環境汚染にもどる
t08705#埋設処理した2,4,5−Tのその後#99-03
1971年頃、林野庁の指示で、当時国有林で使用されていた2,4,5−T系除草剤(2,3,7,8−四塩化ダイオキシンらを含む)が、山中に埋設処理されました。
84年に、愛媛県津島町の国有林に埋設処理された薬剤が一部環境中に漏洩し、ダイオキシンの土壌汚染もわかり、全国各地で、大きなさわぎになりました。この時の林野庁の調査では、2,4,5−T製剤約27,300kg(原体換算1,562kg)が、53営林署管内で、埋設処理されていたことが明かになり、一部の地区では、環境への広がりを防止する措置をした後、監視をつづけていくことが決められました。しかし、監視は、文字通り鉄条網で囲んだ現場を目視するだけで、選ばれた何ヵ所かは、5年に一度、分析をするというものでした。
今年2月の衆議院予算委員会で、、共産党の国会議員の質問に応じて、林野庁が提出した資料により、その後の状況が一部明かになりました。
★高知県窪川営林署管内では、漏洩発覚
71年当時、一ヵ所の埋設は300kg以内とするとの林野庁の指示に反して、648Lの乳剤を埋設した高知県窪川町の現場でなされた土壌調査の結果は、表のようでした。 84年当時、最高40万ppbの2,4,5−Tと2,3,7,8−TCDDが17ppb検出された個所は、89年にも2,4,5−Tが最高18万5000ppb検出され、94年の調査では、別の個所に2,4,5−Tが最高67万ppbと2,3,7,8−TCDDが6.4ppb検出されました。2,4,5−T濃度もダイオキシンも地中では、なかなか分解されないことをうかがいしめるデータです。現場は、コンクリート被覆しただけなので、周辺土壌ごと、隔離し、無害化することが望まれます。
表 高知県窪川署における土壌調査結果(単位:ppb)
2,4,5-T 2,3,7,8-TCDD
検査年 検体数 検出数 検出範囲 検体数 検出数 検出範囲
最小値 最大値 最小値 最大値
84年 18 5 760 400,000 18 4 Tr 17
89年 22 20 4 185,000 22 6 0.03 2.3
94年 29 11 2 670,000 29 5 0.06 6.4
★岩手県雫石署管内では、水道水源汚染が心配
岩手県内の雫石営林署管内では、粒剤4140kgが埋設されましたが、その多くが、盛岡市の水道水源の上流にあることが懸念されています。
98年に6月に実施された矢櫃山と取染山の埋設個所の土壌調査では、2,4,5−Tは検出限界以下、2,3,7,8の位置に塩素を有する17種のダイオキシンのうち八塩化ダイオキシンだけが最高0.014ppb検出されました。この八塩化物は非埋設の対照区にも0.015ppb検出(同時に1,2,3,4,6,7,8−七塩化物が0.001ppb見出された)されているため、2,4,5−Tではない他のダイオキシン源に由来するものとみなされました。埋設地区を上流とする河川と盛岡市の水道取水棟付近の水質の分析では、取染川の試料で八塩化物がわずかに検出されただけで、他の16種のダイオキシンと2,4,5−Tは検出限界以下だったということです。
林野庁では、今後とも、埋設個所への立入、土壌撹乱行為の禁止、定期点検等適切な管理に勤めるとしていますが、埋設量の多かった地区を優先して、2,4,5−Tとダイオキシンの環境分析の実施と、流出防止措置、無害化処理などを計画的にやってもらいたいと思います。さらに、いうならば、2,4,5−Tとほぼ同時期に埋設処理し、その量もずっと多かったDDT、BHCなどについても、徹底した埋設個所の調査と環境汚染防止対策が望まれます。
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作成:1999-04-29