農薬の毒性・健康被害にもどる
t09001#「農薬は不活性成分(補助成分)も問題だ」 情報公開等を求める要望書を農水省へ提出#99-06
 農薬には有効成分(活性成分)以外に多くの化学物質が添加されています。これは不活性成分と一括して呼ばれています(補助成分という場合もある)。ほとんどの農薬の有効成分は数%から数十%で、量としては不活性成分のほうが多くなっています。これらの不活性成分は内分泌撹乱物質の疑いが持たれているものや、毒性がわからないものも多いのですが、何が入っているのかすら明らかにされていません。
 以下、不活性成分の問題点や、最近の動きを紹介します。

★ノルウェー:添加成分が問題で、グリホサート禁止か
 ノルウェー政府が、除草剤グリホサート(商品名ラウンドアップ)の禁止を検討していることが、このほど明かになりました。グリホサート製剤に含まれている毒性の強い界面活性剤が水生生物に悪影響を及ぼすことを配慮したためだといわれています。
 てんとう虫情報82号でもふれたように、日本でも、ラウンドアップ中のポリオキシエチレンアミンの急性毒性の強さが問題となっていますが、毒性試験が義務づけられていない非活性成分であるため、規制対象になっていません。
 先に当グループが、農水省に、内分泌系撹乱物質(環境ホルモン)であるAPEを添加した農薬製剤名を明かにするように求めた際、回答を拒まれましたが、この例にみられるように、不活性成分については、すべて企業秘密の厚い壁に閉ざされ、その情報は公開されません。

★アメリカ:まだまだ使用される有害な添加成分
 アメリカの環境保護団体NCAP(農薬の代替を求める北西部連合)の報告によれば、同国では1997年現在2311種の不活性成分が使用されており(1987年のEPAの報告では、1200種)、そのうちの26%が、連邦又は州又は国際機関により有害であるとされている物質だとのことです。EPAが、毒性的に問題があるとして、含有表示を求めた化学物質は87年の57種から8種に減少していますが、その中には、環境ホルモンの疑いのあるDEHPやDEHA、ノニルフェノールのほか、フェノール、イソホロン、ヒドロキノン、ローダミンBなど挙がっています。
 NCAPは、農薬不活性成分の一層の情報公開と製品表示、毒性不明の成分の添加規制と代替化を求めています。

★日本:農薬活性成分以上のブラックボックスにある不活性成分
 日本の農水省は、去る4月27日に「内分泌撹乱物質の農林水産物への影響問題検討会中間報告」を公表しました。この中で、同省は、これまでの取組状況の項で、以下のように述べています。

『農薬については、これまでも、農薬取締法に基づく農薬登録制度により、その安全性について厳密な検査が実施されてきている。登録申請の際には、18項目にわたる毒性試験の提出を要求しており、これらの試験の中で、二世代に及ぶ繁殖試験や催奇形性試験等により、生殖能力や次世代への影響及び母胎や胎児への影響についても安全性の確認を行ってきている。しかしながら、内分泌かく乱作用については、従来にない新たな知見であり、現在、その作用に着目した直接的な検査は行われていない状況にあるため、農薬のより一層の安全性を確保する観点から、現在、以下の取組を実施しているところである。今後は、これらの取組により、内分泌かく乱作用に対応した登録検査、安全性評価を充実させていくこととしている。』

 しかし、農薬の登録申請の際に、要求されるのは、農薬活性成分(いわゆる原体)の毒性・残留試験が主で、不活性成分を含んだ製剤については、急性毒性試験のみしか提出が義務付けられていません。さらに、不活性成分そのものについては、毒性・残留性試験は全く要求されていないのです。
 農水省はメーカーからの報告で、農薬製剤中にどのような不活性成分がどの程度含有されているかを把握しているはずですが、企業秘密として明かにしません。個々の製剤についての不活性成分の公表が困難なら、全登録農薬に添加されている物質名とその総数量をまとめるることは、簡単なはずなのですが、そんな資料も明かになっていません。
 内分泌撹乱物質の生態系や人の健康への影響を明確にしようと思えば、農薬中に含まれる化学物質のすべてについて検討を加えねばならないと思いますが、そんな考えは、中間報告からは、全くうかがえないのです。
 また、同中間報告では、農薬をもっとも被曝している農民やその家族、農薬散布地区周辺の住民についての、曝露調査や健康・疫学調査の実施がとりあげられていないことにも、はたして、環境ホルモン問題を真剣に考えているかとうか疑問に思わずにはいられません。
 同省は、内分泌撹乱作用の調査研究に際しては、『消費者をはじめとする国民への総合的な情報提供の推進』をうたっていますので、以下のような申し入れを行ないました。

★農水省への要望書
 先に、私たちのグループは貴省に対して、内分泌撹乱作用の疑われる農薬に関して、いくつかの質問と要望を行ないましたが、満足の行く回答が得られませんでした。
 四月末、貴省に設置された「内分泌撹乱物質の農林水産物への影響問題検討会」の中間報告がでました。
 それによりますと、貴省は、対応策の一つに「消費者をはじめとする国民への総合的な情報提供の推進」を挙げ、NGOとの連携もうたっておられます。
 そこで、あらためて、以下の点を要望をいたしますので、ご回答くださいますよう願いいたします。

@農薬製剤中の不活性成分について
 内分泌撹乱物質の生態系や人の健康への影響を明確にしようと思えば、農薬中に含まれる化学物質のすべてについて検討を加えねばならないと思います。つきましては、いままでに登録された農薬製剤に含まれている不活性成分(溶剤、乳化剤、填料、展着剤、警戒剤、着色剤、共力剤、その他の添加剤)のリストと成分別数量を明かにしてください。

A農民等の農薬被曝量調査と健康調査について
 中間報告には、内分泌撹乱農薬に対する被曝が最も大きいと思われる農民やその家族、さらには、農薬散布地周辺の住民について、農薬被曝量の調査と健康への影響に関する調査の実施が抜けているように思われますが、この点について、お考えをお示しください。

なお、前回の話し合いの際に明らかになった貴省がメーカーに調査させている農薬中のダイオキシン濃度の結果が判明しましたら、早急に公表するよう、重ねて要望いたします。
★参考:農水省中間報告より「内分泌撹乱物質の農林水産分野における対応方策」−略−農水省中間報告
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作成:1999-06-27