に書き、現状とほとんど変わらないことになるそうです。これでは法律から平常時の駆除を除いても何の役にもたちません。97年12月8日に公衆衛生審議会伝染病予防部会基本問題検討小委員会の「新しい時代の感染症対策について」という報告書がでていますが、この中では「都道府県、市町村の行う清潔・消毒については存続する必要がある。しかし、現行法においては、実施主体、状況に応じて重複した規定があり、こうした規定ぶりについては整理が必要」「ねずみ族・昆虫等の駆除については存続が必要」とあるだけで、何故、今の時代に必要なのかは書かれていません。一類感染症に指定されている病気は日本では発生しておりません。いつか発生するかもしれないからと前もって薬剤散布をしてどのような効果があるのでしょうか。三類感染症の腸管出血性大腸菌感染症は、確かに日本で発生していますが、感染経路はまだわかっていません。ねずみや昆虫が媒介するという証拠もありません。
3月31日、厚生省は、全国のハエを調査した結果、O157等を保有するハエが見つかったと発表しました。これは「ハエ類の腸管出血性大腸菌保有状況に関する全国調査結果」に基づくものですが、ハエがO157を媒介すると受け止められ、ハエの駆除はやらざるを得ないと思った自治体も多いようです。この時期のこの発表に意図的なものを感じます。しかし、この報告書を見ると、全国217地点(5128個体)での調査の結果、牛舎11地点、と畜場4地点から26個体のハエにO157が検出されたとなっています。個体数で言うと0.5%です。O157は牛の大腸にいるものですから牛舎やと畜場から検出されるのは当然のことでしょう。公園などのハエからは検出されませんでした。報告書では「ハエ類によるO157等の感染・伝播の可能性は引き続き検討が必要である」と書かれ、ハエがO157を感染させるとは断定していません。ハエ対策は発生源でやるべきです。牛舎やと畜場の衛生管理を徹底すればよいわけで、やみくもに住宅街で薬剤散布をするのは筋違いです。
★カの駆除は自治体がやる必要はない−略−
★防疫用薬剤の指定はどうなる?−略−
★駆除費用は患者から−略−
★成立を急ぐな
新法はすでに参議院で審議が始まっています。厚生省は、公衆衛生審議会で十分な審議を行ったうえで、法案ができたと説明していますが、市民の多くは内容は知らされていませんでした。報告書では患者の人権に配慮することを強調していますが、具体的な法案では、そのような箇所は見当たりません。これではいくら審議を重ねても意味がありません。これだけ市民生活に密接な関係を持つ法律ですから、少なくとも、今国会での成立を急がず、じっくり議論する必要があると思われます。
[法案反対の緊急アピール]はこちら)。
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作成:1998-05-01