農薬の毒性・健康被害にもどる
t08104#北九州市「カエル専門委員会」による過剰肢カエル調査結果#98-09
 てんとう虫情報77号「カエル奇形の原因は、カの駆除剤メトプレンの分解物か? 」との記事の中で、北九州市にある旧山田弾薬庫跡地(1934年から旧日本軍が、 戦後は1972年までアメリカ軍が使用していた)の緑地公園内発生している過剰肢カエルのことにふれましたが、同市の『カエル専門委員会』が去る7月31日に最近の調査結果を発表しましたので、内容を紹介しておきます。
 同緑地では前肢過剰カエルが95年に11.9%、96年に4.6%発生したのを契機に、カエル専門委員会が設置され、環境要因と遺伝要因の二面から原因調査がはじめられています。昨年までの調査で、過剰肢カエルの見つかった池の底質を対象にしたダイオキシン類の測定値は一般環境と同じレベルであったということ、286種の化学物質を対象とした底質や土壌調査で検出されたものの中には、内分泌撹乱物質であるDDTやその代謝物DDEとベンゾ(a)ピレン及び爆薬であるTNT=トリニトロトルエン(ベンゼン核にニトロ基が3個結合しているが、ニトロ基が1個の4−ニトロトルエンは内分泌撹乱物質にあがっている)が検出されたこと、フタル酸エステル類は一般環境と同レベルであったことなどがわかっていました。
 今年の調査では、新たに以下のことが判明しました。山田緑地のニホンアカガエルやヤマアカガエルのオスから、DDTが検出されていますが、TNTは不検出、ベンゾ(a)ピレンは、他の地域との差はなかったようで、環境汚染物質と過剰肢発生の因果関係は、まだ、明確ではありません。
@山田緑地におけるヤマアカガエルの過剰肢個体出現率は696匹中90匹(12. 9%)であった。
A山田緑地で採集した卵塊の飼育結果は
・過剰肢個体が出現した卵塊は160卵塊中17卵塊(10.6%)であった。
・この17卵塊について、各卵塊ごとの過剰肢個体出現率は、0.4%から31.0%の範囲であった。
・すべての卵塊について、過剰肢個体の出現率は12,225匹中166匹(1.3%)であった。
B過剰肢カエル同士の交配実験について
1998年に採集したカエル208匹を広島大学に飼育、交配依頼した。過剰肢カエル91匹、正常のカエル117匹)成長が順調にゆけば、来年春に交配可能。
C親カエル、卵の化学的分析について
1998年1〜2月に山田緑地、八幡東区田代及び若松区小敷で捕獲したカエル計50匹と卵(5卵塊)の分析を行った。その結果、山田緑地のニホンアカガエルのオスから2ppb〜264ppbのDDT類が検出された。また、ヤマアカガエルのオスからは1ppb〜40ppbのDDT類が検出された。一方、ニホンアカガエル、ヤマアカガエルのメス及び他の地域のカエルのDDT類濃度は、1ppb以下であった。TNTは、全て不検出であった。ベンゾ(a)ピレンは7匹から数十ppbが検出されたが、地域による差はなかった。
Dヤマアカガエル変態時の生殖腺調査について
カエルの性分化は変態時にオス、メスにわかれるものと、メスが先にはっきりした後、オスになる種類がある。生殖腺の調査をするために、1998年5月に山田緑地と小石原で変態時のヤマアカガエルを採集した。この結果、山田緑地、小石原ともほとんど全てのカエルが卵巣を持っていた。このことから、ヤマアカガエルは変態時にはメスが先にはっきりした後、オスになる種類であることがわかった。

購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:1998-10-28