ダイオキシンにもどる
t09102#埼玉県幸手市の倉庫火災による被害製品と環境汚染#99-07
 前号で、「ダイセーロジスティクス」の倉庫火災により大量の殺虫剤やプラスチック等が焼失したため、行政当局に質問書をだしましたが、埼玉県より回答がきていますので、その内容を紹介しておきます。

★被害製品の内容について
 火災被害にあったプラスチック類は、ポリエチレンテレフタレート(PET)のペレット:996トン、ポリエチレン製管材(ガス管12500本、管継ぎ手27500個、給湯管用 2013巻)と搬送用パレット(ポリエチレン:7400枚、ポリプロピレン:3600枚)で、当初、報道された塩ビ製品はなかったとのことです。また、スプレー類は、以下のようなアース製薬の殺虫剤が大部分でした。
表1 倉庫火災の被害にあったスプレー類

商品名            容量   主な成分                    被害数量(本)
ハエ・カアースK          450ml  フタルスリン/レスメトリン                 869,940
ハエ・カアースK          300ml  同上                        1,028,730
ダニアースJ           300ml  フェノトリン/サリチル酸フェニル             169,200
ペットアースD          300ml  アレスリン/ピペロニルブトキサイド/ディート    65,000
アリアース             300ml  フタルスリン/フェノトリン/アレスリン/S-421*    115,680
ハエ・カアース           450ml  フタルスリン/レスメトリン                   1,380
サラテクトマイルドm       120ml  ディート                          12,912
あみ戸に虫こない  400ml(PPボトル入り)トラロメトリン/ディート    104,532
サラテクトクール          100ml  ディート                           1,280
エアコン洗浄スプレー     300ml  界面活性剤・抗菌剤                 360
合計                                                 2,369,014
★環境調査で殺虫剤成分検出
 県は、殺虫剤スプレーに含まれる成分のうち7種の薬剤の環境調査とダイオキシン調査を実施していますが、公表された前者についての結果は、表2のようでした。被害総量も表に示してありますが(ほかに、忌避剤ディート116.6kg、トラロメトリン21kg)、火災による熱分解や燃焼により、他の物質が生成したと考えられるため、成分そのものだけが環境を汚染しているわけではありません。
 大気は火災発生の5日後に採取されたもので、レスメトリンは150m離れたところで、フタルスリンは2.3km離れたところで検出されています。
 埼玉県の報告には、「検出された成分の濃度は、通常6畳の室内で当該成分を含むスプレー殺虫剤を噴霧した場合(メーカー設定5秒間)の室温濃度の1/50から1/1450の低濃度であり、特に問題となる濃度ではなかった。」と書かれています。はからずも、われわれはこのような殺虫剤を、日常の生活で高濃度で 吸っていることが明かになりました。
 水路の試料では、火災発生の2ないし3日後、現場から350mのところで採取された水質1検体にサリチル酸フェニルが見出だされました。
 水田の試料も火災発生の2ないし3日後に採取されており、火災倉庫のそばにあって、水稲被害が甚大であった場所では、いくつもの殺虫剤成分が水質や土壌に検出されています。S−421の水田試料の採取は火災発生17日後に行なわれたためか、火災直近の水田でも検出限界以下となっています。
 埼玉県は、検出された殺虫剤成分の濃度は、いずれも低く、人への影響や魚毒性が問題となることはなく、水稲への影響もないだろうと結論していますが、ピレスロイド系殺虫剤は、水生生物への影響が強く、今後の生態系への影響が懸念されます。
 また、S−421やトラロメトリンは有機ハロゲン化合物ですので、火災に伴なって、ダイオキシンが生成している恐れもあり、その調査結果の一日も早い公表が待たれます。
表2 周辺環境の調査結果

薬剤名            フタルスリン  レスメトリン  フェノトリン アレスリン ピペロニル   サリチル酸  S-421
                                                       ブトキサイド   フェニル
被害総量 (kg)          539.9    70.1    190    46.8   33       2538  347

環境試料 採取数 単位

 大気       3    μg/m3  ND-0.2  ND-1.5    ND    ND     ND       ND     ND

水路等水質  5    μg/L     ND      ND      ND    ND     ND      ND-4    ND
水路等底質  2    ppm       ND      ND      ND    ND     ND       ND     ND

水田水質    6    μg/L   ND-19   ND-2    ND-1   ND-2    ND      ND-1    ND
水田土壌    6    ppm     ND-0.63 ND-0.06 ND-0.08 ND   ND-0.08  ND     ND

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作成:1999-07-27