農薬の毒性・健康被害にもどる
t08106#アメリカで、農薬の人体毒性試験が問題に#98-09
 アメリカの環境保護団体EWGは、このほど農薬の人体実験に関する報告をまとめました。同報告によると、農薬登録に際して提出される毒性試験データに人体実験データが増加しているということです。
 EPAは、人に対する毒性の評価にあたり、動物実験データであれば、その結果に掛ける安全係数として10分の1を採用していますが、人についての毒性データならば、この安全係数をとらなくてよいことになっています。農薬メーカーは、動物実験から得られる最大無作用量に安全係数を掛けることによって、作物の残留基準等が厳しく設定されることをいやがって、人体試験データを得ようとしているわけです。特に、子どもへの安全係数の強化をにらんで、実験対象の種差をできる限り少なくしておきたいというのが、メーカーの意図のようです。
 たとえば、ローヌ・プーラン社は、殺虫剤アルディカーブの人体毒性試験データ(スコットランドの研究機関が実施。男性38人、女性9人にオレンジジュースに添加した農薬を与えた)により残留基準を5倍高めることができました。また、アンバック・ケミカルは、イングランドの研究機関で実施された殺虫剤DDVPの人体急性経口試験データにより、EPAの残留基準の設定に際して、10分と1という安全係数を免れることに成功しました。
 EWGは、EPAに対して、@環境政策の設定にあたり、いままで検討したり又はしつつある人体毒性実験の包括的再調査の実施、A農薬等の人体実験の緊急モラトリアム−一時停止、B再調査の実施後、モラトリアム解除に先立ち、政策やルールの確立等を求めています。
 EPAは、農薬メーカーの人体実験に深い憂慮を表明し、人体毒性試験データをその農薬使用の許容レベルについての最終判断材料とすることはないとしています。一方、このような批判に対し、アメリカ農薬工業会は、人体実験は、ボランティア被験者に前もって知らされた上、厳格な医学及び倫理ガイドラインに基づいて実施されていると主張しています。

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作成:1998-10-28