農薬の毒性・健康被害にもどる
t09308#アメリカ:遅れるEPAの有機リン剤規制#99-09
アメリカでは、1996年のデラニー条項廃止に伴ない、新に制定された食品品質確保法(FQPA)の下で、農薬の残留基準を設定することになっており、この際、子供に対するADIの算出を厳しくし、安全係数を従来の100分の1から1000分の1に下げる、作用機構の同じ有機リン剤はひとまとめにして基準を決めること等を検討して、環境保護庁(EPA)は、今年の8月3日までに農薬残留基準の再評価を実施することになっていました。しかし、この作業は業界筋の巻き返しもあって進んでおらず、環境保護団体NRDCなどは訴訟によってEPAの責任追及を始めました。
そのせいか、EPAは8月2日、子供の摂取を減らすためとして、メチルパラチオンのリンゴ、モモほかの果実・野菜に対する使用禁止、またアジンホスメチルについてもリンゴほかでの残留を引き下げるための使用規制を公表しました。加えて、同庁は、有機リン系農薬39の再評価を行なうことなども明かにしました。
同国では、メチルパラチオンの室内での使用が禁止されていたにもかかわらず、1994年から97年にかけて、ゴキブリ退治などの家庭用殺虫剤として違法に散布され、多くの有機リン中毒者が出て、関係業者が逮捕されるという事件がおこっています。ミズーリ州の場合、当局が確認しただけでも2700軒に散布され、そのうち330軒が除去作業のため家人の一時立ち退き措置がとられ、5千万ドルの経費がかかったとのことです。
日本では、メチルパラチオンは、ホリドールとして知られており、1950〜60年代に農家に多くの中毒者をだし、「特定毒物」指定を受けています。71年に登録失効しましたが、いまでも輸入農産物に検出されるケースもあります。現在では、パラチオンは使用されませんが、同じ系列にある有機リン剤(スミチオン、ディプテレックス、クロルピリホス、DDVP、ほか)は、農家、家庭菜園、公園の樹木、街路樹など農業用途だけででなく、家庭用殺虫剤、シロアリ防除剤、防疫用薬剤としても、ひろく使用されています。微量長期曝露による慢性毒性、化学物質過敏症状、アレルギー症状の悪化などとの関連や環境ホルモン作用の疑いなどがあり、その使用を禁止することが望まれます。
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作成:1999-10-27