行政・業界の動きにもどる
t07602#欧米での有機リン剤の生産縮小の動き#98-05
てんとう虫74号で、「子供は有機リン剤を摂りすぎている」という記事を載せましたが、アメリカでは、EPAが、デラニー条項にかわるFQPA法(食品品質保護法)による残留基準設定にあたり、子供のための残留基準を大人の10分の1に強化する動きを示していることから、有機リン剤が使用できなくなるのではないかのと恐れが、農薬業界サイドに広がりました。
しかし、4月になって、農薬業界のロビー活動のせいでしょうか、「Our Stolen Future」に序文を送ったゴア副大統領が「農薬規制によって業界に打撃を与えたり、害虫管理を妨げないことを確認した上で、EPAと農務省が共同して作業するよう」との指示を出したそうです。環境保護団体NRDCは、あくまで、子供を守るための基準を設定べきだとの要望をEPAにだし、せめぎあいが続いています。
これとは、別に、農務省は、EPAからの要求により、マラソンのミバエ用空中散布剤適用を撤回しました。恐らく、市民団体が、ヒトや環境に危険であると主張したことが効を奏したのでしょう。1992年に、EPAが、包括的な水生・陸生生物への影響研究を求め、フェニトロチオン(スミチオン)の森林での使用を撤回したことをみても、アメリカでの有機リン剤の使用規制は、日本より厳しいようです。
一方ヨーロッパでは、スイスに本拠地をおくノバルティス社(96年にチバガイギーとサンドが合併して設立した世界一の農薬会社)が、古くからある有機リン剤の生産中止を検討しはじめたということです。対象となる有機リン剤には、日本でも登録されている殺虫剤DDVP、エチルチオメトン、ホルモチオン、モノクロトホスが含まれています。この計画は、各国の市場動向や規制状況を考慮して、段階的に実施されようです。同社は、総合的有害生物管理(IPM)による持続的農業をめざすための新しい殺虫剤をこれら有機リン剤に置き換えるとのことですが、内分泌撹乱物質と名指しされている薬剤であるだけに、製造自粛に踏み切ったと考えていいのでしょうか。
このような有機リン剤生産縮小の動きは、日本では、あまりみられませんが、4月17日付けの化学工業日報は、年間1000人近くの死者をだした除草剤パラコートについて、原体製造メーカー帝人アグロが99年9月に広島県三原工場での生産を中止すること決めたと報じています。これに伴ない、武田薬品は、本年9月末にジクワットとの複合剤「プリグロックスL」の販売を停止するそうですが、大塚製薬の同複合剤「マイゼット」は、パラコート原体をイギリスのゼネカから輸入して製造販売を続けるようです。
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作成:1998-06-27