室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t09502#「シロアリ防除剤による健康被害と法的規制を求める集会」報告要約#99-11
 反農薬東京グループは、1999年9月21日、参議院議員会館第5会議室で岡崎トミ子参議院議員の協力を得て「シロアリ防除剤による健康被害と法的規制を求める集会」を開催しました。当日はシロアリ防除剤によって健康被害を受けた被害者をはじめ、関心のある市民約40人が参加しました。行政の参加は、建設省住宅局建築指導課北村課長補佐、厚生省生活衛生局企画課阿部課長補佐、同生活化学物質安全対策室吉川室員、環境庁環境保健部環境安全課早水課長補佐でした。
 集会はまず、植村振作大阪大学助教授がシロアリ防除剤の問題点と法的規制の必要性について問題提起をしました。続いて、被害者4人がそれぞれ被害状況と苦しい体験を報告しました。ここでは、行政に対する以下の要望とそれへの回答をお知らせします(詳細を知りたい方は資料集をお求めください)。
  <行政への要望項目>
1.国はシロアリ防除剤の規制を行うために権限を持った担当部署を決める。
2.国はシロアリ防除剤の毒性を評価し薬剤を許可制にする。使用方法も明記する。
3.シロアリ防除業者は許可制にする。
4.シロアリ防除剤散布後の薬剤濃度測定など安全確認を義務化させる。
5.シロアリ防除剤による健康被害者の行政による相談窓口をつくる。
6.国は薬剤に頼らないシロアリ防除法の研究を行い、普及させる。
★建設省の回答と質疑
【反農薬G】これらの要望に対する回答を聞きたい。まず、建設省からお願いしたい。

−中略−
【建設省】はい。1から5の中で「権限をもって規制する」ということについては、今、この場で約束できない。ただ、白対協では、薬剤の認定、防除施工士、企業の登録等をやっており、それによって防除を行う場合の安全性の確保というのは図っている。

【反農薬G】この前の国会答弁ではシロアリ防除業者が日本でどのくらいあるか正確に分からないが、その内の約4分の1が白対協に入っているということだった。4分の1しか入っていないような防除業者の団体の白対協をいくら指導しても全体的な指導ができない。法律できちんと防除業全体を規制するような体制にすべきだと言っているわけだ。

【建設省】その件は、なかなか難しいのではないかと思っている。この場で約束できるような性質のものではないということをご理解いただきたい。白対協の方でも、会員加盟率の増加に今度とも取組んでいく。防除施工士については必ずしも会員でなくても、資格を受けることができる。

【植村】そういう具合に白対協、白対協と持ち上げて話すのがおかしい。私が任意団体と言ったのは、入りたい人は入っていいし、入りたくない人は入らなくてもいいという意味で任意団体と言ったのだ。それが間違いだというのが間違いだ。

【建設省】非常に申し訳ないが、今この場でそういう規制をやるということをお約束することは難しいと思う。要望については持ち帰らせていただきたい。

−中略−
【反農薬G】建設省はどうしても規制しないと言っている。白対協さえ指導すればシロアリ防除剤の問題が解決するみたいなことを言っているが、とんでもないことだ。それは、十分わかっているはずだ。今日の話をきちんと持って帰って、建設省内部で検討していただきたい。また、後日ということにして、次に厚生省から答えを聞きたい。

★厚生省の回答と質疑
【厚生省】私どもはこの要望にあるシロアリ防除剤の健康被害と健康影響に対しては非常に大きな問題であると認識している。この要望の、5を除く部分は建設省の所管に係る部分であると考える。防除剤あるいは防腐剤も、あるいは建築物全体に使う化学物質の量規制においても、これは一個一個の化学物質を規制していてもしょうがない話であると、厚生省では考えている。できた建物総体としていかに押えるかという話が必要だ。
 厚生省は健康影響の観点から、基準を作る方策を現在検討中であり、そのための基礎的な研究等調査を行っている。今年度約8千万円ほどの予算の中で、空気質、特に新築や中古の住宅の室内空気質を調査している。化学物質は他にもいろいろあるので、その一部として、シロアリ防除剤と防腐剤についても調査中だ。
 これは厚生化学研究の中で委託してやっているが、調査の先生方の話では、シロアリ防除をした業者が非常に非協力的なので、なかなかデータが集まらないという状況がある。データ数が今年足りなければ、来年また別の手段を講じてやらなければならないと考えている。
 厚生省が今後、この問題について取り得る手段は、一つはシロアリ防除剤、防腐剤を中心とする実態を調査し、これを健康影響の観点から、基準の検討というスケジュールでやってまいりたい。できたら全体の家として、レベルをどこに押えたらいいのかという基準にしたい。但し、ホルムアルデヒドの値を出したように、研究レベルで、健康影響のあるレベルはここまでだと出すのは私どもの仕事だが、それを法律のなかで規制値にするのは建設省の所管に関る部分であると認識している。
 もう一つの厚生省の主要な立場としては、既に病気になって体を壊した方々に対する治療方法の提供がある。これは完全に厚生省のマターだと考えている。現在、北里大学の石川先生、宮田先生中心にやっていただいているが、来年度はこの分も保健医療局、生活衛生局共同で研究費を出し、海外とも協力を取りつつ、やらなければならない。
 健康被害や影響があった時点で、どのような対応をすればよいのかということが分からないと、保健所等厚生省の管轄施設に相談窓口を作っても窓口で相談を受ける人たちが対応法が分からない。だから、それまでもう少し時間がかかると思う。大変だとは思うが、後少しばかり時間をいただきたいと思っている。
 −中略−
【植村】2点ほど。1点はシロアリ防除業者の協力がなかなか得られないということだがが、これが先程の建設省の方の態度だ。建設省はものすごく犯罪的なことをやっている。
 それと、今シロアリ防除をやって実際にどれだけ被害が発生しているのかということを、本当につかまないといけない。厚生省としても是非やってほしい。もう既に、人に起こっていることだからだ。建設省に遠慮せずにやってほしい。

【厚生省】現在やっているが、何がどれくらい出ているのか、寄与率であるとか、その時、どんなものを使っているのかというところからデータを集めないとわからない。それをやっているところだ。

【反農薬G】厚生省は「快適で健康的な住宅に関する検討会報告書」を出している。その中で、相談窓口が非常に重要であるとして、相談窓口の人選まで提案している。その中に、シロアリ防除剤による健康被害を入れれば、取り敢えず、相談窓口はできるんじゃないか。

【厚生省】相談を受けた場合に、解決処理を示せない時にいくら受けても悲惨な話でしかない。
 何が原因で、それに対してどういう医学的な治療法があるかとか、きっちりしないといけない。治療するところも北里大しかない。だから来年は他の研究者を宮田先生のところにやって、化学物質過敏症を医者にも勉強してもらってと、そういうことを現在考えている。もう少し時間を下さい。

【植村】そういうことでは困る。治療法を示すことができないので、窓口を作るのはどうかななんていうのはとんでもない話だ。どういう具合にして一時的にしろ、避けたらいいのか、どの程度避けていたらいいのかとか、どういうところをチェックしたらいいのかというようなことだけでも、ある程度できると思う。そういう形での相談に乗っていただけるような場所を作ってほしい。僕らはこれ以上、市民からの相談を受けるのは出来ない。−中略−

★環境庁の回答と質疑−略−

……………………………………………
 2時間半に及ぶ話し合いの中で、一番責任のある建設省はシロアリ防除剤、防除業者の規制に関しては一貫して消極的で、明言を避けました。今後、一転して規制をするとは思えません。粘り強い交渉が必要になると思います。二言目には白対協がああしてる、こうしていると繰り返し、建設省独自の考えは一切ないことは明らかになりました。建設省は監督官庁の責任を自ら放棄しています。
 厚生省は、以前の反農薬東京グループの申し入れを入れて、住宅内の化学物質の調査の一環として、シロアリ防除剤による汚染状況の調査にも着手していました。この結果は来春にでるということです。その結果を待って、ホルムアルデヒドの時のようにガイドラインを出すとのことです。ガイドラインでは規制力はありませんが、まあ、一歩前進と言えるでしょう。しかし、今までの調査で、急性中毒にかかるくらいのレベルの住宅があったということですから、これを元にしたらガイドライン値も相当高くなるのではないかという恐れを覚えます。
 また、化学物質過敏症患者の医療については厚生省の責任と明言しましたが、治療施設は北里研究所病院の中にある臨床環境医学センターしかなく、医者の教育が必要だからもう少し待ってほしいと述べるだけでした。現在、臨床環境医学センターには全国から患者が押し寄せ、診察まで2ヶ月待たされる状態です。全国で治療できる医者が二人しかいないという状況をもっと深刻に考えてほしいと思います。
 さらに、行政の相談窓口を設置して欲しいという要望には、まだ、基礎的な研究ができていない、相談されても何も言えないというだけで、現在、市民運動が担っている重荷を背負うつもりはないようでした。根本的な治療方法はわからなくても、当面、どうやって化学物質を避ければいいのか、どこをチェックすればいいのかなどアドバイスできることはいくつかあるはずです。保健所がシロアリ防除剤による被害を認めるだけでも状況は変わってくると思います。
 環境庁は、室内空気の担当ではない、それは建設省や厚生省の仕事だと逃げました。化学物質総体の規制として考えるべきだとの指摘には、長期的課題だと述べるにとどまりました。
今後、建設省を中心にさらに交渉をすすめる必要があります。

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作成:1999-11-28